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リーディングカンパニーとして果たすべき責務を支えるもの地震に負けない水道管を!
エンジニアに受け継がれる使命

2020 . 02 . 28 / Fri

地震に負けない水道管を!エンジニアに受け継がれる使命

写真・文:クボタプレス編集部

M6以上の地震は、全世界の20%が日本付近で発生しています。そんな地震国・日本では、急速に建築技術や土木技術が発展し、同様に水道管における技術も目覚ましい進化を遂げてきました。しかし、その水道管路は法定耐用年数の40年を超えた経年管が多くを占め、加えて近年多発する地震への対策から、管路の更新・耐震化が喫緊の社会課題になっています。

普段、人々の目に触れる機会がほとんどないライフラインとしての水道管。今回、クボタプレスでは、そんな水道の主要管材であるダクタイル鉄管のエンジニアに、研究開発にかける想いを伺いました。そのエンジニアたちに脈々と受け継がれる使命とは!?

ダクタイル鉄管研究の裏に創業者スピリッツあり

国内初の水道管の製造が開始されたのは1893年のこと。当時日本では、コレラ等の水系伝染病が流行しており、上水道施設整備の必要性が高まっていました。そのようななかで、「やってやれないことはない。絶対に諦めない」という精神で、当時困難とされ、他社が断念した水道管の量産に国内で初めて成功したのが、クボタの創業者・久保田権四郎です。

――その後、ダクタイル鋳鉄と呼ばれる管材を使った、いわゆるダクタイル鉄管の研究を開始するも、製品化までに数々の困難に直面したと伺っていますが、その原動力は何だったのでしょうか?

石原:
私たちエンジニアには、徹底した現場主義や諦めない力といった創業者や先輩方から受け継がれているスピリッツがあります。

パイプインフラ事業部
石原 孝浩(いしはら たかひろ)
1991年入社。入社以来、主に鉄管研究部に所属し、耐震管「NS形」の開発に関わる。2020年1月、阪神工場長就任。

石原:
例えば、1974年に日本で初めて生まれた耐震型ダクタイル鉄管「S形」は、M7.5を記録した1964年の新潟地震が開発のきっかけでした。地震に強い水道管路の必要性を感じた当時のエンジニアたちは、耐震継手コンセプトの研究に着手し、地震の現場で地盤変動の調査も行っていました。そんな折、M8.3を記録した十勝沖地震が発生します。この地震で甚大な被害を受けたある水道事業体から、地震に強い水道管を開発してほしいという切実な要望があったのです。すでに自社で進めていた研究とお客様のニーズが重なる形になったわけですが、国内初となる耐震型ダクタイル鉄管は、新潟地震から製品化までに実に10年近い歳月を要しました。この成功の裏には、世の中に役立つものを作り出すまで決して諦めないという想いが原動力としてありました。

――エンジニアとしての使命感は、どこから来るのでしょうか?

岸:
ダクタイル鉄管の歴史は、創業者や先輩方が築き上げてきたところが多く、それを受け継ぐ鉄管エンジニアとしての責任感と自負は常に私たちのなかにあります。

パイプインフラ事業部 パイプネットワーク技術部
岸 正蔵(きし しょうぞう)
1992年入社。2010年に発売した新たな耐震型ダクタイル鉄管・GENEXの開発に携わる。

岸:
クボタにとって水道管はいわば祖業であり、ダクタイル鉄管をはじめ、現在では塩化ビニル管やポリエチレン管などさまざまな水道管材を扱っています。日本ではクボタグループの製品が多く使われており、水道管のリーディングカンパニーとして、お客様に真に必要とされ役に立つ新たな製品やサービスを開発し続けていかなければならないという想いがあります。

――クボタが大切にする「現場主義」を象徴するエピソードを教えてください。

岸:
阪神・淡路大震災のときは、武庫川製造所(尼崎市)の鉄管研究部(当時)のエンジニアたちが、総出でバイクに乗って被災地を回り現地調査を行いました。エンジニアたち自らがいくつもの現場を回り、漏水箇所や管の破損状況等に関しての情報収集に奔走しました。東日本大震災のときは、津波の被害があったエリアにも調査範囲を広げました。道路が崩壊した地盤のなかで、継手が伸縮、屈曲して抜けずにつながっている耐震型ダクタイル管路を見たとき、よくこんなところで水道管がもったな、という感覚を持ちました。同時に私たちがこれまで何百回も研究、実験を繰り返してきた設計コンセプトが正しかったのだと改めて認識したのです。

現地で地震の惨状を目の当たりにすることはつらい経験です。それでも若手エンジニアにも、できるだけ被災地に足を運んでもらい、自分たちはひどい状況でも耐えられる水道管路を目指しているという自覚をもってもらうようにしています。

当時のクボタ鉄管研究部(現パイプネットワーク技術部)が主体となり、バイク隊を組織して被災地へ。管の破損状況や周辺地盤の変動状況などの現地調査に回りました。

東日本大震災における津波の被害で、崩壊した道路からあらわになった耐震型ダクタイル鉄管(NS形呼び径200mm)。抜け、破損等は見られず、その高い耐震性を証明しました。

クボタのスピリッツは、若手エンジニアにも着実に受け継がれています。ベテランと一緒に地震の状況を確認し、自分たちに課せられた仕事の重みを感じてもらうことも。

100年使用できる耐震管研究に挑戦するエンジニア

2010年に開発されたクボタの新たな耐震型ダクタイル鉄管・GENEX。100年の長寿命が期待される鉄管の外面耐食塗装を初めて開発しました。

――研究開発で最も苦労した点は何ですか?

船橋:
外面耐食塗装を形成する亜鉛系合金の配合調整や、合金を鉄管外面の鉄部に吹き付けるためのワイヤー状への加工など、課題は山積みでした。前例のない試みでしたので。

パイプインフラ事業部 パイプネットワーク技術部
船橋 五郎(ふなはし ごろう)
1984年入社。鉄管の外面防食塗装のエキスパート。耐震型ダクタイル鉄管・GENEXの外面耐食塗装技術の開発に携わる。

船橋:
例えば、鉄管外面の塗装部分と鉄部の間を覆っている亜鉛系合金の皮膜は市販品ではなく、自社で何度も合金の配合調整と評価を繰り返しました。また、金属の塊を溶射という手法で鉄管に吹き付けるためには、合金をワイヤー状に加工する必要がありますが、この加工を請け負ってくれる協力会社を探すのにも苦労しました。当初は前例がないということで、大手からも断られてしまったのです。途方に暮れながらも諦めずに協力会社を探して交渉し続けた結果、ようやくある1社が引き受けてくださり、本当に安堵したのを覚えています。

――世の中にないものを生み出し続けるエンジニアとして、重圧を感じることもあると思います。

石原:
新しい製品・技術を世の中に出すときは、これでいけるという確信を持っています。それまでに厳しい条件下で、現物を使って何度も何度も実験を繰り返してきているので。やはりここでも、創業者スピリッツが、私たちが研究開発を続ける原動力になっていると思います。

クボタの耐震型ダクタイル鉄管は、一度大地震を経験した後でも次の地震に耐えられるほど、十分な耐震性能を有しているといいます。エンジニアたちが繰り返し実証実験を行った研究の成果は、優れた性能と信頼性が評価され、結果、全国へ急速に普及していきました。

「GENEX」の吊り上げの様子。1つの継手が最大まで伸び出すと、隣の管を引っ張りながら次々と継手が伸び出すことがわかります。

世界の現場に広がるクボタの耐震型ダクタイル鉄管

2012年、クボタのGENEXは米国・ロサンゼルスで試験採用されることになります。

――初めてとなる海外での取り組みはどのようなものだったのでしょうか?

岸:
アメリカ西海岸は地震の多いエリアです。当時のロサンゼルス市電気水道局員のある方が、阪神・淡路大震災や東日本大震災で被害がなかったクボタの耐震型ダクタイル鉄管に強く関心をもたれたことで、試験採用されることになりました。試験採用から始まったこの取り組みですが、お客様の不安を解消するために、クボタのエンジニアが管路の設計から現地接合指導まで全面的なバックアップを行い、現地の局員から高い評価を頂きました。これをきっかけに、日本で生まれた耐震型ダクタイル鉄管の採用案件は、西海岸エリアを中心に着実に拡がりをみせています。

世界で地震国といわれる国はほかにも多くありますが、今後、開発途上国における日本のODA(政府開発援助)案件などでも採用機会が増えてくるかもしれません。

――エンジニアとしての今後の目標や展望を教えてください。

岸:
私たちが目指しているのは、より強靭で、どんなときも蛇口から水が出る水道管路の構築に貢献していくことです。地震や自然災害が起こった場合、人々が最初に求めるのは水です。きれいで安全な水が供給できる、より強いインフラ作りに貢献していくためにも、これからもお客様のニーズを先取りした研究開発を進めていきたいと思います。

石原:
都市部では交通量が多く、開削工事による布設替えが困難な重要幹線の更新需要も増えています。そうしたなか、水道事業体が直面している課題解決に貢献できる新たな製品、工法も開発し続けていく必要があります。また、予算の減少や技術者不足といった問題を抱えるお客様に対しては、水道工事の生産性向上を図るIoTを活用した新たな製品・サービスを提供していけるように、積極的な研究開発を進めていきたいと考えています。

明治初期、「蔓延する水系伝染病から人々を救いたい」という創業者・久保田権四郎の強い想いから、日本で初めて水道管の国産化を成し遂げ、今年、創業130周年を迎えるクボタ。「世の中の役に立つものを作る。やればできる。絶対に諦めない」といった創業者スピリッツは、後輩のエンジニアたちにも確実に受け継がれていることを実感したインタビューでした。

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