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「クボタアグリキッズサミット2025」前編「食と農業」の未来のために フードシステムの現場を訪れた子どもたち

2025 . 06 . 20 / Fri

写真・文:クボタプレス編集部

地球規模でさまざまな課題を抱える私たちは、これからどんな未来を描いていくのか。多様な未来社会のあり方を提示する大阪・関西万博が開催される今年、クボタが子どもたちとともに「食と農業」の未来をつくるために考え、見つけ出した可能性を世界に向かって発信する「クボタアグリキッズサミット2025」が始動しました。仲間たちと力を合わせ、「食と農業」の未来のために今できることを探った、その活動の様子を前編・後編の2回にわたってご紹介します。

地球規模の課題を抱える「食と農業」、その解決のために

地球温暖化や気候変動などの環境問題、人口増加による食料需要の増加や水資源の不足。その他にもさまざまな問題が複雑に絡み合い、「食と農業」は地球規模で多くの課題を抱えています。

未来に向けて「食と農業」の課題解決をめざすクボタでは、2つの視点を大切にしてきました。一つは、未来視点で今を考えること。国際的にSDGsの達成をめざす2030年、さらにはもっと先の地球や社会にまで想像を広げ、今できることは何かを導き出していきます。もう一つは、フードシステム全体へと視野を広げること。「食と農業」の未来のためには、食べ物を「食べる(消費)」までの、「生産・加工・流通・販売」という一連の流れの中で、それぞれの現場が抱える課題を解決しなければなりません。

そして、それらを次世代とともに取り組んでいくことが何より重要だと考えます。そのために、社会貢献活動や農業学習施設KUBOTA AGRI FRONTの設立などを通じて、子どもたちに「食と農業」をもっと身近に感じ、関心を持ってもらうための活動を行っています。

KUBOTA AGRI FRONTで学ぶ子どもたち

「食と農業」の未来を志向する仲間づくりの場をコンセプトに、「食と農業」の未来を楽しくおいしく学ぶ農業学習施設 KUBOTA AGRI FRONT。

2024年実施のクボタアグリキッズキャンプの様子

子どもたちが「食と農業」について理解を深め、新たな気づきを得られる情報発信や、アグリキッズキャンプなどのリアルイベントも開催。

100名の小学生が参加する「クボタアグリキッズサミット2025」

「おいしいものを安心して食べられる未来」をつくる。そのためのさまざまなアイデアを持った100名の小学生(2025年4月度4~6年生)が、全国から集まりました。つくるから食べるまでのフードシステム全体で「食と農業」の課題とチャレンジに触れながら、一人ひとりにできることがあることに気づく。同時に、多くの共同作業を通して、仲間と力を合わせることの大切さに気づく。それが、「クボタアグリキッズサミット2025」です。

「クボタアグリキッズサミット2025」は全3部構成となっています。第1部でインプットを行い、第2部でのオンラインセッションを経て、第3部では大阪・関西万博会場にて子どもたち自身で「アグリキッズ・アクション宣言」を発表します。

今回のレポート前編では、第1部の様子をご紹介します。子どもたちは「食と農業」の最先端の取り組みをインプットするために、3月27日〜29日の3日間にわたって、日本の食を支える北海道でさまざまなフードシステムの現場を訪れました。そこで発見した情報をもとにワークショップを実施。子どもたちには、一人ひとり、応募時に「仲間と一緒にチャレンジしたいこと」を書いてもらっています。ワークショップでは、そのチャレンジを仲間と一緒に実現するために大事なこと—ここではそれを「かぎ」と呼びます—を探りました。

空港に集合する子どもたち
バスで移動する様子

北海道の地に全国からアグリキッズたちが大集合!初めて顔を合わせる仲間たちともすぐに打ち解けていました。

ワークショップの様子
フードシステムの現場で話を聞く子どもたち

フードシステムの現場で。ワークショップで。子どもたちはたくさん見て、聞いて、触れて、感じて、学んだことをもとに、仲間たちと議論することを経験しました。

「おいしいものを安心して食べられる未来」をテーマにフードシステムのさまざまな現場へ

フードシステムの出発点、「生産」を支える「研究」の現場を体験するため、子どもたちは北海道大学を訪れました。ここは、街の中にありながら研究用の広大な農場もあり、ロボットやITを使った新しい農業の学び、民間企業との共創、研究・開発したものを実際の農地でテストするなど、「スマート農業」の研究が盛んな大学。スマート農業の第一人者である北海道大学大学院農学研究院院長の野口伸教授から、農業の最前線の取り組みについて講義がありました。

「現在、日本の食料自給率は38%で、多くを外国から輸入しています。国全体で自給率を上げようとしているけれど、農家の高齢化や就農人口の減少で難しい。これを解決する方法の一つが、日本が誇る科学技術なんです。たとえばリモート農業では、街中にいながら一人で何台ものロボット農機を監視したり、何百kmも離れた畑のトラクタを遠隔で運転したりできます。他にも、高齢の農家さんには大変な果樹栽培や重量野菜の収穫なども、AIが自動で判断してロボットがやってくれるようになる。ロボットだから夜間作業も平気ですね。少ない人数で食料をつくることができるシステムで、きつい作業はロボットやAIに任せて、人はもっと農作業を楽しむことができるようになります」。

北海道大学にて野口教授の講義の様子

農業は今どのような問題を抱えているか、そして2050年にはどのような農業になっているかを子どもたちにわかりやすく解説してくれる野口教授。

野口教授の講義を聞く子どもたち

日本の食料自給率に子どもたちからは驚きの声が。さらに「自給率を上げることで世界はどう変わりますか」「日本からアメリカにあるトラクタも動かせますか」など次々に興味が湧き、野口教授へ質問を投げかけました。

講義を終えると、その最先端のテクノロジーを体感するため、子どもたちは遠隔監視室(ミライ共創Room)へ。北海道大学の学生がロボット農機の遠隔運転のデモンストレーションを行ってくれました。スクリーンのカメラ映像とともに、遠隔で動く本物の無人トラクタは、窓の外にも見えています。実際に子どもたちも遠隔運転に挑戦しました。

無人トラクタの遠隔運転を体験する子どもたち

コックピットを思わせるシートに座り、画面に映る無人トラクタの映像を見ながら、ゲーム機のコントローラーを組み合わせたようなハンドルを操ります。難しい雪道を巧みに運転すると、周りの子どもたちから歓声と拍手が送られました。

アグリフードセンターで説明を聞く様子

大学内のアグリフードセンターでは、豚や鶏の食肉加工システムを 見学。動物の姿が「食品」に姿を変えることに、思わず「かわいそう」という声も上がりますが、加工の役割やシステムの工夫についての説明に耳を傾けるうちに真剣な顔つきに。「動物の命をいただいて食品にする」ことの大切さを理解できました。

クボタが2023年に北海道北広島市にオープンした農業学習施設 KUBOTA AGRI FRONTは、「農業は地球からの宿題だ。」をコンセプトに仲間たちと「食と農業」についての未来を語り合う場。楽しくおいしく学べるさまざまなコンテンツが揃うなか、子どもたちは農業経営シミュレーションゲーム「AGRI QUEST」に挑戦しました。このゲームは、作物を育てるだけでなく、いかにサステナブルな農業経営をできるかもポイント。農作業や農業経営などについて、多様な選択肢から選びながらゲームを進めていくうちに、「地球からの宿題」である農業において「答えは一つではない」ということに気づいていくのです。

KUBOTA AGRI FRONTで映像を見て学ぶ様子

館内の最初のプログラム「シアター」では、世界中で「食と農業」が抱えるさまざまな課題や、すでに行われている解決に向けた取り組みなどを映像で学びました。

農業経営ゲームAGRI QUESTに挑戦する子どもたち
農業経営ゲームAGRI QUESTに挑戦する子どもたち2

「AGRI QUEST」では、経営判断を次々と迫られます。手作業のこだわり農業か、機械化した大規模農業か。販路はどうするか。その他にも農業経営に必要なさまざまな要素があることに驚きながらも、議論の進め方や決定の方法まで、チームの仲間たちと意見を出し合いながら決めました。

最新の農業技術による屋内農場を見学する様子
最新の農業技術による屋内農場を見学する様子2

進化した農業の姿を目の前で見られる「TECH LAB(テックラボ)」では、ロボットやAIなど最新の農業技術「アグリテック」を使った屋内農場を見学しました。

農業のリアルな経営についてシミュレーションを通じて体験した子どもたちの前に、経験豊富な農家さんも駆けつけてくれました。100年以上続く米農家の6代目、有限会社タカシマファームの髙嶋良平社長からは、持続可能な農業の大切さについてのお話がありました。この会社では、明治初期に生まれた、北海道の稲作の原点となった品種「赤毛米」も栽培しています。栽培の難しい品種で、現在では作っている農家はほとんどありませんが、「先人の築き上げた思いを大切にしたいので引き継いでいる。なんとか地元地域の活性のためになれば」と語ってくれました。

タカシマファーム髙嶋社長のお話の様子

「自然環境は壊れるのは一瞬だけど、戻すのには時間がかかるんです」と、有機農法への思いを語る髙嶋社長。

さらに、岩見沢農業高校に通う現役の高校生farmer、中仙道怜さんも登場。小学生の頃に、父方・母方の祖父母が作ったミニトマトの味がそれぞれ違うことに興味を持ち、自分で土壌作りから挑戦したことが農業を始めたきっかけでした。「おいしいものができた時、一番やりがいを感じます。人間は食べないと生きていけないし、食べ物がないと争いが起きる。食べ物を作ることはたくさんの人生と未来をつくること。だから農業は本当に大切で尊いものだと思います」と、農業の魅力を熱く語ってくれました。

高校生ファーマー中仙道さんのお話の様子

「興味や疑問を持ったことは思いっきり挑戦してください。食と農業のことも興味を持ったらぜひ行動して、日本の未来を守っていきましょう」と、子どもたちにエールを送る中仙道さん。

農家の方々のお話を聞く子どもたち

コンポストなど家庭での身近な取り組みから、スマート農業を農家へどう普及させるのかという大きな取り組みまで、子どもたちは興味津々で質問しました。

子どもたちは3日間でさまざまなフードシステムの現場を訪れました。「生産」の現場、酪農学園大学では酪農や飼料の最前線の取り組み、現代の畜産が直面している課題などを学びました。「流通」「販売」の現場、札幌市中央卸売市場では農産物・海産物がどのようにスーパーや小売店、飲食店へ安心安全に出荷されているかを知りました。「加工」の現場、福山醸造株式会社の「トモエの醤油蔵」では醤油づくりの工程や歴史から、食と地域の風土が深い関係性にあることを教わりました。

酪農学園大学の牛舎で牛に触れたり搾乳体験の様子
酪農学園大学の牛舎で牛に触れたり搾乳体験の様子2

酪農学園大学内の牛舎では、本物の乳牛の大きさに驚きながらも、搾乳したての生乳をパイプ越しに触るとまだ温かいことに感動。「食べる」とは、「いのちをいただく」ことだという大切さを実感しました。

札幌市中央卸売市場を見学する様子
札幌市中央卸売市場を見学する様子2

早朝の札幌市中央卸売市場では、市場内を行き交うモートラ(ターレットトラック)に子どもたちの目は釘付け。「せり」も見学し、「手形」と呼ばれる独特の方法で品物に値がつけられる瞬間も目撃しました。

福山醸造のトモエの醤油蔵を見学している様子
福山醸造のトモエの醤油蔵を見学している様子2

「トモエの醤油蔵」では、昔ながらの製法に子どもたちから「なぜ自動化しないのですか」と疑問の声が。「人間の経験値でしか作れない部分もあるので、人間の手作業と自動化をミックスしています」という答えに一同納得の様子でした。

発見した考えを深め、自分たちの可能性と多様性に気づくワークショップ

さまざまな現場を訪れた子どもたちは、ホテルに戻るとワークショップに取り組みました。一つひとつの場所で働く人々が、どんな思いを大切にして、どんなチャレンジをしていたか、「現場のチャレンジ」を振り返ります。そこで学んだことや得られたヒントをもとに、自分は仲間たちと一緒に未来に向けて何をしたいか、「自分のチャレンジ」を改めて考え、ワークシートに記入。そして、そのチャレンジを仲間と一緒に実現するために大事なこと=「かぎ」を考え出し、チームのメンバーで話し合いました。

ワークショップに取り組む子どもたち
ワークショップに取り組む子どもたち2
ワークショップに取り組む子どもたち3

一人ひとり集中して、それぞれの現場で体験したことを思い出していました。

ワークショップ初日には、お互いに打ち解けられるよう自己紹介ゲームなども用意されていましたが、それも必要ないほど子どもたちは活発に議論を交わし、その打ち解けるスピードに運営側の大人たちの方が驚かされたほどです。互いに他のメンバーの考えを知ることで、アイデアがどんどん広がっていき、「自分と自分たちの可能性」を実感するとともに、それぞれのアイデアの背景にあるメンバーの思いも知ることで「仲間の多様性」にも気づくことができたワークショップでした。

仲間の発表を聞く子どもたち
仲間の発表を聞く子どもたち2
仲間の発表を聞く子どもたち3
仲間の発表を聞く子どもたち4

仲間の発表に耳を傾ける子どもたち。他のチームとフードシステムの各現場の情報を交換し合うなど、チームを超えた議論も行われ、そこで新たな発見も得られました。

ワークショップの最後には、「クボタアグリキッズサミット2025」第3部で万博会場にて「アグリキッズ・アクション宣言」を発表する代表メンバー12名を、子どもたち自身が投票して選出。選ばれたメンバーには、大きな拍手が送られました。

KUBOTA AGRI FRONT前での集合写真

最終日、KUBOTA AGRI FRONTの前で記念撮影。「クボタアグリキッズサミット2025」第1部は無事に終了しました。

「アグリキッズ・アクション宣言」に向けて

「クボタアグリキッズサミット2025」第2部は、6月21日にオンラインで開催されます。第1部を振り返りながら、より多くの仲間を増やすための「未来をつくる『かぎ』」を、各チームごとに、議論し決める予定です。

そして第3部は7月25日、代表者12名が万博会場に登壇し、その他のメンバーもオンラインで参加して「アグリキッズ・アクション宣言」を発表。さらにその内容について、有識者と議論を行います。サミットでの成長の軌跡を示し、子どもたちの可能性を世界に向けて発信することで、まだ見ぬ新たな仲間へ、未来への行動を呼びかけます。それらの様子は次回レポート後編にてご紹介しますので、ぜひご期待ください。

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