水道管の二重ルート化を行う工事現場の立坑内に降ろされるダクタイル鉄管

2021 . 08 . 20 / Fri

LIFE

安全でおいしい水を安定供給するために自然災害の脅威から暮らしを守る
強い水インフラ作りの今

写真・文:クボタプレス編集部

蛇口をひねれば水が出ることに、疑問を持つ方は少ないのではないでしょうか。私たちは日常生活において、水を当たり前のように日々使っています。

しかし、例えば渇水により供給される水が少なくなったり、地震などの大きな自然災害により断水する恐れがあるなど、水が使えない状況に陥る可能性はありえます。こうしたリスクを見越して、私たちの暮らしに不可欠な水インフラを保つ取り組みが日本全国で行われています。

災害に強い水インフラ作りの課題と取り組み

日本の水道は、需要が高まった高度経済成長期に集中的に整備され、現在では普及率98%を達成しています。しかし40年以上経った現在、老朽化した施設の更新や耐震化の遅れといった課題を抱えています。2011年の東日本大震災では約257万戸が、2016年の熊本地震では約44万6,000戸が断水するという深刻な事態が発生しました。

こうした課題に対し、厚生労働省は2013年の「新水道ビジョン」、2015年の「水道の耐震化計画等策定指針」など、水道施設の耐震化を推進する方針を打ち出しています。全国の水道事業体はこれを受けて、老朽化した設備を耐震性の高いものへと更新するインフラ強化に取り組んでいます。

もちろん、備えるべき災害は地震だけではありません。近年頻発している風水害への対策も含め、官民を問わず水道事業に携わる人々が、ライフラインの要の一つである水インフラの維持に尽力しています。

今回のクボタプレスでは強い水インフラ作りにフォーカスし、その取り組みの一環として、給水人口約1,360万人という日本最大の水道事業体である東京都水道局の長期戦略構想と、クボタの水インフラを支える製品に迫ります。

2040年代を見据えた東京都水道局の長期戦略構想

東京都の水道は、1898年に近代水道として通水し、拡張を重ねながら今日に至るまで発展してきました。東京都水道局は、この水道を通じて、首都・東京における都民の生活と東京の都市活動を支えていくことを使命としています。

従来、3年~5年スパンで経営プランを立てていた東京都水道局ですが、2020年に策定した「東京水道長期戦略構想2020」(以下、長期戦略構想)では2040年代を見据えています。その背景について、東京都水道局 総務部 主計課長の鳥生幹夫さんは、「人口減少社会を迎える中で、水道事業を継続的に続けていくため」と語ります。

東京都水道局の会議室で、「東京水道長期戦略構想2020」の背景を説明する鳥生幹夫さん

鳥生幹夫(とりう みきお)さん。東京都水道局 総務部 主計課長として、東京都の巨大な水インフラを財政面から支えています。

「人口減少により水道の需要が落ち込み、水道料金などに影響が生じかねない時代の中で、都民の生活基盤である水道事業を続けていくには、多くの課題をクリアしなければなりません。そのためには長期的な視点で水道事業を捉え、計画的に更新事業などを行うことが必要です」(鳥生さん)。

今回策定された長期戦略構想には、今まさに更新時期を迎えた水道施設の整備、異常気象や災害への備え、それらを可能とする財政的な施策が盛り込まれています。めざすのは、安全でおいしい水の安定的な供給です。この長期戦略構想を羅針盤として、東京都水道局は多角的かつ計画的に、持続的な水インフラ実現のための課題解決に取り組んでいます。

長期戦略構想で掲げられている取り組みの方向性 

1. 長期的な財政状況を見据えた計画的な施設整備

  • 水道需要と施設整備
  • 大規模浄水場の更新
  • 多摩地区水道の再構築
  • 管路の更新
  • 災害対策
  • 水質・水源対策
  • 環境対策

2. 新技術の活用と経営の効率化

  • スマートメータの導入
  • その他のICT施策
  • 広報・広聴

3. 東京水道グループの総合力強化

  • 経営基盤(業務運営体制)の強化
  • 人材確保・育成
  • 国内・海外水道事業体への貢献
  • 財政運営

東京都水道局が取り組む自然災害への備え

持続可能な水インフラの実現において、災害対策は非常に重要な施策の一つです。地震や風水害、渇水、火山降灰など対策すべき災害は多く、中でも地震や風水害は近年その頻度が高まっています。「これらの自然災害への対策は喫緊の課題です」と話すのは、総務部 施設整備計画担当課長の北村武雄さんです。

東京都水道局の会議室で、東京都水道局が行う自然災害対策について話す北村武雄さん

北村武雄(きたむら たけお)さん。浄水場や水道管の更新計画・災害対策等を担当し、東京を支える強靭で持続可能な水道システムの構築に取り組まれています。

「東日本大震災や熊本地震では被災地の水道施設が大規模な被害を受けましたが、東日本大震災の際には、東京都でも液状化や計画停電の影響を受けて広範囲に断水や濁水が発生しました。また、近年頻発している豪雨災害でも、浸水や水管橋*1の破損による断水などが生じています。こうした自然災害への対策はしっかり行っていく必要があります」(北村さん)。

*1 水道管が河川や水路を横断する際に設けられる橋


長期戦略構想では震災対策が最重要課題の一つとされており、ハード面の取り組みでは浄水施設や配水施設、水道管の耐震化を可能な限り前倒しすることが挙げられています。

「最新のデータでは、東京都の配水管のうち99.9%は粘り強く強度の高いダクタイル鋳鉄管です。現在は地震の被害を最小限に留めるために、水道管の継ぎ目が抜けにくい耐震継手管*2への取り替えを進めています」と北村さん。膨大な長さを有する東京都の配水管のうち、45%(2019年度末)が既に耐震継手管に更新されています。

*2 継ぎ目が伸縮・屈曲し、かつ離脱防止機構によって継ぎ目が抜け出しにくくなっている、鎖構造の水道管。地盤沈下など、地盤の変位にも対応する。


また風水害に対しては、水管橋の地中化や取水施設*3の改良とともに、水道管が破損しても水が止まらないようにする水道管の二系統化など、バックアップ機能を強化する取り組みが進行中です。水道施設の被害を最小限に抑え、災害時に必要な水を確保するために、来たる自然災害への備えが着々と進められています。

*3 河川や湖などの水源から水を取り入れる施設


耐震補強前

耐震補強後

長期戦略構想では、浄水施設の主要構造物の耐震化率を2030年度までに100%とすることが掲げられています。

被害軽減と安定給水につながるソフト面の取り組み

災害対策において必要なのはハード面の対策だけではありません。ソフト面においても、訓練による組織・職員の危機対応能力の強化、被災を想定した受援訓練、災害による断水時の応急給水体制の強化といった対策が取り組まれています。

屋外で行われている、漏水を修繕する応急復旧訓練の様子

漏水を修繕する応急復旧訓練の様子。自然災害などを想定した訓練は年間約500回実施されています。

鳥生さんがソフト面強化の重要性を改めて認識した事例として挙げたのは、2019年に発生した台風19号による被害です。「台風19号によって奥多摩町の道路が寸断され、断水が発生しました。その際に住民の方や行政に向けた情報が錯綜し、断水状況や復旧見込みなどについての問い合わせが多数寄せられ、対応に追われました。情報の伝達、水道局の初動体制が非常に重要だと改めて感じました」と鳥生さんは振り返ります。

こうした事例を踏まえ、長期戦略構想では初動体制、応急給水体制の強化、情報伝達ルートの確立、Webサイトなどによる広報のさらなる改良が掲げられ、多岐にわたるソフト面の強化によって被害の軽減につなげようとしています。

国内最大規模の水道ネットワークを持続的なものとするために、ハード面からソフト面、財政面に至るまで、総合的な取り組みを進めている東京都水道局。「これまで培った技術とシステムを途切れさせることなく、今後も引き続き安定給水をめざします」と鳥生さん。北村さんは「皆さんが安心して暮らせるように必要な施設整備を進め、強靭な水道システムを作り上げていきたい」と、都民の生活や都市活動になくてはならない水インフラを支えることへの思いをそれぞれ言葉にしてくださいました。

水インフラの強化に貢献するクボタの製品たち

水道管路を含む多くの水道施設が更新時期を迎えた国内では、全国の水道事業体が水道施設の更新、自然災害などを見越したバックアップ機能の強化などに取り組んでいます。

大規模な自然災害が想定される今、新たに敷設される水道管路で必要とされるのは、優れた耐久性や施工性、操作性、耐震機能、メンテナンスの容易さ、安価であることです。水道管やバルブだけでなく、ポンプや浄水処理などでも水道事業を支えるクボタは、こうしたニーズに応える製品を開発し、水インフラの維持に貢献しています。

では、実際にどのような製品が強い水インフラの一部を構築しているのでしょうか。今回は、水道管を2本に増やし、主要ルートが破損しても断水されないようにする水道管の二重ルート化を行うある工事現場に納入された、クボタのダクタイル鉄管とバタフライ弁にフォーカスしてみましょう。

耐震機能を有し、施工性に優れたダクタイル鉄管

水道管の敷設工事現場の状況は、周囲に住居や道路がある、水道管の上に雨水管や下水道管、電線管などが通っているなど、場所によって千差万別です。そのため、鉄管に必要な機能や大きさが現場ごとに異なります。クボタは敷設工事ごとに工事現場のニーズにマッチした製品を開発しており、ここで紹介するダクタイル鉄管も、シールド(トンネル)内で配管するために製造されたものです。

立坑の中に降ろされた直径2,600mmのダクタイル鉄管

地上から約46m掘り進んだ立坑の中に降ろされるダクタイル鉄管。その直径は2,600mmと、現在製造できるものの中で最大となっています。

このダクタイル鉄管は、耐震継ぎ手化されていることはもちろん、敷設する際の工数や施工時間が短縮されるような工夫が施されています。また、短くて角度のついた水道管をラインアップしているため、トンネルの急なカーブにも少ない数で対応できるようになっており、費用の低減にも貢献しています。

ダクタイル鉄管の内部で継ぎ目をチェックする作業員たち

ダクタイル鉄管の継ぎ目を一つ一つ丁寧に確認する作業員たち。

非常に高い水圧耐性を備えるバタフライ弁

バタフライ弁は、災害時や水道管の補修時に水の流れを止めたり、生活圏における水道の使用頻度によって流量を調節する、水道の蛇口のような役割を担います。

今回、二重ルート化された水道管は、地上から約46mの地下を通って、10km以上離れた地上の配水池まで敷設されています。地下深くから地上に、かつ遠く離れた場所へ水を送るため水道管を通る水流は非常に高圧で、130mの水柱が上がる強さとなっています。クボタが製造したのは、この水の流れを止め、水圧に耐える強度のバタフライ弁です。

巨大なクレーンに吊るされた口径2,600mmのバタフライ弁

今回納入されたバタフライ弁は、ダクタイル鉄管と同じ2,600mmの口径。現場のニーズに応える止水機能を有しています。

このバタフライ弁は、当該工事現場のために設計・開発されたもの。一から設計図面を書き、水圧に耐えうる強度を計算し、バルブの厚みや材質など、納期やコストも踏まえながら製造されています。

クレーンで立坑の中に降ろされているバタフライ弁

クレーンで立坑の最下部まで降ろされるバタフライ弁。

1893年に水道用鋳鉄管の製造を開始して以来、約130年にわたって水環境に関する製品と技術を世に送り出しているクボタ。さまざまな現場のニーズに応じた製品を通じて、今も日本の水インフラを下支えしています。

編集後記

東京都を例に取ると、水道の歴史は江戸時代までさかのぼります。1590年に開設された小石川上水から、水道は430年以上にわたって生活の一部となっています。その間、人々の生活には多くの変化が訪れましたが、水道がなくてはならないものであることに変わりはありません。私たちが気兼ねなく水を使える生活は、官民を問わず多くの人々が、何年にもわたって不断の努力を重ねてきた結果であることを実感した取材となりました。

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