GLOBAL INDEX
December 2018

FEATURE
"Water and environmental infrastructure"

01

水環境インフラで
世界に貢献する
~クボタの創業者の想いとSDGsの親和性~

長さ9m、口径700mmのクボタ製ダクタイル鉄管。脈々と受け継がれたクボタの技術の結晶だ(クボタ京葉工場)

「安全な水とトイレを世界中に」
深刻化する水資源問題

SDGs―国連が設定した持続可能な開発目標。6番目に水問題が提起され、世界中が解決に向けて取り組む

2015年に国連サミットで採択されたSDGsは、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development)」と題する成果文書で示された具体的行動指針を指す。これは歴史上、貧困に対して最も効果を収めた世界的取り組みとされる「MDGs」(Millennium Development Goals=ミレニアム開発目標)から引き継がれた新たなアジェンダであり、国連加盟193ヶ国が2016年~2030年の15年間で取り組む、17の分野別目標と169項目のターゲット(達成基準)が盛り込まれたものだ。そして、6番目の分野別目標に掲げられているのが「安全な水とトイレを世界中に」である。現在、世界の水資源を巡る状況は深刻化の一途を辿っている。安全な飲料水にアクセスできない人々を2015年までに1990年比で半減することを目標として掲げたMDGsは2010年に達成されたものの、2015年時点で依然として約6.6億人が基本的な給水サービスを利用できないと推計されている(※注1)。また、人口増加や経済発展、生活水準の向上に伴って水需要は増加傾向にあり、2030年には全世界で、水需要に対して利用可能な水資源は40%不足するという報告もある(※注2)。

こうした危機的状況を打破するため、SDGsでは、水・衛生分野に特化した分野をゴール6として「すべての人々に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保する」とする目標が設定された。その実現のためには、インフラを整備し、衛生施設を提供するとともに、あらゆるレベルで衛生状態の改善を促すことが必要だ。水不足の緩和のためには水関連の生態系の保護と回復に加え、限られた水資源の効率的かつ適切な配分、水利用の持続性向上や開発途上地域の水処理技術を支援するなど、一層の国際連携が求められている。

※注1…UNICEF and the World Health Organization調べ
※注2…Charting Our Water Future, the 2030 Water Resources Group調べ

貴重な水資源をいかに守るか。人類の英知が試されている
「人々を伝染病の恐怖から救いたい」という創業者の想いは、今も鉄管の製造現場に息づいている(クボタ京葉工場)

国内初の水道用鉄管の量産化に成功
クボタの原点

水問題は、かつて日本も直面した課題だった。水因性疾病の蔓延や渇水による給水制限、地下水の過剰揚水による地盤沈下、生活排水・工場排水等による河川や湖沼の水質汚濁など、多くの問題に直面しそれらの課題を克服してきた。現在、100%近い水道普及率を達成、地盤沈下は沈静化し、水環境保全対策のほか、水利用の効率化においても世界有数の実績を誇っている。これら日本の水問題解決に向けて、創業間もないクボタの取り組みは特筆される。1870年代~90年代にかけて日本ではコレラが大流行し、多くの人が犠牲となった。コレラは水因性疾病であり、コレラ流行の一因とされたのが水道整備の遅れだった。そうした状況に対して、創業者・久保田権四郎は「人々を伝染病の恐怖から救いたい」という強い想いから、1893年、国内で初めて水道用鉄管の量産に成功し安全な水の供給を実現、今に至る近代水道整備の嚆矢となったのである。

「久保田権四郎の言葉に、『自分の魂を打ち込んだ品物を生み出すこと。またその品物には正しき意味における商品価値を具現せしむること』という言葉があります。これは社会の役に立つものを作りたいという想いです。決して華々しく目立つ事業ではないが、人に喜んでもらえる、今、困っていること、必要とされていることに取り組むこと。その想いが水道管を、エンジンを、農業機械を生み出してきました。それが長い年月を経ても必要とされ、今日まで継続されていること自体、クボタが正しいことを事業にしている一つの証明だと思います」(代表取締役副社長執行役員・久保俊裕)

出荷を待つダクタイル鉄管。世界中の人々に命の水を供給する役目を担う(クボタ京葉工場)

SDGs達成の指針
最先端の技術と製品の提供

(株)クボタ
代表取締役副社長執行役員
水環境インフラドメイン担当
久保 俊裕

1960年代には、経済成長に伴う水質悪化問題が顕在化する中、クボタは水処理事業部を新たに設立。以後、上水から下水まで幅広い分野で事業を推進してきた。ダクタイル鉄管をはじめ、ポンプ、バルブ、浄水、工業廃水・下水処理、排水システムに至るまで、他に類を見ない水関連総合メーカーとして、世界各国で水・環境インフラの整備による豊かな生活環境を築く一翼を担ってきた。創業者・久保田権四郎が水道用鉄管の国産化に挑んでから、実に120年以上。この間クボタは、事業を通して社会課題の解決にチャレンジすることを自らの使命としてきた。そしてそこに、世界が取り組むSDGsとの高い親和性がある。

「クボタの事業そのものがSDGsと重なる部分は少なくないでしょう。SDGs達成のカギとなるのは、民間の組織力や資金力、人材と思われますが、SDGsが持続可能な世界を実現するための全人類の課題解決を目標にしているため、事業として成立しにくい側面があるのは否めません。しかし、対象国の持続的発展と同時に、ビジネスの持続可能性という観点に立てば、我々は最先端の技術・製品を導入すべきと考えています。それによって、その後10年~50年のスパンで対象国の産業振興や経済発展、社会的課題の解決に貢献していく、それが、民間企業が取り組むSDGsの姿と考えています」(同)