GLOBAL INDEX
December 2016

FEATURE
"Republic of India"

05

エンジン供給による
インドの産業発展支援

クボタエンジンを搭載したルーツマルチクリーン社製のスイーピングマシーン

建設・産業機械に搭載される
エンジン需要の高まり

エンジングローバルマーケティング第二部
新興国グループ長
飯田 宏道

クボタのエンジン事業の歴史は古い。1922年に農工用小型エンジンの第1号機となる「クボタ農工用石油発動機」を開発したのを皮切りに、その後ディーゼルエンジン製造に着手するなど、それぞれの時代が求める最良のエンジンを供給し、常に業界をリードしてきた。現在では、小型産業用ディーゼルにおいて世界

トップクラスのシェアを誇っている。その品質の高さの根底にあるのが「人間尊重」「高効率化」「省エネルギー」「省力化」という普遍のテーマであり、日本はもとより欧米の多くのメーカーから厚い信頼を寄せられている。

世界で評価されてきたクボタエンジンであるが、これまでインド市場には散発的にエンジンを供給してきたに過ぎない。というのも、インドは国内エンジンメーカーが市場を席巻しており、その圧倒的な低価格市場に入り込む余地がなかったからである。ただ、90年代後半から近年まで、インド市民の足ともいうべき「オートリキシャ(三輪タクシー)」に搭載されているエンジンに技術提供し、開発をサポートしてきたという歴史がある。2014年、クボタはエンジン事業において、インドをはじめ、中東・アフリカなど新興国市場開拓をミッションとするセクションを立ち上げた。そのグループ長に着任したのが、エンジングローバルマーケティング第二部 新興国グループ長の飯田宏道である。

「インドは、急速な経済成長を背景にインフラ投資も拡大しています。それと並行して、建設・産業機械に搭載されるエンジン需要も高まりを見せています。我々が開拓を目指しているのは、建設・産業機械を製造しているインドのメーカー。また慢性的な電力不足の中にあるインドでは、発電機用エンジンの需要も少なくありません。乗り越えるべき課題は山積みですが、インドという広大なマーケットで、着実にビジネスチャンスをつかんでいきたい」

だが、価格ではインド国内メーカーに太刀打ちできない現状の中、どこに突破口を見出そうとしているのか。

「まずは今後拡大が期待できるインドメーカーの輸出案件の開発に注力しています。ここでは価格は重要な要素ではあるものの、グローバルな実績を持つクボタエンジンの品質、性能の高さが評価されると確信しています。そして輸出案件での実績をベースに、徐々にボリュームゾーンであるインド国内案件の開拓に取り組んでいきたいと考えています」

エンジン事業における新たなマーケット開拓をミッションとする新興国グループのメンバーたち

インドの産業機械メーカーが採用
クボタエンジンへの高い信頼性

ルーツマルチクリーン社
マネージングディレクター
バルン・カルティケヤン氏

インドでクボタエンジンを納入した先の企業の一つに、インド南部のコインバトールに拠点を置く「ルーツグループ」がある。自動二輪や四輪車部品のホーン(クラクション)生産ではインド国内No.1の実績を誇る企業グループだ。各種自動車部品の製造を手掛けている一方で、主力製品の一つに「スイーピングマシーン」がある。その名が示すように、道路や工場などの床等を「掃く機械」。同社はかつて欧米メーカーから輸入、人力に頼っていた清掃作業を機械化する文化をインドに浸透させてきた経緯がある。今回自社での開発生産に着手、そこにクボタのエンジンが搭載された。

「海外輸入品は非常に高く、販売状況は厳しいものがありました。安く提供するには、自分たちで作るのがベストという結論に至ったのです」と語るのは「ルーツマルチクリーン社」のマネージングディレクターであるバルン・カルティケヤン(Varun Karthikeyan)氏だ。開発がスタートしたのは2年前。その当初の段階から、迷うことなくクボタエンジンの採用を決めていたという。それはなぜか。

「クボタエンジンは以前から知っている信頼性の高いブランドであり、輸入していたスイーピングマシーンに搭載されていたのもクボタエンジン。高出力でありつつ燃費が優れている、その効率性、高い耐久性は、世界No.1といっても過言ではありません。今後、海外に輸出していく予定ですが、ネームバリューは世界的であり、市場での競争力、優位性を確信しています」

高性能、低燃費を実現したクボタエンジン
エンジンのコンパクト化が搭載の決め手の一つとなった

インドの産業発展を支援するために
クボタエンジンの浸透・拡大へ

クボタは単にエンジンをインドメーカーに供給しただけではない。日本からエンジニアがインドに飛び、何度もディスカッションを重ね最適なエンジン開発、カスタマイズを進めた。

「当社のエンジニアも多くのことを学び、スキルアップができたと感じています。エンジンはスイーピングマシーンの心臓部分。その開発を両社協働で成し遂げたことに、大きな意義があったと思いますね」(カルティケヤン氏)

ちなみに、インドメーカーによるエンジン搭載のスイーピングマシーンの開発製造は、インド初のことだった。

クボタエンジンのインド市場開拓は、今まさに緒に就いたばかりである。インド国内メーカーの廉価なエンジンが席巻している状況をどう突破していくか。決して楽観は許されない状況であるが、旺盛なエンジン需要を背景に、「クボタブランド」の浸透を図っていく考えだ。

「ビジネス規模を拡大し、まずはインド国内に拠点を設けること。将来のインド現地生産も視野に入れて、インド市場を開拓していきたいと考えています。それがインドの各産業を支援し、インド経済の発展に資するものと考えています」(飯田)

2016年12月に開催された建設機械分野の展示会「BAUMA CONEXPO INDIA」に初出展し、インド市場に広くPRをした