GLOBAL INDEX
December 2016

FEATURE
"Republic of India"

04

「Make in India」
地域密着型
サプライチェーンへ

ローカルスタッフとのコミュニケーションが品質を生む

マルチパーパストラクタ部品の67%をインドで調達

マルチパーパストラクタ「MU5501」は、従来と異なった新たな生産方式が採用されている。インドで部品の調達を行い、タイの工場で量産、最終的な組み立てをインド・プネに新設されたKAIの工場で行うというものだ。

この流れの中で、大きな役割を果たしたのが調達本部インドオフィス(KIO)である。KIOは、インドの営業拠点であるKAIよりも早く、2006年に開設された。そのミッションは、現地での部品調達情報の収集・分析などである。生産性向上、競争力確保のカギを握る要素の一つが、原材料・部品の現地調達や設備の現地化である。クボタは早い時期からグローバル・サプライチェーンの構築を進めてきた。タイ、中国、そして2006年にはインド・デリーに現地調達事務所を設け、サプライチェーン拡大の活動を推進、現在、現地の部品メーカー37社がクボタのグローバル拠点に部品を供給している。「MU5501」においては、タイ生産であるにもかかわらず、部品の67%をインドで調達、早期立ち上げに貢献した。2012年から事務所の指揮を執っているのが所長の上田純也である。上田は北米での部品調達の仕事を経て、インドに赴任した。

調達本部インドオフィス 所長
上田 純也

「ローカルの企業と取引するうえで大切なのは、徹底して地域に密着して信頼関係を築くこと。自分が心を開くことで相手も心を開きます。そうしたコミュニケーションを通じて、仲間を増やしていくのが自分の使命だと思っています。インドはモノづくりの国であり、その全体量は世界最大規模。単に調達するのでなく、そのモノづくりをクボタクオリティにレベルアップする必要があり、それをサポートしていくのが調達本部の大きな役割です」

クボタグループにおけるサプライヤーの品質・生産管理能力の向上、人材育成や地域貢献に向けた取り組みとして、特筆すべきなのが年に一度、世界中のサプライヤーを日本に招いて開催される「グローバル改善コミュニティ」だ。今年は約200社が参加した。それぞれが品質向上や生産性向上など、課題解決に向けて行った取り組みをコンペティション形式で発表するもの。従来、サプライヤーに対しては指導改善というスタンスが基本だったが、「グローバル改善コミュニティ」活動は、自立を促すものだ。この「グローバル改善コミュニティ」に参加したインドのサプライヤーの1社が、デリー近郊に本社を構える「ラウナック オートモーティブ社」である。

KAIプネ工場
プネ工場では最終的な組み立てと検査が行われている
プネ工場では最終的な組み立てと検査が行われている

インドのサプライヤーが語る
クボタの品質向上、改善の取り組み

ラウナック オートモーティブ社
社長
グラシャラン・シン氏

「ラウナック オートモーティブ社」は、2006年にデリー事務所開設と同時に、クボタグループへのギア部品供給を開始、クボタ調達本部からの改善指導もあって、品質と生産管理能力が劇的に向上した。現在はクボタグループの日本やタイの工場にギア部品を供給、インド製ギアを初めて日本に量産納入したのも同社である。同社のグラシャラン・シン(Gursharan Singh)社長は当時を振り返って、次のように語る。

「驚きました。材料ベースからモノづくりに取り組み、品質管理を徹底するクボタの姿勢は、私たちにないものでしたから。日本では当然とされる品質を実現するため、クボタが私たちを導いてくれた。クボタに育てていただいたと思っています」

同社がクボタというグローバルブランドに部品を供給しているという実績は、瞬く間に他メーカーに伝わった。クボタと取引しているという信頼性を背景に、欧米の大手自動車メーカーとも取引を開始、急成長を遂げている。現在では、売上げの約50%が輸出ビジネスとなるまでになった。シン氏がクボタに期待すること。それは1日も早い、インドでの現地生産体制の確立だ。すでに部品調達のサプライチェーンはほぼ完成しており、現地生産に向けた準備は整いつつある。

インドが世界の製造ハブになる
Make in India の本格的実践へ

現在、インドは「Make in India」と呼ばれる経済政策を打ち出している。文字通り「インドでのモノづくり」を示すもので、すなわち、国内外からの投資を促進し、インドを世界の魅力的な製造ハブ(結節点)に発展させることで、インドの高い成長率と雇用創出を目指す政策だ。インドでの部品調達による「MU5501」の立ち上げは、「Make in India」実践の第一歩であり、近い将来を見据えた本格的な「Make in India」への布石といえる。

「今、多くの製造業で“地産地消”の重要性が指摘されています。インドで生産体制が整えば、ローカルでほとんどの部品調達が可能となります。そうした姿が地域貢献、社会貢献へとつながり、クボタのインドでの存在意義をより明確にすると思っています」(上田) およそ10年にわたって築き上げたインドにおける強固なサプライチェーンは、今後のインド市場戦略において、重要な基盤となることは間違いない。

シン氏がクボタと一緒に調達をアピールした「クボタ グローバル調達ミーティング」(インド エンジニアリング製品調達展示会2014にて)