GLOBAL INDEX
December 2015

FEATURE
"French Republic"

04

クボタ、グローバル
メジャーブランドへの道

最終チェック段階のM7001。三方から照明があたり、どんな小さな傷も見逃さない

すべてが初物へのチャレンジ

KFMの社長に着任した山本は、これまで北米の生産拠点をはじめ、生産技術畑を一貫して歩んできた技術者だけに、モノづくりにかける想いは人一倍強い。だが今回のKFMの立ち上げは、今までにないチャレンジングな試みであり、指揮官として成功させる使命を担っていた。山本が振り返る。

「初めて尽くしでした。今までは海外に生産拠点を設立する場合、日本で開発製造されたものを海外に移管するという形で立ち上げてきました。しかし今回は、開発をほぼヨーロッパを拠点に一から行いました。『M7001シリーズ』はクボタのフラッグシップと位置付けられる製品であり、決して失敗は許されない緊張感が常にありました。工場建設もフランスでは初めてであることに加え、フランス特有の法規制に何度も直面し、それを一つひとつクリアしていったのです。また、特筆すべきは、欧米の主流であるビジネスアプリケーション『SAP』を、製造システムで初めて採用したことです。『SAP』の導入は、モノづくりにおいて日本流の“人が目で見る管理”から、欧米流の“システム上でデータ管理”するスタイルに転換するものでした」

緻密な工程管理のもと、パーツごとに組み立てられていく
緻密な工程管理のもと、パーツごとに組み立てられていく
緻密な工程管理のもと、パーツごとに組み立てられていく
完成したM7001。しかし、まだ厳しい最終チェックが待っている
完成したM7001。しかし、まだ厳しい最終チェックが待っている
完成したM7001。しかし、まだ厳しい最終チェックが待っている

お客さまの“のぞみ”を超える
アフターサービスを目指して

連動してヨーロッパ市場開拓の戦略も進められていた。製品自体の優位性、差異化に加えて重要なのがサービスである。大型トラクタ最後発であるクボタにとって、市場での優位性確保のためには、販売後のアフターサービスの充実は重要な鍵を握る。もちろん、従来から小型トラクタにおいてもアフターサービスには力を注いできたが、大型トラクタとなるとその内容もニーズも大きく変わってくる。KFMのサービス部門を率いる、サービスプロダクトサポート部長の飯野宏は次のように語る。

「草刈りなどで使われる小型トラクタとは違い、大型トラクタは畑作そのものに使用されますから、高度なメンテナンス技術を備えたアフターサービスがより重要になります。そのためディーラーには、今後畑作に対応した最適なサービスの提供を実践してもらうことが求められてきます」

農業には、ベストな作業期間というものがある。農機の故障による作業中断は生産性の低下を意味する。故障自体を回避することも重要だが、広大な畑の中で万が一故障した場合、いち早く駆けつけなくてはならないのが、畑作用大型トラクタを提供する者に求められることなのだ。飯野は続ける。

「他社も当然、アフターサービスの充実は図っています。ですから、クボタにしかできないことを提供していくことが必要です。それはクボタが長年にわたって大切にしてきた、お客さまのもとに足を運ぶこと。これこそがクボタ流。地道な取り組みですが、そうした活動が品質向上、ひいてはお客さまからの信頼獲得につながると考えています。その実践のためにも、ディーラーの教育にも力を入れ、レベルアップを図っていきます」

クボタファームマシナリーヨーロッパS.A.S.(KFM)社長・山本 万平(右)とサービスプロダクトサポート部長・飯野 宏(左)

クボタの挑戦は終わらない

クボタは現在、最高レベルの品質、コスト、納期が確保できる「Made by Kubota」の実現を目指した、クボタ生産方式の早期確立を進めている。射程に置いているものの一つがリードタイムの短縮である。山本は語気を強める。

「私たちが目指すリードタイムの短縮は、サプライヤーがモノを作り始めてから、KFMで完成品となってお客さまのもとに届くまでの一連の流れを指します。『M7001シリーズ』は、お客さまの要望に合わせてカスタマイズできる製品ですから、それに対応して、いかに早く届けるか。他社では4~5ヵ月かかるものを、KFMはその約半分の2ヵ月を目指します」

現在、「M7001シリーズ」は出荷が始まり、ディーラーのもとに順次届けられている。その一人であるMaxime Feulet(マキシム・フォレ)さんは「お客さま第一」というクボタの理念に共鳴して、クボタ製品を扱うことになったディーラーだ。

「『M7001シリーズ』には大きな期待を寄せています。大量収穫、生産性向上のスプリングボードとなるでしょう。ディーラーとしては高いサービスを提供することでクボタファンを増やしていきたいと思っています。また、近い将来、200馬力クラスの大型トラクタをクボタに作ってもらいたいですね」

走行テストを行うM7001

KFMは、2017年には年間3,000台の生産を計画している。ヨーロッパのみならず、北米、オーストラリア、日本にも輸出していく考えだ。開発陣は新たなステージに入った。

「市場投入が始まり、ユーザーと正面から向き合うことになります。改良すべきところは改良し品質をさらに高めて安定生産を実現すること。それが当面の目標です」(稲岡)

今回の「M7001シリーズ」の開発プロジェクトは、まったくのゼロから作り上げた初めての挑戦だった。開発スタッフのみならず、全社員の想いが一つに結実した取り組みだった。しかし、ヨーロッパ以上の巨大畑作市場に北米がある。北米の畑作で使用されているトラクタは200馬力以上クラスのものが少なくない。先にはさらなる大型トラクタへの挑戦が待ち受けている。まさに生き残りをかけた戦いが始まった。その戦いを勝ち抜き、世界の畑作市場に「M7001シリーズ」を供給していくことが、グローバルメジャーブランドへの道であり、クボタが世界の食料問題解決に大きく貢献することに繋がっていく。