ブーム再来、あのヘルシーなデザートの“意外と知らない”原材料に迫る

2019 . 01 . 23 / Wed

TECHNOLOGY

タイのクボタエンジニアに聞いた ブーム再来、あのヘルシーなデザートの“意外と知らない”原材料に迫る

文・写真=クボタプレス編集部

ころんと丸い粒々に不思議なモチぷる食感が、やみつきになる魅力のタピオカ。ヘルシーで腹持ちがよく、カロリーの割にはダイエット向きともいわれ、特に女性の間でブーム再来中です。昨今、アジアンスイーツ本場の国々から、タピオカドリンク専門店がいくつも日本に進出し、買い求める人が行列を作っています。カフェのメニューやコンビニのスイーツコーナーでも、すっかりおなじみに。しかし、タピオカパールが何でできているのか、あまり知られていないもよう。日本国内では限られた地域でのみ少量生産されている“未知なる”原材料について探るべく、主要生産地タイのパトゥムターニー県にあるSiam Kubota Corporation Co., Ltd.(サイアムクボタコーポレーション 以下、SKC)を取材しました。 すると、食材にとどまらず大きな可能性を秘めた正体が、明らかに……

タイに設立したSKC(サイアムクボタコーポレーション)画像

アジア重要拠点の一つ、タイに設立したSKC(サイアムクボタコーポレーション)を足掛かりに、クボタは現地およびASEAN地域での農業機械事業のさらなる拡大を目指しています。

食料難とエネルギー危機から人類を救う、期待のキャッサバ

キャッサバを知っていますか。「聞いたことならあるけれど、見覚えないかも」と思う方が多いのでは? 中南米が原産で、広く熱帯で栽培されている食用作物です。塊根(イモ)から採ったでん粉を加熱すると、タピオカ(球状にしたものがタピオカパール)になります。キャッサバのイモには、人間の体内でシアン化合物に変化する強い有毒成分が含まれるため、皮と芯を除去し、加熱・水洗いで毒抜き処理をしないと食べられず、日本では生の状態での輸入が禁止されています。日頃、加工品以外を目にする機会がないのは、そういった理由からです。
さて、キャッサバは近年、三大穀物の小麦・コメ・トウモロコシに次ぐ重要作物と認識されています。適地であれば生育しやすく、単位面積当たりの収穫量はきわめて安定し、大規模栽培向き。さらに、でん粉が豊富なことから、バイオエタノールやバイオプラスチックの原料など、炭素資源としての利用が増えてきました。このように多方面の用途があり、将来的な人口爆発やエネルギー危機の際には、世界の食料/エネルギー供給源になるだろうとの期待が膨らみます。

キャッサバ畑の風景 画像

熱帯の地域に見られるキャッサバ畑の風景。肥沃な土壌でなくとも生育しやすく、発達した地下茎にでん粉質を豊富に蓄えたイモが実ります。

タイから世界へ、貿易の“要”キャッサバ

中国やインドと並んで経済成長が続くタイでは、農業機械や建設機械の需要が伸びています。「グローバル・メジャー・ブランドの実現」を目指すクボタは、アジア重要拠点の一つ、タイに設立したSKCを足掛かりに、ASEAN地域での農業機械事業を拡大中です。徹底した現場主義のもとに創出する農機や技術サービスは、現地の食生活や経済活動に即しています。SKCの前山達哉 副社長、インプルメント開発担当マネージャーのNirut Paksasun(ニルット・パクサーサン)さんにお話を伺いました。

――タイで栽培されるポピュラーな農作物といえば、やはりキャッサバですか。

「はい。キャッサバはタイ6大作物の一つ(※作付面積の多い順に、コメ・キャッサバ・トウモロコシ・サトウキビ・天然ゴム・果樹)で、2018年の生産量は2,720万トンにも上りました。熱帯の気候、砂まじりのローム層で水はけのよい土壌が、イモ類にとても適しているのです」(前山副社長)

――膨大な生産量ですね。どのような使われ方が多いのでしょう?

「だいたい7割が輸出されます。さまざまな用途があるキャッサバは、興味深いことに、輸出相手国の産業ニーズがはっきり表れているんですよ。塊根を生のままで求める中国は、バイオエタノールの製造用。スペインやオランダなどヨーロッパ諸国向けはチップ・ペレットに加工して、現地で豚などの家畜飼料になります。そして、日本も食用目的で大きなシェアを占め、タピオカでん粉の出荷が毎年相当量あります。残る3割がタイ国内消費で、内訳はでん粉または飼料です。タイはASEANの中で、農産物加工業と輸出の成功から、新興農業関連工業国と位置付けられています」(ニルットさん)

キャッサバの塊根 画像

これがキャッサバの塊根。人気スイーツやドリンクに入っているタピオカパールも、もちもちパンのポンデケージョも、このイモから精製されるタピオカでん粉から作られています。

キャッサバ専用農機開発の背景

――日本の農業は、高齢者の離農と世代交代の難航、新規参入のハードルの高さによる人手不足といった深刻な課題に直面しています。タイではどうですか。

「経済の成長とグローバル化が全国に浸透するにつれ、同様の懸念を生じています。都市へ出る若年層を中心に農業離れが進行し、農村地域の一部で高齢化と労働力の不足が目立ってきました。今後の農業生産に与える影響を考えると、機械化を実現して、生産効率と持続性を確保する対策が欠かせないでしょう。人件費や労働負荷の低減も大切です。この点も日本と共通しています」(前山副社長)

――そこで、SKCは稲作農機に加えて、タイの生活や経済と切り離せないキャッサバ専用農機の開発など畑作においても、もっと貢献しようと。

「農業機械導入がコメ農家の間で一段落し、次に畑作の作物が対象となった2012年ごろ、キャッサバの植え付けをするプランター、収穫を行うハーベスタの開発に着手しました。それらの2工程に最も人手を要するからです。2015年にプランター、2018年にハーベスタが誕生しました」(ニルットさん)

キャッサバプランターでの植え付けテストの様子

――稲穂のように地表で揃った高さに実るのではなく、地中深くに育っていくイモを扱うのは、難しいはず。開発にあたって苦労した点は?

「一口にキャッサバと言っても、品種はいろいろ【参考:独立行政法人国際協力機構『キャッサバABC』p.3】。用途も多岐にわたります。大学の研究機関やタイ政府と連携して、生育の研究や土壌・施肥の分析を重ねました。また、たくさんの栽培農家に赴き、畑での実作業をリサーチしてデータを取り、機械化のスペックを決定しました。
まず、プランターについては、畝(うね)の高さに対するシューティングの深さ、トラクタに接続してどれだけの車速に耐え得るかなど、手探りで始めました。5~7月の植え付け期の間、試作機を協力農家さんに使ってもらい、ピッチ1mの畝に60~80cmの間隔で、種イモを約25cmにカットしながら植え付ける工程を繰り返しデモンストレーション。現在の精度になるまで3年かかりました」(ニルットさん)

手作業で種イモをカット 画像
手作業で種イモをカットするのは、かなりの手間。プランターの開発によって、その負荷と時間は不要になりました。

畝に挿し木すると容易に根が生える 画像
植え付け期は5~7月ごろ。畝に挿し木すると容易に根が生え、約半年で塊根が形成され、1年くらいで収穫できます。

――収穫には、別の大変さがあったと推察します。

「実はハーベスタの方が試行錯誤しました。植え付けのシューティングは、試験農場で通年シミュレーション可能でしたが、収穫作業の検証は収穫期(12~3月ごろ)にしか行えませんから。イモのサイズ・形が一様でないうえ、地中にあって見えないために傷つけたり取り損ねたり、ロスを出さずに掘るのは容易ではありません。そこを徹底追求し、2018年に完成しました。まだ世に出たばかりで、これからいかに現場が便利に変わっていくかを楽しみに見守っているところです」(ニルットさん)

クボタハーベスタの手前に少し写り込んでいる白い塊根が、キャッサバのイモ 画像

クボタハーベスタの手前に少し写り込んでいる白い塊根が、キャッサバのイモ。SKCのエンジニアが収穫期のフィールドで繰り返し試験を行い、ロスのない掘り取り性能・収穫性能を追求します。

栽培農家の声が生きている設計を強みに

――タイやASEAN諸国では、栽培農家の何割くらいまで、キャッサバ農機の導入が進んでいますか。

「現時点、よほどの大規模な畑でない限り、もろもろ手作業でやっているところがほとんどです。キャッサバの栽培では、植え付け・施肥・収穫のいずれにおいても、人手を要するプロセスが多く、とりわけ収穫の後工程には、長さ50~70cmに成長した大量の塊根を斧などを用いて大勢で切断し、トラックに積載する重労働もあります。先ほど、タイでも就農者の高齢化と若手の離農傾向が懸念されるとお話しましたね。機械化を採り入れて労働負荷や人件費を抑えつつ、効率よい生産を持続して経営が改善されるよう、国内農家の啓発に力を入れています。
販売実績は、2015年に市場投入したプランターが、2年連続で約400台(ハーベスタは販売開始から間もなく、未集計)。立ち上がりは良好だと思います。初めにタイ国内で販売し、周辺国に展開していく方針で、ベトナムには試験機を導入する段階に到達しました」(ニルットさん)

――国内外にキャッサバ農機の競合は存在しますか。対するクボタブランドの優位性は?

「ほかにタイのメーカーがあります。私たちの強みは、農家のニーズを丁寧にヒアリングした成果を存分に発揮している点ですね。例えば、地域や農家によって、種イモ(苗木)の長さは20cmだったり25cmだったり、異なります。土質が乾燥がちな場合は、深めに植えたいとの意向もあります。クボタのプランターは、主流の25cmで設定しましたが、シューティングの深さを2段階対応にしたことで、どちらの要望もかなえる設計になっています。植え付けが適切かどうかで、芽の出方や根の成長が変わり、収穫にも影響するものです。ハーベスタも、地中しっかり根差した塊根を傷めずに、残さず掘り出せる特長が大変好評で、両キャッサバ農機とも認知度が高まってきました。SKCが身近なパートナーであると、より多くの方に実感してもらえたら幸いです」(ニルットさん)

農家の協力のもと、性能や使い勝手をテストするSKCのエンジニア 画像

フィールドに出て、農家の協力のもと、性能や使い勝手をテストするSKCのエンジニア。現場のニーズを丁寧にヒアリングし、試験機を改良します。

SKCの設計チーム 画像

SKCの設計チーム。農業の現場で直接体感した課題点、大学や政府との連携で得た研究データなどを突き合わせ、高度な技術力とノウハウをもって、真に役立つ農機の開発・改良に励んでいます。

目指すはASEAN全体の農業機械化をサポート

――さて、インタビュー前半で、“稲作農業の機械化が一段落して畑作向け農機に展開するときを迎えた”と伺いました。キャッサバ以外のインプルメントもありますか。

「サトウキビやトウモロコシ用のプランターとハーベスタ、それらを活用する植え付けと収穫の2工程を結ぶ、中間管理に有益な施肥機をすでに手掛けています」(ニルットさん)

――最後に、SKCの今後のビジョンを聞かせてください。

「タイにとどまらず、ASEAN全域および周辺国の農業発展への貢献が、私たちのミッション。東南アジアの主要作物であるコメ・キャッサバ・トウモロコシ・サトウキビ・天然ゴム・オイルパーム・果樹などを網羅して、営農全般を支えます。土壌づくりから、植え付け、施肥や防除などの中間管理、収穫に至るまで、『農作業機械化一貫体系』の完成が目標です。ASEANから世界へ、豊かで安定的な食料とエネルギーをもたらせるように、SKCは引き続き、トラクタやインプルメント、主要作物の収穫専用機の開発をリードしていきます」(前山副社長)

ニルットさんと前山副社長 画像

地元でおなじみ“安心・安全・高性能の象徴”となったSKCのキャッサバ専用機を囲んでポーズをとる、マネージャーのニルットさん[左]と前山副社長。

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