“水で空気を洗う”という発想から生まれた業務用加湿空気清浄機の開発秘話に迫る!

2020 . 7 . 3 / Fri

PEOPLE

クボタが加湿空気清浄機を手掛けたワケとは!?“水で空気を洗う”という発想から生まれた
業務用加湿空気清浄機の開発秘話に迫る!

写真・文:クボタプレス編集部

全国の家電量販店では、空気清浄機の販売台数が2020年2~3月期で前年比18%増(GK Japan調べ)になるなど、昨今のコロナ禍における換気意識の高まりから、空気環境の重要性が再認識されています。そうした意識の高まりは、家庭のみならず、オフィスなど多くの人が集まるパブリックスペースにも広がっています。2020年3月にクボタプレスで取り上げたクボタの業務用加湿空気清浄機「ピュアウォッシャー」も、当初300台だった2020年の生産計画が、実に3倍以上にのぼる1,000台へ引き上げられるなど、急激な需要の高まりを見せています。

今回のクボタプレスは、注目が集まるピュアウォッシャーの開発を手掛けたエンジニアへインタビューを実施。ピュアウォッシャー誕生までの経緯を紐解いていきます。

大空間を1台でカバーする業務用加湿空気清浄機「ピュアウォッシャー」とは?

ピュアウォッシャーは、“水のチカラで空気を洗い、キレイで潤いのある空気を創り出す”という発想から生まれた加湿空気清浄機です。工業用クリーンルームで用いられる技術を応用して開発されたもので、取り込んだ空気中の浮遊ウイルスやカビを捕らえ、機内で生成する微酸性電解水*1で分解します。

*1 強い除菌力と、高い安全性を両立した機能水。アルコール消毒では効果の低い、ノロウイルスをはじめとしたウイルスや幅広い菌を抑制する効果が見込まれています。

大空間を1台で同時に除菌、加湿、消臭、空気清浄(除塵)するピュアウォッシャー。

機内で生成された微酸性電解水を取り出し、さまざまな用途に使える点は、ピュアウォッシャーの特長のひとつ。その機能やコストメリットが評価され、介護施設やクリニックをはじめ、オフィスや工場の食堂、休憩場所にも導入されています。

ニーズ、注目度ともに増し、さまざまな場所で活躍しているピュアウォッシャーですが、その開発背景はどのようなものだったのでしょうか。ピュアウォッシャーの開発を担当した精密機器技術部・相澤拓さんにお話を伺いました。

前例のない製品作りへの挑戦と苦悩

――ピュアウォッシャー誕生のきっかけを教えてください。

「私は1998年にクボタへ入社し、上下水道の水処理のエンジニアとして従事していたのですが、2007年に当時の空調事業部(現、クボタ空調)に異動し、新しい事業機会を模索することとなりました。2003年のSARSや2009年の新型インフルエンザの流行、PM2.5による大気汚染などを受けて、家庭用空気清浄機のニーズが高まっていましたが、パブリックスペースや大空間向けの製品はありませんでした。この家電の流行の波が、徐々に業務用、大空間向けにも来るのではないかと考えたのが最初のきっかけです」

相澤拓(あいざわ たく)さん。1998年に入社し、水処理のエンジニアとしてクボタでのキャリアをスタート。2011年からピュアウォッシャーの製品企画、開発を担当されています。

――ピュアウォッシャーには、どんな技術が使われているのでしょうか?

「クボタ空調は、液晶パネル工場やプラズマディスプレイ工場のクリーンルームで使用されている空調機を開発・製造しており、そこで用いられる『エアワッシャ』という技術の実績と知見を積み重ねてきましたが、これを対人空調に応用できないかと考えました。エアワッシャは純水をミスト状に噴射して、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を除去するという技術です」

高度な空気清浄化が必要な工業用クリーンルームで活用されているエアワッシャ技術。

――開発に際し、苦労した点はどこですか?

「前例のないアイデアだったので、製品のコンセプト作りはとても苦労しました。空気清浄機といえば、当時既にイオン式が一般的だったため、『なぜイオンではなくわざわざ水を使うのか?』『なぜ微酸性電解水を使うのか?』『もっと小さくて売りやすい方が良い』などいろいろな声がありました。これらの声をまとめ上げながら、技術的にも成立する製品の開発に注力しました」

――周囲を説得しながら、まったく新しい製品を作り出すことには大変な苦労があったと思います。

「ピュアウォッシャーの開発以前には、収穫した穀物を乾燥させて保存性を高める穀物乾燥機の開発にも携わっていました。その際も、異なるバックグラウンドをもつ新たなメンバーと一緒にそれぞれの知見や経験を持ち寄り、思考を拡散、収束するプロセスを経て新たな製品を生み出していったのですが、まさにその時の経験が活きていると言えます」

――他にも課題となったことはありましたか?

「いかに筐体をコンパクトにするかも課題でした。エアワッシャには加湿距離という、水を噴射したときに空気と水が接触するための空間を設ける必要があります。この加湿距離を取りつつ、筐体をコンパクトに収める点にも工夫が必要でした」

パブリックスペースに設置できるコンパクトな筐体サイズと、エアワッシャ技術による機能性を両立している点がクボタのノウハウ。とはいえ、ただ小さくすれば良いわけではないそうです。既存のオフィスや店頭など、ピュアウォッシャーが置かれる空間に馴染むデザイン性が求められる一方、設置には給排水工事が必要など、要求仕様は多岐にわたりました。

設置する場所の雰囲気を壊さない、自然なデザインもピュアウォッシャーの特長です。
通行の妨げにならないよう、幅よりも奥行きを重視したとのこと。

エアワッシャと微酸性電解水の組み合わせが独自性に

不純物をほとんど含まず、汚れを除去する純水を噴射するという、クボタ空調が培ってきたエアワッシャ技術。これを、水道水を使うピュアウォッシャーで応用するためには、水に除菌力をもたせる必要がありました。そのために微酸性電解水が採用され、エアワッシャ技術と微酸性電解水の組み合わせがピュアウォッシャーの特長となりました。

開発では微酸性電解水以外にも、オゾンや二酸化塩素といった除菌剤、紫外線など光を照射して除菌する技術など、さまざまなものが検討されたとのこと。その中で、なぜ微酸性電解水が選ばれたのでしょうか。

――水に除菌力をもたせるために、微酸性電解水を選んだ理由を教えてください。

「重視したのは対人用としての安全性です。パブリックスペースでの業務用加湿空気清浄機に関するニーズ調査を行うために、空調設備を手掛けるゼネコンや設計事務所にヒアリングをしたところ、建築設備系の方がどなたも重要だと言っていたのが、安全性でした。安全性が高く、なおかつ除菌力を確保できる方法が、高い除菌力をもつ次亜塩素酸が多く含まれ、厚生労働省より食品添加物にも認定されている微酸性電解水を用いることでした」

――エアワッシャと微酸性電解水を組み合わせる点が、クボタとしての独自性の高さにつながるのでしょうか?

「そうですね。ピュアウォッシャーでは、水を機内で循環させているのですが、空気清浄しながら水を循環させると、空気中の菌や汚れを取り込んで水がどんどん汚れていくので、微酸性電解水を添加して水に含まれる菌や汚れを分解し、捨てる水の量を減らしています。水に微酸性電解水を少し加えることで、循環して使えるようにしている点は、クボタならではの技術ですね。また、微酸性電解水を多く混ぜれば除菌力は高まりますが、プール臭のようなにおいが強くなります。そこはテストを重ねて、濃度と運転時間による菌の数の変化を追い、最適な濃度を導き出しました。クボタ空調のオフィスに1か月ほどプロトタイプ機を置いて、稼働条件を変えながら従業員に毎日アンケートを取っていったんです。においや稼働音、風の到達距離などを、在室者の生の声を聞きながら検証していきました」

――微酸性電解水を取り出せる点は、ピュアウォッシャーの大きな特長です。これを可能にした経緯を教えてください。

「微酸性電解水を取り出すというアイデアは当初からあったのですが、民生用途でのニーズの存在に確証が持てなかったことと、技術的なハードルの高さから、最初は取り出し機能を実装していませんでした。その後、営業と一緒に市場調査を進めたところ、介護老人保健施設や病院、ペットショップなどで微酸性電解水を取り出して表面除菌に使う事例があったんです。微酸性電解水は業務用で1リットルあたり300円ほど、ドラッグストアでは1リットルあたり1,000円ほどで売られていますが、ピュアウォッシャーなら1リットル約1~2円*2で使うことができます。そこで圧倒的なコストメリットを訴求できると考え、取り出し機能をつけました。微酸性電解水の取り出しや自動給排水機能は、導入先でも大変喜ばれているようです。あるクリニックではこれまで複数の空気清浄機を使っていて、給水作業の負担や、誰が給水するのかを決める手間がかかっていたそうですが、ピュアウォッシャーの導入によってそれらが解消し、本当に楽になったという話を伺っています。搭載した機能がお役に立てていることは、素直にうれしいですね」

*2 ピュアウォッシャーで微酸性電解水を1リットル生成する場合の、電気代、水道代、薬液代の合計。


もともと水処理のエンジニアとしてクボタに入社した相澤さん。その後クボタ空調に異動し、ピュアウォッシャーを作ることになるとはまったく想像していなかったと微笑みます。多くのテストを重ねてにおいや除菌力といった水の質を管理するという点に、エンジニアとして水と向き合ってきた相澤さんのルーツを感じました。

手軽に取り出せる微酸性電解水は、テーブルの除菌や排水箇所の雑菌対策など、幅広く活用されています。

エンジニアが見据えるピュアウォッシャーのゆく先

営業部門からは、IoT対応などさまざまな要望が上がってきているというピュアウォッシャー。その中には小型化を望む声もあるものの、相澤さんにはまた違った視点があると言います。

――今後の機能改善・向上の展望を教えてください。

「『小型のものは作れないのか』という声も届いていますが、逆にもっと大きくするのも良いのではと考えています。というのも、広い空間でも空気を撹拌できるものでないといけませんが、サイズが小さいと風量も少なく、筐体の周辺しか空気を循環させられないんです。撹拌効果を狙うなら、筐体のサイズを大きくして風を飛ばす必要があります。単純に大きくするだけだと邪魔になってしまうので、サイズアップ以外の方法も考えていますが、そういう逆の発想も必要じゃないかと思います」

――今後、ピュアウォッシャーを広げていきたい市場はありますか?

「オフィスですね。今はBCP(Business Continuity Plan, 事業継続計画)対策、さらには健康経営への意識も高まっていると思うので、ピュアウォッシャーを通じてオフィスワーカーの方々が安心して快適に働ける環境づくりに寄与したいと考えています。実際、オフィスからの引き合いも増えています」

――最後に、相澤さんの今後の目標、抱負を教えてください。

「水で空気を洗うエアワッシャ技術と微酸性電解水の組み合わせ、また微酸性電解水が取り出し可能なことによるコストメリットという特長が、ピュアウォッシャーを他社にないオンリーワンの業務用加湿空気清浄機として確立させていると自負しています。日本全国で約260法人、約700台の納入実績がありますが、今後はオフィスでの導入数も増やして、事業を伸ばし、感染症に強い空間づくり、社会づくりに貢献していきたいと思っています」

相澤さんは笑顔を交えながら、ピュアウォッシャーの今後の展望を語ってくれました。

編集後記

1890年、鋳物業からスタートしたクボタは、1893年に水道用鋳鉄管を製品化。その後もバルブ、ポンプや水処理システム、浄化槽などを手掛け、創業以来「水」に関わり続けてきました。

そのクボタの空調関連事業は、高度経済成長期の建設ラッシュによる施設の空調機器ニーズに合わせ、1970年にアメリカの空調機器大手・トレーン社との合弁企業「クボタトレーン(現:クボタ空調)」が設立されたことに始まります。それから約50年後、古くから水に関する技術とノウハウを蓄積してきたクボタならではの技術が詰め込まれた、オンリーワンの業務用加湿空気清浄機が誕生しました。

海外展開について尋ねると、まずは国内でピュアウォッシャーの事業を固めていくとしつつ、ゆくゆくは海外にも展開しなくてはいけないと、足元を見つめながらも将来の展望を語ってくださった相澤さん。パブリックスペース用の加湿空気清浄機という市場がまだ存在しないうちから、時代に応じた社会課題を見つけ、真摯に向き合ってその解決に取り組むというクボタらしいものづくりの姿勢が、ひしひしと感じられたインタビューでした。

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