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連載第3回:初めての海外駐在でつかんだ「マイ外国語上達法」!〈スペイン語編〉目的意識をもって取り組む。それが、言語の習得・業務・異文化理解のカギ

2018 . 01 . 17 / Wed

目的意識をもって取り組む。それが、言語の習得・業務・異文化理解のカギ

文・写真=クボタプレス編集部

グローバル市場で活躍する日本人ビジネスパーソンの全員が、必ずしも最初から外国語に堪能だったわけではありません。語学力に不安を抱きながらミッションを背負って海外へ赴任し、どのような方法で“現場での語学力”をアップさせ、国境をまたいだ仕事を進めていったのか。そんなビジネスパーソンの「マイ語学上達法」をシリーズでお届けします!

第3回〈スペイン語編〉に登場していただくのは、Kubota España S.A.([クボタエスパーニャS.A.] 以下、KES)に赴任して約1年、トラクタ海外営業部の加藤秀樹さんです。スペインのマドリードと日本との時差は、8時間。年末年始が近づき慌ただしさの増すなか、朝早く始業前に、颯爽とWebインタビューに応じてくださいました。

「可能な限り早い赴任を」と求められ、スペインへ

クボタは1970年代半ばのKubota Europe S.A.S.(クボタヨーロッパS.A.S、本社所在地:フランス)設立を足掛かりに、農機・建機・エンジンの製造・販売子会社を各国に設立して、欧州機械事業の拡大を図ってきました。現地の生活様式やお客様のニーズに密着し、徹底した現場主義で、グローバルメジャーブランドの実現に邁進中です。事業最適化のため、各拠点では国別でなく事業別に運営が展開され、KESはトラクタと汎用機械の販売を担っています。現地法人経営幹部の現地化が進むなか、2017年1月にスペイン人の社長が就任。そのタイミングで、加藤さんに営業コーディネーターのミッションが与えられました。

「『できれば年内に来てほしい』とスペイン赴任の辞令を受けたのは、2016年10月でした。直ちにビザを申請しても、手続きの関係でそれには間に合わず、取得でき次第マドリードへ飛ぶことに。年明けて間もなく、新天地に降り立ちました」(加藤さん)。

決まって3か月以内に、当時かかえていた業務の引継ぎと渡航・居住などの手続き。目まぐるしい様子が目に浮かびます。言語や生活の準備は、必要最低限になってしまいました――と焦燥感のある振り返りを想定していると、「もともと中南米各国の営業担当で、ドミニカやボリビアほか(いずれもスペイン語圏)での仕事を経験していましたから、言葉の不安はそれほど感じていなかったです」と、落ち着いた答えが!そこで、まずは加藤さんの入社後の足跡をたどりました。

人が生きていくための食料生産に貢献したい

「社会に誇る製品を手掛けるメーカー、グローバルな活躍ができる職場環境で働く自分を、かねてから思い描いていました」。幼少の頃より農業が身近な存在だったことから、人が生きるうえで欠かせない食料生産を支える農業機械に興味・関心をもつようになったと話す加藤さんは、2010年にクボタ入社。日本の国内農機市場でキャリアをスタートしました。2012年4月、トラクタ海外営業部に異動すると、転機が訪れます。翌年、中米グアテマラへ3か月間のスペイン語研修に行き、スペイン語の基礎を習得。以後、日本で語学スクールに通って語学力を高めながら、日常的に中南米とやり取りし、年に何度も現地に出張するなど、ユーザーの声に直接触れてきました。入社5年目には、ドミニカでの中南米ディストリビューター会議の企画と運営責任者を務め、またボリビアに新規ディストリビューターを開拓し、販売開始に導くなど、チャレンジングなプロジェクトを推進しました。その手腕を評価され、2017年1月より、日本側とスペイン側の架け橋として現地化を円滑に進めるべく、KESの営業コーディネーターに抜擢されました。

「KESの従業員のうち、日本人は現地採用の女性1人と私だけです。ある程度のスペイン語力は身についていると自負していて、赴任に際して言葉の心配はあまりしなかったものの、スペイン人ばかりの職場環境を考えると、業務の遂行がスムーズにいくだろうか未知数でした」

担当業務はどのような内容ですか。すべてスペイン語で行われるのでしょうか。

「駐在員が1人しかいないため、業務は多岐にわたります。営業関連7割・その他3割くらいですね。営業関連では、ORANGE DAYSと銘打ったM7をはじめとする大型トラクタの試乗会の企画推進や受発注の管理、営業に関する問い合わせ、さらに新製品導入推進などがあります。日本人スタッフと接する時以外はスペイン語を使用し、基本的に英語を介することはありません」

現地スタッフとコミュニケーション

KES唯一の日本人駐在員の立場から、業務の依頼をすることが多々あります。和気あいあいとした雰囲気のなかにも、スペイン語で丁寧な伝え方を心掛けつつ、現地スタッフとコミュニケーションを図っています。

スペインのスペイン語、中南米とは違う

基本的なスペイン語力は備わっていても、ところ変われば勝手が違い、戸惑う場合も。

「スペインのスペイン語と中南米のスペイン語は、ずいぶん異なります。発音だけでなく、単語や言い回し、意味も違い、当初はかなり戸惑いました。例えば、自動車という単語。中南米では‘carro’ですが、スペインでは‘coche’です。両方とも正しく、どちらでもネイティブには理解してもらえます。でも、自分自身がもし中南米で使われる表現しか知らなければ、スペイン人の話す内容を理解して付いていくことは、できなくなります。語彙を豊かにする必要がありますね。業務依頼のやり取り以外でも、生活の中の言葉に多く触れるよう努めていて、何かをサポートしてもらった時には、しっかり相手の名前を呼んで感謝を示し、密なコミュニケーションを心掛けています」

スペイン語学校、マンツーマンのクラス。

スペイン語学校に週1~2回通い、マンツーマンのクラスで学んでいます。語彙と教養を広く身につけることの大切さを日々感じます。

スペイン語検定に挑戦する予定。

4月にはスペイン語検定に挑戦する予定。また、語学と併せて異文化理解にも努めながら、覚えたことを職場ですぐに実践しています。

ネイティブの話すスピードは速いですか。

「1対1であれば、お互いの表情や反応を見ながら語り合いますから、相手の話を理解することも、自分の意見を伝えることも、大変には感じません。3人以上の会話や会議が白熱し、スピードアップされると、今でも付いていくのは難しくなってきますね。業務上頻繁に使う単語や依頼・提案の表現は、あらかじめ吸収しておくことが前提です。それから、政治からサッカーまで幅広いトピックに関心をもち、教養を身につけることも大切だと強く感じます。スペイン人は雑談上手な人が多い印象です。『雑談』の文字が表すごとく、“無駄話”のイメージがあって、日本人は良しとしない人も多いでしょうが、適度に採り入れるなら風通しが良くなり、仕事もスムーズに進むのではないかと思います。ただ実際は、そろそろ本題に入らないかな/仕事に戻って欲しい…… と思うことも多々あるので、バランスが大事です(笑)」

スペインの「今すぐ」、日本とは違う

加藤さんがもうひとつ、違いを感じた文化。それは時間に対する感覚です。

「『今すぐ行きます/やります』と現地で言われた時の心積もりについて。日本人が一般に認識している、“直ちに”の意味とは異なります。『今すぐ』と言いながら1時間、果ては半日掛かってしまうこともあります。では、その分も加味して二重のスケジュール(理想的な流れとデッドライン)を設けるなど、特別な工夫を講じているかというと、そこまでは縛っていません。突発的な予定変更は、日本にいても起こり得ることですし、現場にはさまざまなケースが考えられます。日頃からコミュニケーションを密にし、無理のない予実管理を通じて計画の達成を図ることは、駐在営業コーディネーターの主要な役割です」

クボタ製品の品質はヨーロッパでも高評価。

クボタ製品の品質はヨーロッパでも高評価。例えばワイン生産国スペインでは、ブドウ畑でナロータイプのトラクタが用いられているなど、現地の食文化に根差したニーズに応える醍醐味があります。

赴任前の自分にメッセージを贈るとしたら

既にスペイン語の素養とスペイン語圏での実績があった加藤さんにも、恒例の質問をしてみました。もしスペイン赴任が決まった直後の自分自身に会えるならば、より円滑な業務を可能にするために、どのようなアドバイスをするでしょうか。

「言語に関しては、『とにかく語彙力を鍛える』の一言に尽きます。具体的には、文章や会話に出てきた時、流れから意味を汲む認識語彙だけでなく、自ら表現できる運用語彙を確実に増やしなさいと。あとは、専門用語ですね。主な農業機械関係の用語はスペイン語で何というか、単語帳を作って整理していくと役立ちます。現地では日本人の仕事のイメージ=きちんとしている/クボタ製品の評価=品質が良い、と高評価。ワイン用ブドウ畑でナロータイプのトラクタが用いられているなど、対ヨーロッパらしい貢献を実感できますよ」

加藤さん。

「駐在営業コーディネーターの役割を通して、多様な価値観や文化の人々と協力し合い、進むグローバル化・複雑化するニーズに対応する力を磨いていきたいです」と語る加藤さん。

語学力向上のためにしていることがあれば、教えてください。

「週に1~2回、スペイン語学校に通い、マンツーマンのクラスで学んでいます。学校で覚えた表現は職場で使うことを習慣づけていますね。4月にはスペイン語の検定試験を受ける予定です。試験合格を目標に掲げるように、日頃から何事にも目的意識をもって取り組んでいます。数年前『海外で営業コーディネーターに』と希望したキャリア設計が叶った今――次は近い将来、途上国の農業機械化や作業効率化と生活の向上・食料増産に貢献したい。そのために、責任の大きな駐在のポジションでマネジメント力を発揮しつつ、多様な価値観や文化の人々と協力し合い、加速するグローバル化やさまざまな困難に対応できる力をしっかりと磨いていきたいです」

現地の同僚とのコミュニケーションに使える表現

【フレーズ】

■¡Hay que apretar! (頑張っていこう!)
「KESの社長の口癖で、日本語にすると『頑張ろう!』という意味。現地スタッフの間でも流行っている言い方です。繁忙期には特に、自分自身や周りの仲間を鼓舞するように、このフレーズがよく使われます。業務の依頼をする時、一緒に頑張ろうとの意味を込めて、¡Hay que apretar! を最後に付け加えて、申し送りを結ぶことも多いですね」

【文法】

■あなたを表すtúとusted
スペイン語では、あなたを指す人称代名詞に2つの言い方があります。ひとつはtú(二人称単数)、もうひとつはusted(三人称単数)。前者は日本語で言う「君」に近いニュアンスで、身内・友人・年齢の離れていない相手などに対して、フレンドリーに使います。後者は「あなた」に近く、目上の人に用いて丁寧な印象を与えます。この使い分けのされ方もまた、中南米とスペインとでは異なるのです。
「以前担当していた中南米では、初対面はもちろん、仕事上の関係においては基本的に、usted=あなたが使われていました。それに対してスペインでは、初対面でもtú=君を使うことが多く、KES社員の皆もお互いにtúで呼び合っています。唯一の駐在員である立場上、部門のマネージャーに案件の依頼をすることが多く、túを使ったとしても丁寧な言い回しや表現を心掛けています」

▼例

  • Agradecería mucho si ~ (~していただけると幸いです) [仕事をお願いするフレーズ]
  • Cuando puedas (お手すきの際に) [先方が忙しい時の督促フレーズ]
  • Qué opinas? (どう思いますか?) [議論を活性化させたい時のフレーズ]

【ビジネスに役立つ教材】

■『中級スペイン文法』
文法で分からないことや確認したいことがあれば、この本を参照します。

■『異文化理解力――相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養』
語学を勉強するうえで、異文化を学ぶことは非常に重要です。本書はビジネスの場面で異文化を理解する要素を8つ挙げています: (1)コミュニケーション (2)評価 (3)説得 (4)リード (5)決断 (6)信頼 (7)見解の相違 (8)スケジューリング。例えば、(7)見解の相違について。概して、日本では対立回避型、スペインでは対立型の方が好まれます(相対的なもので、フランスはスペインよりもさらに対立型を好む傾向)。確かに、日々の会議に出ていると、見解の相違があった場合は上の立場の人にもはっきり意見を伝える風土であると分かります。この本を読んで以来、議論に貢献する意味でも、少しでも意見の相違がある場合は発言を心掛けています。

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