GLOBAL INDEX
December 2017

FEATURE
"Membrane Solutions"

06

食品加工工場からの
排水を浄化せよ
エコロジーと液中膜

遠方に風力発電の設備を望む。再生可能エネルギーに取り組むオランダの象徴的な風景だ

世界に広がるクボタのMBR・液中膜

EcoFuelsの排水処理設備。ここでバイオガスを生成する取り組みが行われ、その排水浄化にクボタの液中膜が使用されている

クボタは、1991年、MBR(Membrane Bioreactor = 膜分離活性汚泥法)のパイオニアとして液中膜の販売を開始、以来25年以上にわたり、現場での経験をもとに技術を磨いてきた。2001年にはクボタメンブレンヨーロッパLtd.(KME)、2005年にはクボタメンブレンU.S.A.Corp.(KMU)、2011年に久保田環保科技(上海)有限公司(KEES)を相次いで設立。国内のみならず世界の様々な地域の、下水や産業排水の浄化に液中膜を供給、世界の水、環境問題の解決に貢献してきた。2017年時点で、アジア・オセアニアで約4,600件、欧州・アフリカで約600件、北米・南米で約400件の納入実績があり、現在世界第2位のシェアを誇っている。

クボタが提供するMBRは、従来の排水処理技術である標準活性汚泥法に比べて、多くのメリットを有している。MBRの仕組みは、「微生物による分解処理」と「膜によるろ過」を組み合わせて、生活排水や産業排水を浄化するというもの。濁りを完全に除去、また従来法では分解が難しい有機物も除去が可能であり、更に大腸菌をほぼ100%除去できる。そのためMBR処理水は、排水基準を満たすことはもちろん、河川などへの放流、さらに散水やトイレ洗浄水にも再利用が可能である。加えて、メンテナンスの管理の容易さや設置面積の大幅な省スペース化も、クボタMBRが高い評価を受けている要素の一つである。

EcoFuelsは風光明媚な国立公園に隣接する

欧州で導入がすすむMBR
EUの高い水質基準をクリア

欧州、アフリカ、中東、南米などのマーケットを対象として液中膜の販売、アフターサービスを手がけているのが、イギリスに拠点を置くKMEだ。ヨーロッパの膜・下水処理市場は、イギリス、ドイツ、フランスなどの西欧諸国ではインフラ整備はほぼ終わっているため、新規需要は決して多くない。既設処理場の拡張や交換膜市場が中心となっている。一方、新たにEUに加入した国においては、EU基準に達することで資金が拠出されるため新規需要も多い。また、トルコやイスラエルなど、慢性的な水不足の中、観光産業に力を注いでいる国でも排水浄化へのニーズは高い。MBRはEUの各種水質基準に適合していることに加え、塩素消毒を好まない傾向が強い欧州では、受け入れられやすい排水処理技術とされている。

発酵技術によりバイオガスを生成する

オランダ食品加工会社の
バイオガス生成に寄与

EcoFuels社 プラントマネージャー
トワン・ゲラーツ氏

実際にクボタの液中膜を導入している施設を訪ねた。場所はドイツ国境に近い、オランダ農村地帯。ここで、オランダ国内有数の食品加工メーカーである「Laarakker Groenteverwerking」社が「EcoFuels」という事業を展開している。そのメインとなるのが、バイオガスの生成である。食品加工の際に出る廃棄物を利用し、先進的な発酵技術によって、サステナブルなエネルギー、バイオガスを年間約10万トン生み出している。そして、バイオガス生成過程で発生する排水浄化に採用されているのが、クボタの液中膜だ。処理された排水は河川への放流のほか、洗浄や灌漑にも再利用されている。ちなみに最後に残る廃棄物もコンポスト(堆肥)製造業者が引き受け、コンポストや培養基として利用されている。「EcoFuels」のプラントマネージャーであるトワン・ゲラーツ(Twan Geraedts)氏に、クボタMBR・液中膜導入の経緯を聞いた。

「元々、別メーカーの膜を採用していましたが、それが目詰まりしてしまったことから、新たな膜の導入を考えていました。その際に、エンジニアリング会社である『Colsen』から打診があったのがクボタの液中膜でした。信頼のおけるエンジニアリング会社であり、耐久性が高く、安定稼働を実現する膜と紹介されたことが決め手になりました。施設排水処理プラントで重要なことは、排水処理の浄化精度に加えて、プラント自体が安定的に稼働することです。排水処理の運転が中断することは、プラント全体、ひいては工場の運転が停止することになりかねないからです。また、実際オランダですでにクボタの液中膜を導入している施設があり、その評価が高いことも安心材料の一つでした」

バイオガス生成プラントにおいて、極力回避したいのが不測の事態における、プラント停止なのだ。加えて、ゲラーツ氏が注目したのがメンテナンスの少なさだ。液中膜は定期的に薬品洗浄を施す必要があるが、それは処理する水質によって大きく変化してくる。つまり、水質が悪化すればそれだけ薬品洗浄の必要が出てくる。その点に関してもゲラーツ氏の評価は高い。

「水質が変動しても安定した処理が可能であり、高度な処理水質を達成しています。薬品洗浄の回数もかつてに比べて少なく、それがコスト低減にも寄与しています。また単位時間・単位面積あたりの排水処理量が大きいため高い効率性も実現しており、クボタの液中膜には非常に満足しています。今後も、現在の技術レベルを維持し続けることに期待しています」

水・環境分野は、農業と同様に今後の世界の重要な課題になると考えられている。クボタは日本において、工場やプラントの遠隔監視や診断に有効な「Kubota Smart Infrastructure System(KSIS)」の展開を、2017年4月から開始した。クボタは今後も、最新の技術開発を推進していくことで、世界の水・環境問題の解決に貢献していく考えだ。