GLOBAL INDEX
December 2017

FEATURE
"Precision Farming"

04

クボタの技術が精密農業
を支援する
Marketing in Europe

EU Agricultural Business Unitのメンバーたち
ミカエル・プロヴォスト:右、アンドレアス・ カシュマーチック:中央、フランソワ・ジュリアン:左

クボタの欧州市場戦略の転換
ブランド認知度向上へ

常務執行役員 欧米インプルメント事業部長、クバンランドAS社長、クボタホールディングスヨーロッパB.V.社長
渡辺 大

クボタは先に述べたように、2015年、大型トラクタM7001シリーズをフランスで製造販売することで、欧州畑作市場への本格参入を果たした。欧州マーケットにおけるスマート農業も、M7001シリーズとKVGが供給するインプルメントが一体化することによって市場開拓が進められている。そして、ここへきてクボタは、欧州マーケット開拓を抜本的に転換する新たな戦略を打ち出した。2017年10月、事業の最適運営を目指し、オランダに欧州機械事業統括会社(クボタホールディングスヨーロッパB.V.)を設立したのである。クボタは1974年、フランスにクボタヨーロッパS.A.S.を設立して以来、フランス、ドイツ、イギリス、スペイン各国に農機、建機、エンジンの製造・販売子会社を設立し、欧州機械事業の拡大を図ってきた。今回の試みは、事業運営を従来の国別から事業別へ、欧州マーケット戦略の大きな方向転換を図るものだ。この新会社の代表に着任したのが、クボタの常務執行役員であり欧米インプルメント事業部長、KVGのCEOも兼務する渡辺大だ。

「新会社の設立は、欧州各拠点の組織に横串を通して、効率的かつ実効性のある体制を目指したものです。我々が開拓すべきは欧州の畑作市場ですが、後発であるその市場においてクボタの認知度は低いのが現状です。クボタが得意とするコンパクトなトラクタが活躍する市場では、欧州に広く浸透していますが、畑作市場は大型トラクタが主役。M7001シリーズ拡販による認知度向上を当面のテーマとしています。そのために、ボーダレスな販売ネットワークの再構築による、ブランド力強化に取り組んでいます」

左が自動運転。右が従来の運転。ステアリングを握りつつ、モニターをチェックし、忙しい様子がうかがえる
べーラによる牧草の集草作業から梱包・排出するまでの一連の作業が、運転席のターミナルと車両コントローラの指示によりノンストップで行われる
べーラによる牧草の集草作業から梱包・排出するまでの一連の作業が、運転席のターミナルと車両コントローラの指示によりノンストップで行われる
べーラによる牧草の集草作業から梱包・排出するまでの一連の作業が、運転席のターミナルと車両コントローラの指示によりノンストップで行われる

トラクタ + インプルメントによる
スマート農業を欧州市場に導入

新体制が整備されたことで、スマート農業の展開においても、国別の対応ではなく事業別、すなわちトラクタ+インプルメントという農機からの発想で拡販が進められている。それを担うのが、クボタの欧州各拠点スタッフで横断的に組成された「EU Agricultural BusinessUnit」。メンバーの一人、ミカエル・プロヴォスト(Mickaël Provost)は、農用トラクタの製品導入を担当するプロダクトマネージャーで、自身はフランスに拠点を置くものの、販売戦略の再構築により、欧州マーケット全域に向けたM7001シリーズの拡販を推進する役割を担っている。

「2015年の発売以来、クボタ初の大型トラクタM7001シリーズは順調に売り上げを伸ばしています。M7001シリーズそのものに対するユーザーの声で多いのは、シンプルで使い易く、作業効率に優れているということ。加えて、インプルメントとの相性が良く操作性も高いと評価を受けています」

まずは、このM7001シリーズトラクタ+インプルメントによる、スマート農業の欧州マーケット開拓が始まっている。それは、自動運転のオートステアリング機能はもちろんのこと、二重散布などを防止するセクションコントロール機能、土壌の状態によって肥料などの資材を可変投入できるバリアブルレートコントロール機能などを備えたものだ。これらは、言うまでもなく「ISOBUS」によるトラクタとインプルメントとの間の情報通信によって実現している。

ISOBUS規格のコネクタ。トラクタとインプルメントの情報を繋ぐ要となる

営農のあらゆる課題に応える
「クボタファームソリューション」

「EU Agricultural Business Unit」のマーケティングマネージャーであるアンドレアス・カシュマーチック(AndreasKaczmarczyk)は、クボタの独自性を訴求することが重要だと指摘する。

「畑作市場にせよ精密農業にせよ、欧州マーケットでクボタは後発です。したがって先行するメーカーといかに差別化するかが問われてきます。私たちは『クボタファームソリューション』というトラクタ・インプルメント・アプリケーションとサービスコントラクトまでを含めた一つのパッケージを提案することで、お客様の課題解決に向けた取り組みを進めています。重要なのはお客様のニーズを把握し、お客様が求めているものを提供すること。スマート農業においてお客様が知りたいのは、どれだけのメリットがあるのかという点です。つまりお客様は技術を求めているのではなく、技術が生み出す成果を求めています。スローガンは『Go to Market』。クボタが掲げる現場主義の実践で、お客様のニーズに応えていきたいと考えています」

クボタとKVGの間をつなぐ、スマート農業推進の役割を担うのが、フランソワ・ジュリアン(François Julienne)。かつてKVGに在籍していたことから、トラクタ+インプルメントによるスマート農業に、早い時期から関わってきた。

「精密農業・スマート農業は、コスト削減だけでなく経験や勘に頼らず農作業ができるメリットをもたらし、今後、導入スピードが加速すると思います。各社が開発を競い合う中で、クボタが選ばれるためには、実際のスマート農業の現場において、操作のしやすさやオペレーターの快適性、あるいはプロセス自動化のレベルアップが、重要な要素になってきます。私たちが目指すのは、お客様が求めやすく、使いやすいトータルソリューション。シンプルかつユニークなソリューションを追求していく考えです」