Kubota People

クボタピープル

※掲載内容は取材当時のものです。

祖国バングラデシュに安全な水を。プロジェクトの要という重責を負って。

GLOBAL INDEX December 2018
ハッサン・ジャヒル
Hasan Jahir
(株)クボタ工建 海外部 課長 2012年入社

バングラデシュから日本へ
多くの知見を積んでクボタへ

私はバングラデシュで生まれ育ちました。バングラデシュは、豊かな緑と多くの川や水路を持つ肥沃な土地です。しかし、国土の大部分はデルタ地帯にあり、これまでしばしば河川が氾濫し、多くの被害を及ぼしてきました。祖国に治水で貢献したいと考えたことが土木の道を志したきっかけです。国内の大学に進学しましたが、優れた土木技術を有する日本で土木を学びたいと考え、1989年に来日。2年間日本語を学んで一般入試で日本の大学に入学、土木工学を専攻しました。卒業後、日本の土木関係の企業に6年間勤務。そのとき土質工学に関する研究を学会で発表し、それが米国の大学の教授の目に留まり、米国の大学院に招聘され、2年間研究に取り組みました。その後日本に帰国し、建設会社やコンサルタント会社に勤務。そして知人を介して、クボタ工建が手がけるチッタゴンの上水道整備プロジェクトへの参加を打診されたのです。祖国の水問題解決に貢献できると思い入社を決意、同時にチッタゴンへの赴任が決まりました。2012年のことです。

ベンガル語を駆使した交渉役
信頼関係の構築に力を注ぐ

私に期待されたのは、現地の言葉であるベンガル語を駆使したコミュニケーションであり、それによって工事をスムーズに進行させることでした。したがって、政府要人、発注者であるチッタゴン上下水道公社、地元住民、工事関係者など、現地バングラデシュ人との対外交渉という役割を担いました。たとえば、追加工事や変更工事が発生した場合、その理由と内容を発注者に伝え、予算面も含めて理解と納得を得るなど、粘り強い交渉が求められました。バングラデシュ人の国民性や価値観、文化、あるいはイスラムという宗教も含め、相手を理解しなければならない局面が少なくなく、自分の仕事の重要性、使命と責任を強く感じながら、様々な場面で多くの人と交渉を行ってきました。その過程で感じたのは相手に信頼を得ることの大切さです。「ハッサンが言うなら間違いない」、そう思ってもらえる関係作りを進めてきました。印象深く残っているのは、Ⅱ期工事の入札に向けてメンバーとともに入札書類を作り上げたことです。テクニカル(技術)とファイナンシャル(価格)、双方の側面から徹底して検討し作り込み、自信を持って入札に臨みました。だから受注したときの達成感は大きなものがありましたね。

プロジェクトを通じて祖国に貴重なモノを残せた

これほどの規模のプロジェクトは初めての経験でした。しかも祖国バングラデシュの水インフラを整備することに関わることができ、心から仕事の喜びを実感しています。また安全管理という考えが、バングラデシュの業者に定着しつつあること、このプロジェクトを経験したバングラデシュ人が他の現場で活躍していることなど、製品、技術、ソフト面で祖国に貴重なものを残せたことに、大きなやりがいを実感しています。バングラデシュは国内を広く見渡せば、まだ劣悪な水環境の状況にあるエリアが少なくありません。今後も、機会があれば祖国バングラデシュの水インフラ整備に貢献したいと考えています。同時にクボタグループの一員として、世界のどこへでも出かけていき、水問題解決の一翼を担っていきたいと思っています。