GLOBAL INDEX
December 2015

FEATURE
"French Republic"

06

都市とともに―
クボタの小型建機が
目指すビジョン

ディーラーとのコミュニケーションは欠かさない(左:KE・ベルナード・ドゥエル、右:ディーラーのシルバン・パラリックさん)

中世の面影を残すマレ地区

パリ・マレ地区。サン・ルイ島の北にあるセーヌ河右岸部(パリ3区、4区)。17世紀の美しい建物が並ぶ歴史的地区として名高い。ここは、マルローが国民議会の演説の際に引用したこともある地区で、景観保全のシンボル的存在ともなっている。かつては多くの貴族がこの街に館を建て、17世紀頃はパリで最も繁栄した華やかな街区だったが、時代とともに通りに建物が立ち並び、中世の面影を残すマレ地区は次第に衰退していった。こうした状況にマルローは、マルロー法をもって対処したのである。17世紀の市街地復元のために大規模な工事が行われた。住民が立ち退きを余儀なくされた面もあるが、17世紀の歴史的景観がよみがえったことで、マレ地区は観光地として発展し、現在に至っている。かつての貴族の館はパリ市が買い取り、美術館や博物館として再利用されており、パリで最も優美な地区ともいわれている。

貴重な歴史的景観を保全するために、都市土木には何が求められているのか。フランス・パリでのクボタの取り組みは、小型建機だからこそ景観保全に貢献できるという確信のもと、常にパリの景観と向き合う中で進められてきた。

マレ地区・貴族の館。“マレ”とはフランス語で沼という意味で、13世紀までは沼が広がる農地だった。17世紀初頭、フランス国王アンリ4世がロワイヤル広場(現ヴォージュ広場)を作ると、貴族が競って館を建てるようになり、現在のマレ地区の原形ができた。

パリ市内で活躍するクボタ

クボタのミニバックホーが働く現場を訪れた。パリ16区。ブローニュの森に隣接する、全仏オープンテニスが開催されるローラン・ギャロスの近く、オートゥイユ植物園の側で工事は進められていた。電気、電話、水道、ガスなどのライフラインを共同溝として舗道の地下に埋設する工事現場である。共同溝は、電線などが地中化することで街の美観向上に役立つものとされ、日本でも近年多く見られる。共同溝の埋設は、パリの景観保全に一役買うものともいえるだろう。ミニバックホーを現場に提供したディーラーのBouchard社Sylvan Palaric (シルバン・パラリック)さんに話を聞いた。クボタの小型建機を取り扱って11年になるという。

「以前は別会社の小型建機を扱っていましたが、小型建機はすべてクボタに切り替えました。品質の確かさ、その信頼性に加えてアフターサービスが行き届いている点が、他社にはない魅力だったのです。また、何といっても作業者の高い支持がありました。キャビンは快適で疲れにくく、使い勝手がいいこと。耐久性の高さもクボタ製品の魅力の一つです」

クボタのミニバックホーは、パリの街の景色の中に違和感なく溶け込み、掘削作業を続けていた。

オートゥイユ植物園の景観と一体化して工事は進んでいた
小回りの利点を活かし、共同溝埋設工事に活躍するミニバックホー

求められる環境に優しい建機

マレ地区に限らず、パリは景観保全の考えから古いモニュメント、街並みが残っているところが多い。狭く入り組んだ古い石畳の舗道もパリの街の特徴の一つだ。これらは概して振動に弱く、大型建機は容易に使えない。それが、クボタの小回りの利く、軽量で耐久性の高い小型建機が支持される背景の一つにある。石畳上での作業に際しては、クローラーはゴム製のものを装着させるなど、作業そのものにおいても景観保全を徹底してきた。建設会社を経営しパリを中心とした景観工事に携わる、ユーザーのBenjamin Lanni (ベンジャミン・ラニー)さんはクボタの小型建機を最近3台購入した。

「他社からクボタに切り替えました。一つは、信頼性の高さを示すブランド力です。また操作する者は直感的に分かるのですが、機体のバランスが良く、馬力もパワフル。こちらの要望に迅速に対応しカスタマイズしてくれることも、クボタを選んで良かった点です」

試運転で操作を確認するユーザーのベンジャミン・ラニーさん
ディーラーの出荷場に並ぶミニバックホー
ミニバックホーの受け渡しで、ユーザー(左)、ディーラー(中)、KE(右)の信頼の3ショット

KEで30年にわたり小型建機の営業を担当してきたBernard Dewaele (ベルナード・ドゥエル)に、今後のヨーロッパでの展望を聞いた。

「現在、ヨーロッパでの小型建機のシェアは約30%。トップシェアを維持していますが、追随してくる他社を引き離すことが当面の目標です。また、私たちが提供する小型建機は景観保全に貢献しつつ、より良き街並みを創り出す使命も担っていると考えています。それらを実現するためには、性能のみならず、排ガスや騒音対応をはじめ、一層環境に優しい機能を備えた建機を提供していく必要があります」

提供する小型建機が、環境保全の面からもヨーロッパのスタンダードとなること。それが、クボタが目指している姿だ。ディーラー、ユーザーから多くの支持を集めるクボタの小型建機は、今日もパリの街中で、そしてヨーロッパの各都市で活躍を続けている。

農業大国であり、成熟国家としてのフランス。世界の食料問題解決と、都市景観・環境保全のために、クボタの製品・技術が果たす役割は大きい。そして、市民の意識が高いこの国でクボタが実績を残すことは、フランスのみならず、先進国が目指す「持続可能な社会の姿」を世界に提起することになるだろう。