GLOBAL INDEX
September 2014

FEATURE
"UNITED STATES of AMERICA"

04

KUBOTA
in U.S.A.

Business

モノづくりのグローバル化
北米「5ゲン道場」開設

5ゲンとは、「現場・現物・現実」の3現と、「原理・原則」の2原のことであり、5ゲン主義とはこの3現=「現在のレベル」と2原=「原理・原則に則った理想の姿」の差を明らかにして、問題の本質や原因を正確にとらえる考え方である。モノづくりの現場では、この5ゲン主義に基づき改善活動が実践されており、業務上のムダを見極め、徹底的に省き、生産性を向上させる活動が展開されている。工場内での作業風景を想像していただきたい。組立職場では部品の組み付けやボルトの締め付けをしている瞬間、つまり製品に機能を付加する動作以外はすべてムダであり、生産性を低下させている。また、客先ですぐに必要とされていない製品や作業していない仕掛品もすべてムダである。

こうした5ゲン主義の考え方を実践にまで落とし込み、モノづくり人材の教育プログラムとして展開しているのが「5ゲン道場」である。2002年に大阪・堺製造所で発足したこの道場は、これまでに2,000人を超える社員が受講しているが、2014年に海外拠点で初となる道場がクボタマニュファクチュアリングオブアメリカコーポレーション(KMA)に開設された。

KMAの5ゲン道場ではアメリカ人を師範代(指導者)として、受講者は英語による受講が可能となり、現地の指導者が現地の人材を自律的に育成することができる。KMAの5ゲン道場は5ゲン主義のグローバル展開に向けて堺製造所とならび重要な役割を担う。

ストライクをはじめとする5ゲン道場事務局内で、KMAならではの改善も取り入れながら推進している。

KMAで5ゲン道場事務局を務めるケビン・ストライクはこう語る。「まず5ゲンの基礎を持った人材を増やすこと。今は受講者12名のプログラムを年4回実施しています。みなさん、良い考え方を学ぶ場と感じているし、成果も着実に現れています。今後、教える立場の師範代もどんどん増やしていきたい。そうして北米5ゲン道場を卒業したメンバーと師範代が一緒になって5ゲンの考えを生産現場に取り入れていく。実際、現場に月3つのモデル工程を設定し、改善フォローも実施しています。それでも現場で自主的に改善できるようになるまで、2~3年はかかるでしょう。将来的には、世界中の拠点から、研修生を受け入れていきたい。私たちの目標は、道場を定着させることではありません。長期スパンで5ゲン改善文化を定着させるということです。」

トラクタの“地産地消”へ
KIE新工場(第二工場)を設立

クボタトラクタは、アメリカ経済の発展と製品ラインナップの拡充により、1990年代から急速に販売台数を伸ばしてきた。2005年には累計販売台数100万台を突破した。

クボタインダストリアルイクイップメントコーポレーション(KIE)では、2005年からインプルメント(トラクタ装着用作業機器)の生産を開始。今回、新工場の設立(2013年量産開始)によって、インプルメントやタイヤの装着などの作業とトラクタの生産を1カ所に集中させることで、生産効率が飛躍的に向上した。加えて、現地生産により為替変動によるリスクを軽減するとともに、基幹部品を日本のみならず、タイの生産拠点などから調達する「世界最適調達」を行うことで、コスト競争力も強化した。現在、新工場では一日当たり80~90台のトラクタを生産。品質情報をすべて電子化し、不具合情報をスクリーンで表示するなど、最新のIT技術も導入している。

また、新工場ではクボタ液中膜を搭載した排水処理施設を導入し、廃水の再利用を実施中。工場廃水と生活廃水中の汚染物質を分離し、廃水の65%を塗装工程に再利用、残りの35%は基準を下回る水準に浄化し、下水に流している。さらに、塗装工程には「超純水」が必要な工程もあり、高精度RO(逆浸透膜)も導入し、廃水のリサイクル率向上に貢献している。

新設されたKIE第二工場。製造を販売市場の近くに置くことで、よりタイムリーな対応を実現可能としている。

Environment

最新の排出ガス規制に対応した
ディーゼルエンジンを開発

2011年に認証取得したクボタエンジン「V3800-E4」。排出ガス規制にいち早く、着実に応えられることがクボタの強みである。

環境意識が高い欧米先進諸国だが、中でも「排出ガス」に対する規制はとりわけ厳しいものがある。アメリカでも「第4次排出ガス規制」が順次導入されている。乗用車から農業機械、建設機械に至るまで、環境に配慮した製品でなければこの国の市場では生き残れない。

クボタは、第4次排出ガス規制に先駆けて、アメリカ環境保護庁およびアメリカ・カリフォルニア州大気資源局の「排出ガス規制適合認証(56~130kWクラス)」を、2011年に世界で初めて取得した。これを皮切りに、2012年には56kW以下のクラスでも適合認証を全シリーズで取得したことで、規制がスタートする同年には規制対応を完了している。さらにアメリカで2015年1月から実施される排出ガス最終4次規制対応のエンジンの開発を完了、認証を取得した。

認証取得によって、排出ガス規制対応モデルが順次市場投入されているが、ディーゼルエンジンのOEM販売という面でのビジネスチャンスも拡大している。すでに産業用小型ディーゼルエンジンではトップメーカーのクボタ。環境面でも、リーディングカンパニーであり続ける。

Water

最新型の耐震管「GENEX」がロサンゼルスで活躍

アメリカ西海岸は、地震が多い地方である。カリフォルニア州ロサンゼルス市では、水道管路の耐震性強化が大きな課題であり、永年にわたり対策を検討していた。2013年、当市は日本製の耐震管の試験採用を決定。それが、クボタの水道用耐震形ダクタイル鉄管「GENEX」だった。アメリカで初めて、日本独自の耐震性能を持つ水道管が採用されたのだ。

その経緯には、日本での耐震管の実績がある。耐震管の特長は、「地震が起きても、パイプとパイプの接合部(継手)が伸縮・屈曲し、さらに継手に大きな負荷がかかっても、鎖のように外れることがない」というもの。阪神大震災や東日本大震災などで耐震管の効果が証明され、地盤沈下や地割れでも一切破損しなかった。「GENEX」は最新型で、施工性と外面の腐食性能を向上させた耐震管なのだ。現在、日本国内で新たに布設されるダクタイル鉄管の約90%に耐震管が使用されている。その実績がアメリカでも大きく評価された。

試験施工が行われた地域は、1994年のノースリッジ地震で被害があった地域であり、地滑りも確認されている。その住民の安心・安全を、クボタの製品が地下から支えている。

カリフォルニア州以外でもオレゴン州などで試験導入され始めている。今後も日本の実績をもってアメリカ全土での普及を目指す。

米国300カ所以上の水処理施設で使用される
「クボタ液中膜」

クボタの液中膜。微生物を利用して排水を浄化し、浄化された処理水と浄化に用いた微生物とを分離する。

アメリカでは、老朽化した下水処理場の更新需要の増加、水質改善に向けた栄養塩(窒素、りん)排水規制の強化、水不足に対応するための排水再利用の法制化の整備とともに、経済の好転から住宅着工件数も100万戸/月へと回復するなど、クボタの排水処理事業を取り巻く環境は好転している。

クボタメンブレンU.S.A.(KMU)では、従来の浸漬型膜ユニット単体での販売に加え、クボタ日本で長年培った排水処理エンジニアリング能力を活かしたMBR(膜分離活性汚泥法)システムの設計・販売に挑戦している。クボタ自身でシステムを設計するため、自社膜の性能を十分に発揮した設計が可能となる。KMUの所在地と同じワシントン州内でアメリカ第1号となるクボタMBRシステム採用されるなど、これまでのアメリカでの300件以上の実績に加え、クボタ独自の設計思想によるMBRシステムという点に注目が集まっている。2013年には、オハイオ州カントン市にて、MBRを用いたものとしては北米最大規模の水再生処理施設をアメリカパートナー企業との協業にて受注した。