GLOBAL INDEX
September 2014

FEATURE
"UNITED STATES of AMERICA"

03

Tractors in American Farms
[農業市場への参入と今後の展望]

現在のクボタトラクタは最高135馬力まで展開しており、アメリカの小・中規模農業(果樹栽培や酪農)の現場で広く使用されるようになっている。 その先には、「世界の食糧庫」と呼ばれる、大規模農業が待っている。世界中の大豆、トウモロコシの約3割※がここ、アメリカで生産されているのだ。
世界中の「食糧」を支える、アメリカの本格畑作農業。その未踏の領域への挑戦が、いま始まろうとしている。

※ 出所:農林水産省HP「米国の農林水産業概況」

世界の食料生産拠点アメリカの農業事情

広大な国土を有するアメリカでは、中西部ではとうもろこしや大豆、ノースダコタ州、カンザス州等では小麦、南部では牛肉の生産が盛んと州が属する地域によって、その農業形態も変化している。
このようなアメリカにおける農業事情をデータをもとに見てみよう。

● 主要農産物の生産状況(2012年)

アメリカのとうもろこし、大豆の生産量は世界第1位。同様に、牛肉、鶏肉、牛乳も世界第1位の生産量を誇っている。その内の牛肉、鶏肉は世界全体の生産量の約2割を占めている。

● 農地面積の各国の比較

各国と農地面積を比較すると、アメリカの農地は日本のおよそ88倍、農業が盛んといわれるフランスの14倍の広さを有する。また小麦、とうもろこし、大豆などの大規模農場が多いこともあり、平均経営面積は日本の約75倍、フランスの3倍ほどである。

アメリカ農業へのチャレンジ!

1972年、クボタはカリフォルニア州ロサンゼルスに、販売会社としてクボタトラクターコーポレーション(KTC)を設立、北米展開の礎を築いた。しかし、日本の水田用トラクタが、アメリカの畑作農業にマッチせず、事業スキームの転換を迫られたのは前述の通りである。

1990~2000年代は、高馬力化とラインナップ拡大の歴史であった。60~100馬力超のユーティリティトラクタの開発は、果樹園を始めとする小規模農家への進出を可能とし、ついにクボタは農業市場への参入を果たす。その後、135馬力へと徐々に馬力帯を上げ、干し草市場と呼ばれる酪農分野へ進出。そして本年9月には170馬力までの畑作用トラクタを発表した。これにより、中規模農家までが視野に入ったことになる。

ラインナップ面では、2004年にユーティリティ・ビークル(多目的四輪車)市場に参入。オフロードの移動・運搬も可能なユーティリティ・ビークルは、それまでバギー車しかなかったアメリカ社会において、市場を広げる商品となった。建設機械では、小型建設機械の分野で世界トップシェアを誇っていたものの、運搬用機械のラインナップが薄く、顧客の要望に十分に応えることができていなかった。そこで、2010年に発売開始したコンパクトトラックローダーに加えて、2015年には汎用性に優れたスキッドステアローダーの導入を予定しており、ホイールローダーと併せて小型建機におけるラインナップを拡充している。

ユーティリティ・ビークルや建設機械は、農業シーンでの活用も有望視されている。規模の大きな農家では、運搬や土木作業へのニーズも高く、高馬力帯のトラクタとセットで売れる可能性をもつ。インプルメントでは2011年、ノルウェーのクバンランド社を買収したことにより、干草関連インプルメントの自社製造が可能となった。

「自社製造」といえば、クボタは北米に2つの製造拠点を有している。ジョージア州アトランタにある、クボタマニュファクチュアリングオブアメリカコーポレーション(KMA)とクボタインダストリアルイクイップメントコーポレーション(KIE)だ。KMAでは汎用製品を、KIEではトラクタ及びインプルメントの製造を行っている。KMA・KIE社長・窪田博信は言う。「北米展開をより強固なものにするためには、地産地消が大切。現地で製造し、現地で販売することです。さらに2013年、北米に芝刈り機の開発拠点を作りました。いよいよ開発から製造、販売まで、すべて北米で行える体制が整ったのです。」

高馬力トラクタの開発、ラインナップの拡大、インプルメント戦略、さらに生産体制の強化まで、クボタはこの45年、着実に歩みを進めてきた。現地に根付く企業として、大規模農業へ挑戦していく。

より多くのぶどうを収穫するため、土地を有効活用しているぶどう畑では、せまい間隔でも作業が行えるクボタのトラクタが重宝されている。
アメリカのディーラーはトラクタとともに建設機械を扱うケースが多い。広大な農場の灌漑設備の設置にも建設機械が活躍している。

カリフォルニアワインの生産をKUBOTAが支えている

いまや、フランスワインを凌ぐ人気とも言われるカリフォルニアワイン。フランスに比べてカリフォルニアは気候条件が良く、ぶどうの生育に適しており、糖度の高いぶどうから製造される極上のワインは、カリフォルニアワインのブランドを一躍有名なものにした。

カリフォルニアワインの産地の中でも、最もワイナリー数が多く、名産地として名高いのがナパ・バレーだ。スコット・バウアーさんは、ここで1,370エーカー(約168万坪)のぶどう畑を管理している。「去年はここで8,000トンのぶどうを収穫したよ。1トンでワインが60ガロンつくれるから、一体何本のボトルができたんだろうね? ワハハハハ」と豪快に笑う。スコットさんがクボタのトラクタを導入したのが1987年。今ではナロータイプのトラクタからユーティリティ・ビークルまで、10台以上の機械が、スコットさんの農場で活躍している。「クボタの製品は、信頼性が高いことが特徴だ。つまり、大きな故障がない。1日に12~14時間はトラクタを稼動させているわけだから、シンプルで、故障がないのが一番だ。とはいえ、トラクタは3年に1回は買い替えるもの。まったく、クボタにとっては良いお客さんでしょう? ガハハハハ……。」

ナパ・バレーで活躍するトラクタの2/3はクボタのトラクタと推定される。カリフォルニアワインの生産を、クボタが支えているのだ。サンタローサにあるディーラーGarton Tractor のクレイグさんは言う。「ウチの特徴は、お客さんの6割がビンヤード(ぶどう畑)ということ。あと2割が個人宅で、残りの2割が建設業者。人気の商品は、ナロータイプのトラクタだよね。ぶどう畑は木と木の間が狭いから、このトラクタはまさにピッタリだから。クボタの製品のどこがいいかって? お客さんがクボタを要求してくるんだ。ウチは別の色(=他社)との併売店なんだけど、焦る気持ちでクボタを仕入れたってわけさ。デザインも良い。サンフランシスコジャイアンツと同じカラーリングだから、北カリフォルニアで受けないわけがないよ!」

最適な気候条件で育てられ収穫を待つぶどう。収穫されたぶどうはワイナリーへと運ばれ上質なワインへと生まれ変わる。
ワインにとって良い気候とは、人間にとっても過ごしやすいもの。カリフォルニアで飲むワインはよりおいしく感じる。

Column

質の高い製品とサービスでQuality of Lifeに貢献する

クボタトラクターコーポレーション
社長 吉川正人

アメリカにおけるクボタは、40馬力以下のコンパクトトラクタの市場において、高いシェアがあり、ブランドを確立しているといえますが、今後数年間で、積極的に新しい市場に参入したいと思っています。トラクタでは、2015年、170馬力までの畑作用新型トラクタを投入します。当面のターゲットとするのは、家畜用の干草(ヘイ)をつくることを主体とした中規模農家までの市場です。買収によってグループの仲間入りをしたクバンランド社の干草用インプルメント(ヘイツール)もクボタブランドで展開し、農業市場でのクボタのプレゼンスを高めていきます。

建設機械では、こちらも2015年から、スキッドステアローダー(SSL)の販売を開始します。これによって、ミニエクスカベーター、ホイールローダー、コンパクトトラックローダー(CTL)と合わせ、フルラインが出揃うことになり、販売網の拡大、強化を後押しします。SSLは、畜産を中心とした農業市場でも広く利用されており、先に述べた新型トラクタ+ヘイツールとのシナジーに期待が膨らみます。

芝刈り機でも製品ラインナップを拡充させ、レジデンシャル(家庭向け)だけでなく、コマーシャル(商用向け)市場でも、クボタの良さを知るお客様を増やしたいと思っています。

質の高い製品とサービスで、人々の「クオリティ・オブ・ライフ」に貢献してゆく――クボタの今後の挑戦に、ぜひご期待ください。