高度浄水技術で、水道水も質の時代に
日本最大の淡水湖であり、「近畿※1の水がめ」と呼ばれる琵琶湖では、1960年代後半、富栄養化の進行により植物性プランクトンが異常繁殖し、1980年代には水道水にその代謝物によるカビ臭が発生。また、その琵琶湖を主な水源とする淀川でも、人口増加や高度経済成長にともなう産業発展により、水質が悪化。そして、浄水処理の過程で生成されるトリハロメタンに発がんの可能性があるとして、大きな社会問題になった。当時の水道水は、安全で安心して飲める水とは言い難く、社会が「蛇口から飲める安全でおいしい水」を渇望していた。
大阪市の柴島(くにじま)浄水場はそのような淀川の水を水源とする浄水場の一つであった。その浄水処理方法は、当時一般的だった「急速ろ過システム」というもので、水の濁りの除去には優れた能力を発揮するが、原水に溶け込んでいるカビ臭の除去やトリハロメタンなどの低減は苦手であった。さらに、農薬などの微量有機物による環境ホルモンの存在も明らかになり、大阪市は、トリハロメタン濃度は水質基準以下であったが、市民の飲料水である水道水の安全を早急に実現しなければならなかった。
大阪市水道局とクボタはこの問題を解決すべく、異臭味の除去とトリハロメタンの低減を含む総合的な水道水質の改善に、高度浄水処理実証プラントを導入した。これは、従来の浄水処理システムに、オゾン処理と粒状活性炭処理を付加するというものであった。
オゾンは強い酸化力を持っているため、カビ臭の原因となる有機物質を分解除去でき、水の消毒に効果を発揮する。そして粒状活性炭は、その小さな孔(あな)に有機物質やトリハロメタンの素になる物質などを吸着させ、活性炭表面に付着している微生物に分解させるという仕組みである。
この両処理プロセスを組み合わせることで、カビ臭は完全除去でき、また、従来システムで残存していたトリハロメタンの約60~70%を除去することができた。この取り組みにより、「安心して飲めるおいしい水道水」が実現したのである。しかしそれは、「さらなる挑戦へのスタート」に過ぎず、水道水の質の向上を追求するクボタの取り組みは続いた。