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TECHNOLOGY

200馬力帯の大型クラスで挑むグローバル市場産業の発展と豊かな地球環境づくりを導く「明日の動力」クボタエンジン

2018 . 06 . 28 / Thu

産業の発展と豊かな地球環境づくりを導く「明日の動力」クボタエンジン

文・写真=クボタプレス編集部

ごく当然のように授かっている快適・便利な暮らし。その維持と向上には、代価を伴います。大気汚染や酸性雨は、最たる例といえるでしょう。人間活動を営むために工場や自動車から有害物質を排出し続けた結果と考えられます。早急に対処しなければ、今世紀中に大規模な範囲で生活が脅かされるとの予測もあり、各国のインフラや領土にもたらされる影響は、国家の安全保障に発展し得ると、IPCC [気候変動に関する政府間パネル]は警鐘を鳴らします。
全世界で環境保全意識の高まるなか、排出ガスに関する規制は厳しさを増しています。乗用車や商用車だけでなく、オフロードで使用される建設・産業機械も、最新の環境規制に則したエンジンを搭載することが義務付けられます。100馬力帯以下の小型産業用エンジンメーカーとして長年培った高度な技術力をもつクボタは、国や地域によって異なる環境規制の要求をクリアする製品を開発し続け、グローバル市場を常にリード。昨年、新たに200馬力帯への進出を発表しました。さらに幅広いニーズに対応しながら、理想的なエンジンの未来を創出します。

100馬力帯以下で世界トップシェアの実績に加え、200馬力帯にも進出していきます。

100馬力帯以下で世界トップシェアの実績に加え、200馬力帯にも進出していきます。開発現場は、2020年の市場投入(予定)を控え、大詰めを迎えています。

国内外の産業やインフラの発展、都市生活を支える産業機械の“心臓部”

クボタのエンジン事業は歴史が長く、既に創業の明治、鋳鉄管製造の先進的な技術を活かしてエンジン開発に着手。100年にわたってエンジンを開発・製造し、日本の産業の機械化と発展を支え、時代のニーズに応える製品を生み出してきました。今日、100馬力帯の小型産業用ディーゼルエンジン市場で、世界トップシェアを獲得して躍進中。世界の各国・各地で、クボタエンジンは、クボタ製農業機械や建設機械だけではなく、さまざまな産業機械にも採用され、不可欠な動力源となっています。
都市化が進んだ先進諸国において、排出ガス規制や多様な使用環境に対応できる、高度なエンジンが求められています。特に、ディーゼルエンジンの世界では、近い未来に照準を合わせ、エンジン本体の改良のみならず、排出ガス対応技術にも重点を置いた高レベルな開発競争が展開されています。エンジン開発の最前線・エンジン技術部(クボタ堺臨海工場内)の現場を訪ね、新開発の200馬力帯エンジンの担当エンジニアに聞きました。

■200馬力帯で世界のエンジン市場に挑むエンジニアたち■

渡邊 慧さん

渡邊 慧さん

設計担当(2012年新卒入社)
大学でのエンジン研究と自身の適性を生かしたく、「国内外で社会貢献しているメーカーで、有意義なプロジェクトに携わりたい」とクボタ入社。希望通り、キャリアの初めからエンジン開発に従事。奇しくも同じ専攻で同時期に入社の米虫さんとは現在、息の合うチームメート。

米虫 祐介さん

米虫 祐介さん

研究担当(2012年中途入社)
子どもの頃から「クルマはどうやって動くのだろう?」とエンジンに魅せられて、大学でエンジン工学と環境・排ガス問題を研究。前職は自動車メーカーでエンジン開発担当。経験を評価され、クボタでは入社以来一貫してエンジン開発に携わり、幅広いラインナップを手掛ける。

クボタエンジンの特色(1) 際立つ製品の幅広さ

“クボタエンジンならでは”と評価され、業界で確立した優位性にまず挙げられるのは、幅広い用途を網羅するラインナップ。クボタのエンジンの半分以上は、世界中のOEM先の建設機械や産業機械で広く使われています。豊富な製品バリエーションは、クボタが高い技術力・開発力を駆使して、グローバル市場でユーザーの要望を叶えてきたことを示します。

「クボタの産業用エンジンは、ディーゼルエンジンだけでなく、同じサイズと信頼性を兼ね備えたガソリンエンジンやガスエンジンも開発、お客様の多様なニーズに応えられるラインナップが強みの一つです。ディーゼルについては、スーパーミニ、05シリーズ、03シリーズ、07シリーズ、V3シリーズ、08シリーズがあって、19kW未満から129kW(=175馬力)までをシームレスにカバーしています。そこに、これから紹介する09シリーズ(157.3kW)が加わります。
クボタでディーゼルエンジンの開発現場に配属された時、広範なラインナップに対して開発者が比較的少ないことに、経験上驚きと感銘を覚えました。各シリーズの担当エンジニアが性能から耐久信頼性の担保まで、総合的に携わる体制でトータルバランスに優れた品質の良い製品づくりを行っています」(研究担当 米虫祐介さん)

クボタエンジンの特色(2) ゼロ・エミッションへの挑戦

ラインナップと双璧をなす、もう一つの強みは “究極のクリーンエンジン”を目指した取り組み。さかのぼること20年余り、乗用車向けと同様、産業用ディーゼルエンジンについても排出ガス規制の目が向けられました。1995年に米国カリフォルニア州で、25馬力未満の汎用エンジンにCARB ULG排気ガス規制が施行された経緯から、クボタは実施に先駆け、世界で初めてCARB認証を取得したエンジンメーカーとなりました*1。以来、EPAの定める米連邦排出ガス規制をはじめ、ヨーロッパやアジア諸国、日本国内の環境規制をクリアし、環境負荷を抑えるため、機械・電子制御・解析など各領域の専門家が研究段階から尽力して、機械技術だけでは及ばない難題を突破し続けています。

「ヨーロッパでは、2019年から次期排出ガス規制Stage Vが順次施行されます。当面、全世界で最も厳しいオフロード向け排出ガス規制です。また、クボタには今後、小型エンジンでの経験で培った信頼性を備えた、より大型のエンジンを市場に投入する計画があります。規制の厳格化や大型製品ゆえの課題を解決しなくてはなりません。私たちが手掛けている『V5009(排気量5.0L)』は、100馬力帯以下にとどまらず、次なる目標の“200馬力帯以下でも世界トップシェア”を見据えた製品なのです」(開発担当 渡邊慧さん)

  1. *1.独自のE-TVCS燃焼室(クボタオリジナル燃焼システム)の開発や燃料噴射系部品の改善は、当時「ディーゼルエンジンの発展史・技術史に残る環境対応技術」と評され、ディーゼルエンジン市場に新たな品質基準を拓きました。
コンパクトな形状を維持

2019年より順次施行される排出ガス規制「StageV」では、PM粒子数規制が追加されます。DPF*2と呼ばれる後処理装置の性能を向上させ、これに対応。サイズアップはなく、搭載しやすくコンパクトな形状を維持しています。

  1. *2.Diesel Particulate Filterの略。ディーゼル微粒子捕集フィルター。ディーゼル自動車から排気される粒子物質(PM)を捕集し、大気中に排出しないようにする後処理技術。

200馬力帯でも不変の頑強さとクリーン

Stage Vの要求を満たす新製品V5009は、四気筒でコンパクト性を維持しつつ、単位排気量あたり最大出力を引き出す高馬力と、同じ出力クラスで最高レベルの低燃費性能に加え、設計の柔軟性・メンテナンス性の向上を図った大型産業用ディーゼルエンジンです。開発には試行錯誤を重ねたと見受けられます。以下、挑戦と苦労を語ってもらいました。

――新しい規格への進出に際して、特に工夫したところは?

「大型エンジン市場を的確に理解するところからのスタートでした。海外も含む、農機・建機の主要な展示会などに赴き、お客様のニーズや競合のレベルを調査。また、競合製品のベンチマークも行いました。クボタ・クオリティにふさわしく、市場が望むコンセプトの策定に至るまでが最初の難関でした」(米虫さん)

「新馬力帯では後発メーカーですから、ライバルとの差別化要素が必須です。一から作るとなると、目標の高出力を達成するシミュレーションや競合対策はむろん、しっかりとした強度計算ありきで進めなくてはなりません。今までの小さいエンジンとは、考え方やアプローチに違いがありました。例えば、エンジンの部品強度や安全率。そこを設計にどう落とし込むか、難しい挑戦でした」(渡邊さん)

――従来の規格では確立している、クボタらしい“頑強さ”の追求ですね。

「自分たちのエンジンを本体も部品も改めて見直すべく、強度計算をしました。『性能は上げられても、燃焼・爆発に対する耐久信頼性はどうか』という点が肝心なのです。性能を高めては耐久性試験を繰り返し、強度計算の精度を向上させていきました。クボタ製品の耐久性は、海外のお客様にとても喜ばれているので、そこを下げてしまったら強みが薄れます。新しい分野において、変わる部分と踏襲する部分を認識し、机上だけではなく物にして評価する。そういった積み重ねが重要です」(米虫さん)

――V5009開発のこだわりポイントを教えてください。

「例えば、エンジンのパワーを引き出そうとターボチャージャーをフル稼働させると、出力や燃費は一見良さそうですが、私たちの見解は異なります。『それで長く使える?』『排気温度は高くしないで』『これ以上の排ガスは不具合につながるから』と、厳しい規制内の“規制に障らないところ”まで、きちんと極めます。設定ギリギリの製品を使っていて、すぐに壊れてしまっては大変でしょう。200馬力帯でも、使うお客様に満足いただける品質を考え抜いていきたいと思います」(米虫さん)

クボタ流開発スタイル

性能から耐久信頼性の担保まで各エンジニアが総合的に携わり、トータルバランスに優れた製品を生み出す、クボタ流開発スタイル。

とことん極めるのがクボタ・クオリティ

エンジンの回転数や負荷によって「これ以下は無視しても可」と許容される部分さえも、とことん極めるのがクボタ・クオリティです。

――素人考えでは、規制施行の都度でなく、もっと先を見越したスペックにしてはと思うのですが。

「排出ガス規制が厳しくなるたび、後処理装置やその扱いも複雑になってしまいます。搭載する機械にも影響が大きく、対応デバイスも増えてコスト高になるので、購入のハードルが上がります。その時々と地域の規制に合った製品を提供する方が、お客様にとってメリットがあります」(渡邊さん)

――開発の現況と今後の目安は。

「Stage Vは2019年から順次、ヨーロッパ各国で施行されます。新開発モデルのV5009も、新しい規制に適合する見込みで、現在、量産に向けて排出ガス性能の最終確認を重ねています。各国各地の搭載機器に適したマッチングをこれから行ったうえ、2020年に量産・市場投入の開始を予定しています」(渡邊さん)

クボタは新しいディーゼルエンジンV5009を出展

世界3大国際建設機械関連の見本市といわれる「インターマット2018」が、4月下旬にパリで開催され、クボタは新しいディーゼルエンジンV5009を出展しました。

クボタエンジンの耐久性は、海外のお客様から全幅の信頼を得ています

厳しい規制に敏感なヨーロッパの方から意見や要望をヒアリングしました。クボタエンジンの耐久性は、海外のお客様から全幅の信頼を得ています。

――お二人とも大学時代からエンジンを研究されていたそうですね。最後に、エンジンにかける想いなど、聞かせてください。

「素晴らしい動力源である一方、エンジンは環境問題と切り離せません。ブレイクスルー思考で、大学では排出ガス規制に向けたディーゼルエンジン燃焼技術の研究室に入りました。内燃機関の中で熱効率の高いディーゼルが好きで、最初は自動車業界でエンジニアになりましたが、より活躍のフィールドが多い汎用ディーゼルを手掛けたいと思いました。引き続き、自分の力を発揮しながら社会貢献したいと考えています」(米虫さん)

「子どもの頃によく父が連れていってくれたモーターショーで、『ディーゼルを積んだ車はダイナミックでかっこいい!』と感動したのが、すべてのきっかけです。私も大学で燃焼の研究をしていました。エンジンは、100年以上も昔に発明されたにもかかわらず、現在もその技術は進化を続けています。日々変化するエンジン技術には魅力があり、自身もクボタでその開発に携われていることに、意義を感じています。クボタで産業や社会のニーズ・進化に貢献するやりがいは大きいです」(渡邊さん)

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