GLOBAL INDEX
March 2015

FEATURE
"Myanmar"

06

ミャンマー農家のための
販売ネットワーク

Good Brothersのショールーム店頭には、新品のクボタ製品が所狭しと置かれている

クボタと共に我々はある

マネージャーのアウン・ナイン・ウ氏。「お父さんたちが5人兄弟全員で、会社を立ち上げたのは素晴らしいですね」と言うと、「だからGood Brothersなのです」と笑って答えてくれた

【Good Brothers】

AMDとトラクタステーションを後に、我々はヤンゴンに戻った。タイのSKCの販売代理を行っているディーラー2社を訪問するためだ。ミャンマーでは、国内企業育成のために、外資が直接的に販売することはできない。そのため、現在、ミャンマーにはSKCの認定ディーラーが約10数社ある。

最初に向かったのは、1991年創業の国内最大手Good Brothers(以下、GB)。農家出身の5人兄弟が、農家のために立ち上げた会社だ。現在は、子どもたちが第一線を仕切る。対応してくれたのは、企画・開発部門のマネージャーのアウン・ナイン・ウ氏とブランドマネージャーでクボタの担当であるチョー・ソー氏だ。

「農家のためのGBです」と開口一番語ってくれたのはアウン・ナイン・ウ氏。“農業の機械化の推進”などの企業目標を掲げる一方で、学校への寄付や農家への教養講座も行っている。「故郷を支援するのは当然です」と胸を張る。

GBは、ミャンマー国内に15支店、17のショールーム、2つの工場を抱える。農機に関わるものはすべて取り扱っており、業界No.1といわれる企業だ。クボタ専用のショールームもヤンゴンなど3カ所に持ち、ネーピードーなど2カ所で新設中だ。

チョー・ソー氏に、クボタの販売量を聞いてみると、昨年から今年にかけてトラクタ、コンバイン、ディーゼルエンジンとも好調で、大幅に増えているという。

Good Brothersのブランドマネージャーでクボタ担当のチョー・ソー氏(左)と打ち合わせするミャンマーオフィス所長:松島勇治(右)
Good Brothersのショールーム店頭には、新品のクボタ製品が所狭しと置かれている

【PHAN TEE SHIN】

次に向かった代理店は、PHAN TEE SHIN。クボタの製品がほとんどという代理店で、GB社に次いでクボタ製品を多く取り扱っている。経営者のミャー・ミャー・タン氏に話を伺った。グループ全体で全国5カ所の販売拠点を持つ。

「ここではほとんどのクボタ農機を取り扱っています。一番売れているのはコンバイン。“収穫はクボタで”という合言葉もあるほどです」

ここでのクボタの販売量は、トラクタ、コンバインとも順調に増加しており、中でもコンバインのニーズは昨年よりも大幅に高まっているという。「私の店では、スペアパーツをすぐに供給できるように、在庫管理に気を配っています」と胸を張る一方で「正しい使い方の研修もしてもらえれば、故障はかなり防げると思います」と語り始めた。トラクタはまだ使い慣れていないため、無理な操作をして故障する傾向があるという。日々、農家からの要望を聞いているミャー・ミャー・タン氏ならではの意見をくれた。

ミャンマーの発展に貢献するクボタ

PHAN TEE SHINの経営者
ミャー・ミャー・タン氏

今回、AMDやトラクタステーション、農家、ディーラーを回ってみて、クボタへの期待は並大抵ではないことを実感した。しかし、一方で価格などの課題も指摘された。これに対して、2年前にミャンマーオフィスを立ち上げた所長の松島勇治は語る。

「私は、メンテナンスサービスを充実させ、Work Shopをつくり、スペアパーツをいち早く供給できる体制をつくることが課題だと思っています。お客さまから、クボタは面倒見が良いと満足していただくことが重要です」

確信を持って語る松島は、ミャンマーと関わって約35年と造詣が深い。1981年、商社の社員として、自動車メーカーのプロジェクトでこの地に初めて立った。翌年にはクボタも担当、シンデの鋳物工場や灌漑プロジェクトにも関わった。しかし、転機が訪れる。1988年の軍事クーデターだ。タイに一次退去した松島だったが、松島ならではの逸話がある。

「タイに2年半滞在していたときに、民主化騒動でタイに移り住んできたミャンマーの人々と変わらぬ付き合いをしていました。時には友人として、彼らのサポートを買って出ました」

PHAN TEE SHINの店内に並ぶクボタのスペアパーツ
ヤンゴン国際空港へと続く幹線道路沿いに立つ、クボタの看板

それから十数年後の2011年、縁あって松島はクボタに入社し、再度ミャンマーの地を踏むことになる。

「久しぶりに連絡を取ると、みなタイでの日々を覚えていてくれました。今度は彼らが、私が会いたい人へのアポイント取りや交通の手配を手伝ってくれました。正直これには助かりました」

現在の仕事は、ミャンマーの農業環境のマーケティング調査だ。市場動向や現地ニーズを吸い上げ、クボタ本社やSKCへと情報を送る。中でも、SKCと協力して行うデモンストレーションは重要な仕事だ。ここにも松島の逸話がある。

2012年、トラクタのデモンストレーションが、首都ネーピードーで開かれることとなった。「大臣クラスに出ていただけないか」と政府関係者に依頼したところ、テイン・セイン大統領自らが参加されるという話が舞い込んだ。

「朝6時という早い時間にもかかわらず大統領自ら参加され、ご覧いただいたのです。そして、“小型のコンバインはないか”など、さまざまな質問や相談を受けました」と笑う。大統領が視察したこのニュースは、ミャンマーのTVや新聞のトップで報じられた。ちょうどクボタでは小型コンバインのテスト機を製作しており、満を持して翌年のデモンストレーションで披露、好評を博したという。

ミャンマー農業の今後の展望について、松島に語ってもらった。

「現在のミャンマーのコメは、残念ながら品質が良くない。いくら機械化されても、精米や流通、保管などに課題が残る。ここを改善する必要があります。また、農産品に付加価値を与えること。そのまま輸出するのではなく、コメであれば加工してあられや餅にして輸出する。そうすれば、もっとコメも高く売れます」

クボタの技術とネットワークを使えば、もっといろいろな可能性があるのではないか。松島はミャンマーとクボタの未来を構想する。

“アジアのラストフロンティア”ミャンマーは、まだ動き始めたばかりだ。発展は遅れたが、経済用語にレイトカマー・アドバンテージという言葉がある。遅れてきたものに、優位性があるということだ。発展のためには、産業、生活、環境の分野において、インフラの整備が不可欠だ。クボタの「食料・水・環境」のすべての技術が、いま求められている。