GLOBAL INDEX
March 2015

FEATURE
"Myanmar"

04

ミャンマーの
水・環境を改善する

ヤンゴンはデルタ地帯にあり、豊かな水が交通や生活を支える

ヤンゴン市の“水”の基礎データ(2011年)

人口 514万人
上水道普及率 39%
給水人口 193万人
無収水(NRW)率 66%
漏水率 50%
下水接続率 4.2%
*マスタープランでは、2040年(人口852万人)までに、上水道普及率:80%、給水人口:681万人、無収水(NRW)率:15%、漏水率:10%とする目標。下水接続率は未定。 (以上、JICA資料より)

トータルに貢献するクボタの戦略

クボタの水・環境事業の強みは、生活用水や工業用水の浄水処理から排水処理まで幅広くソリューションを提案できることにある。クボタは、ミャンマーの生活用水にはどのようなアプローチを行っているのだろうか。実情を探るべく、旧都ヤンゴンに戻った。

まず、ミャンマーの上下水道の現状を記す。JICAや外務省の資料によると、ヤンゴン市の上水道システムの歴史は古く、1842年に整備が始まり、現在では4つの貯水池と多数の井戸を水源にしている。ヤンゴン市の上下水道を所掌しているヤンゴン市開発委員会(YCDC)の調べでは、上水の供給を受けている人口はヤンゴン市全体の約39%とのことだ。さらに、水源の約9割を占める表流水(貯水池)のうち、2/3が浄水処理をしないまま直接給水されており、上水の供給量、質ともに十分ではない。

同様に、下水の整備も進んでおらず、YCDCによると、ヤンゴンの接続率は4.2%にとどまっている。1888年に旧市街地を対象に整備が始まり、2004年には下水処理場が建設されたが、下水処理は一部の中心商業地域のみで、トイレ排水を収集するシステムが整備されているだけである。雑排水や他の地域の下水は未処理のまま雨水排水路に排出され、生活環境を悪化させている。JICAでは、円借款を利用したマスタープランを作成し、上下水道の整備を検討しているが、時間がかかる見込みである

このような状況に対し、水・環境技術のノウハウを持つクボタは、新たな発想で提案を開始している。ミャンマーオフィス副所長の鈴木剛はその戦略を語る。

「日本と同じで、ミャンマーでも上下水道は自治体が担当しています。しかし、大きなプラントや上下水道、パイプラインを整備するには、予算も膨大にかかるため、まだまだ時間がかかると思われます。そこでクボタは、集中型ではなく、“分散型”のコンセプトで営業活動を開始しています」

クボタでは、ビルや工場オーナー、病院、ホテル、コンドミニアム、レストランなどをターゲットに、浄水装置や浄化槽の提案を行っている。人が多く集まるポイントごとに分散型の水処理装置を設置し、点から線へ展開していく戦略だ。

産業から生活まで、クボタの水・環境技術はミャンマーに対し、トータル・ソリューションで行っていく。我々は、クボタの水・環境技術を確認するため、水に関する技術が一堂に会する総合展示会 “MYANWATER”の会場へと向かった。

浄化槽の前で(左:ミャンマーオフィス副所長・鈴木 剛、右:水処理海外部・横山 渉)

クボタの技術が集約された小さなプラント

MYANWATER会場は活気にあふれていた。クボタブースを訪れまず目に付いたのが、浄水装置。クボタが開発中のセラミック膜と逆浸透膜(RO膜)の組み合わせにより、RO水という、純度の高い水をつくる装置だ。従来のRO膜を用いた浄水装置は、頻繁に交換を必要とする使い捨ての有機フィルターとの組み合わせが一般的であった。しかし、洗浄して繰り返し使用することができるセラミック膜を使うことでランニングコストを抑え、環境にも優しい浄水装置が誕生した。ミャンマーの場合、硬水が多く、かつ塩分や鉄分が多く含まれているため、飲み水のみならず、工場用水としてもそのままでは使えないことが多い。しかし、この浄水装置があれば、ミャンマーの水・環境に対応して、生活水準の向上や産業の振興に貢献することができる。

クボタは、この浄水装置のテスト機を現地のボトル水メーカーに設置している。そのボトル水を味わってみたが、全く臭みがない。日本で買うミネラルウォーター以上に軟らかく、飲みやすい。

「普段井戸水を飲んでいるという郊外に住む人々に飲んでもらったのですが、初めは“味がない”と怪訝な顔をしていました。でも、半年も経つと“この水がうまい”と好んで飲み始めたのには驚きました」と語る鈴木。

「人は、一度良いものに接すると、その水準を下げられない。今後のミャンマーは確実にGDPの向上が見込まれます。クボタの浄水装置はミャンマーの人々に広く受け入れられていくと思います」

今後は、2014年12月から開始した試験販売を通じて、ミャンマーのニーズをより深く探究していくという。

次に、浄化槽。トイレの排水、家庭排水をきれいにする装置だ。「KZ-5」とネーミングされた浄化槽は、日本でつくられたものをそのままミャンマーへ持ち込み、現地代理店を通じて販売されている。タンクに入った下水をフィルターで分離させ、空気が嫌いな微生物を用いた嫌気処理と、空気を好む微生物を使った好気処理を行い、これらを循環させながらきれいな排水にして放流する仕組みだ。コンパクトながら、大型下水処理場と同等レベルの処理水質を得ることができる。まさに、クボタの技術が集約された小さなプラントだ。

最新鋭の浄水装置に関心が高まる
クボタの浄水装置で作られたボトル水が配られていた
クボタブースにはYCDCの幹部も見学に訪れた

浄化槽を担当する水処理海外部の横山渉は言う。

「2年半前から販売を始め、家庭用では累計100件以上の販売実績を積んでいます。環境規制や補助金などの購入支援策があれば、もっと売れるのですが…」と意欲を見せる。

今後ミャンマーが経済成長していくうえで、上下水道の整備は避けて通れない課題である。また、水質の問題は国連のミレニアム開発目標(国連が課題解決する中期目標)にある幼児の死亡率とも関係している。JICAの資料でミャンマーの幼児死亡率は、1,000人当たり48人と東南アジアの中で最も悪い数字を示す。水環境の改善は喫緊の課題だ。

東南アジアの中でも、大きく経済発展が遅れたと言われるミャンマー。実際にこの地を訪れた者は、温和で素朴な人々に触れ、一つの願いを抱くようになる。

「私は日本からビジネスをするために来ています。でも、今ここにいると、ミャンマーの人々の暮らしが快適になって欲しいという気持ちが強くなります。ミャンマーの環境改善に寄与し、これが同時にビジネスに繋がれば、本当にうれしいです」と語る横山。大きくうなずきながら、ミャンマーに赴任してもうすぐ2年になる鈴木も続ける。

「ミャンマーは今バブルを迎えています。しかし、それは一部の富裕層だけで一般市民はあまり恩恵を受けていないように思えます。私は、ミャンマーが大好きです。正直で嘘をつかない、善い人が多い。そういう人たちに、もっと豊かな生活をして欲しいと思っています。本当にミャンマーが良くなることを信じて、この仕事を続けています」

ミャンマーの水・環境の発展に貢献するということは、一般市民の命と生活を根底から支えることそのものだ。彼らの言葉から、クボタだからこそできる、事業を通じた社会貢献の姿が感じられた。

Column

MYANWATER展示会とは?

「水」技術の総合展示会。2013年11月に1回目が開催され、今回で2回目を迎える。主催はマレーシアのイベント会社。来場者は、ビルや工場、ホテルなどのオーナーから行政関係者まで幅広い。ヤンゴン市開発委員会(YCDC)の担当者の姿も多数見つけることができた。2014年は併設展として、MYANBUILD(建材、建築関係の展示会)、MYANENERGY(電力機器、太陽光など代替エネルギーの展示会)が開催され、インフラ関係者の来場でにぎわった。
2012年以降、ミャンマーではこのような展示会が数々開催されており、ここからも経済成長の躍動が感じられる。