GLOBAL INDEX
March 2015

FEATURE
"Myanmar"

03

JAPAN MODELを
つくれ

急ピッチで工事が進む浄水場

パイオニアとしての奮闘

五洋建設(株) ミャンマー事務所長
平井丈彦 氏

次に、造成工事を請け負う五洋建設ミャンマー事務所長の平井丈彦氏に話を伺った。ティラワSEZの先行開発地域(ゾーンA :約400ha)の一期工事約210haの開発を迅速に進める。

一番苦労したのが雨期だったという。5月から10月ごろまで大量の雨が降るこの地区の土地は粘土質で、水を含むと手に負えなくなる。乾期の間に何としても大規模な土工事を終わらせなくてはならなかったと平井氏は語る。

「かなりの数の重機類を入れて敢行しました」

その努力が実り、5月の上旬には土工事を完了した。半年前に視察に来た方たちは「そこら中が野原で、牛が歩いていたのに」と一様に驚いたという。一変した景色を見て、土地の購入を決めた企業もあったと当時を振り返る。

そして雨期に入ると、生命線である工事用道路に大量の砂利を搬入して、整備しながら工事を進めた。

「雨の合間をぬっての仕事だったので、生産性が落ちないように施工作業員に加え、雨により溜まった水を除く作業員や仮設道路の維持補修要員も動員して工事を進めました」

その数、実に800人もの作業員が投入された日もあった。

工業団地は平均標高6.5mの高台が選定されている。これは、2008年5月にヤンゴンを襲い多くの犠牲者を出したサイクロン“ナルギス”の災害データを基に設計されている。

「当時は、この地区も5.5mまで冠水しました。それに対処するため6.5mの高台を選定しました。さらに最終的には、先行開発エリアの外周を7mの堤防で囲みます。これでナルギス級のサイクロンが来ても工場が浸水することはありません」

建屋ができあがった中継ポンプ場。これからポンプ設備が投入される
掲示されている安全標語の旗

ここでクボタは、取水・給水設備、浄水場設備、下水処理設備を担当し、ダクタイル鉄管、ポンプ、バルブ、膜などの製品を使用する。約3.5km離れたところにあるザマニ貯水池から、ダクタイル鉄管を道路沿いに敷設して工場内の浄水場に引水し、各工場に配水する。下水処理は、各工場から出る汚水を下水処理場に集め、浄化して調整池に排水する。今、まさに給水設備や下水処理設備の設置工事が進められていた。

平井氏に、なぜクボタを選定したのかを聞いてみた。

「こちらの要求を聞きながら、スペックを提案してくれたからです。本気でこのプロジェクトを手掛けようという意気込みを感じました」

五洋建設は、過去数々の海外プロジェクトを手掛けてきた。しかし、大手の後塵を拝し、苦い思いをしたこともあったという。

「当社にとっては、ミャンマーが民政化してから初の工事だったのです。ですから、是が非でも受注したかった。今は、先行して入り込むということの重要性を感じています」

しかし、実際工事に入ってみると、必要な原材料や技術が思った以上に不足していた。工事に必要なさまざまな資機材が十分でなく、海外から輸入しなくてはならない状況だった。

「それでも、このプロジェクトは国の後押しが違うと実感しています」と意気込む。

現在、一期工事を進める一方で、新たに進出してくる工場の建設案件も発生し始めている。

「ティラワ工業団地の評判は非常に良く、工場建設を望む企業が増えています。建築、設備、設計の職員をそろえて、案件に対応する計画を進めているところです」と嬉しい悲鳴を上げる。

最後に、ミャンマーで工事を進めるうえで、重視している点を訊ねてみた。

「徹底しているのは、安全管理です。ヘルメットの着用はもちろん、安全、品質に厳格な日本のスタンダードな習慣を根付かせていかなければならないと思っています」

ミャンマーが日本に求めていることは、労働環境づくりでもある。このことを物語るように、至る所に安全標語が掲示されていた。

水・環境技術活用のモデルをつくる

水処理海外部 東南アジア地域
営業担当課長
大森 寛

クボタのプロジェクトを担当するのが、水処理海外部で営業を担う大森寛だ。大森は兼ねてから工業団地の事業に注力したいという気持ちがあったという。

「日本では工事案件ごとに管轄する行政が違い、ポンプ、パイプ、水処理と、営業の窓口もバラバラになりやすい。しかし、工業団地は“一つの街”をつくるようなものです。しかも発注者は一人。製品が充実しているクボタの魅力を出せるだろうという考えがありました」

ティラワ工業団地も当初は浄水、下水処理の引合いだけだった。しかし、ヒアリングしていくなかで鉄管やポンプの話も浮上、逆提案によりトータルで受注できるようになったという。

「お客さまにとっては、窓口が一つの方がやりやすいというメリットになります。また、扱う範囲が大きい方が、私たちも調整が利きやすい」

お客さまの要望を一緒になって考え、解決策を見出していく。例えば、今回のプロジェクトでは、浄水、下水処理の日常の電気代を極力抑えたいという要望が強かった。そこで大森はある提案を行った。

「水の汚れを落とす技術は、薬品で汚濁成分を大きくして沈みやすくし、沈殿させる方式が一般的ですが、今回のこの凝集操作に機械式かく拌ではなく上下迂流方式という、水流を使う方式を採用しています。また、最も電力を要する微生物への酸素供給には、クボタの高効率な散気装置を採用することで電気代を大幅に節約することができました」

常にオーダーメイドで考える大森のこのスタイルには、過去の経験が活きている。大森は長年、廃棄物処理の営業を担当した。この分野はすべてがオーダーメイドであり、「機械を売るのではなく、性能を売る」といわれるほど、プラントメーカー側が設計したものを提案する営業スタイルが主流だ。その後、大森は排水処理で使う液中膜の部署に異動となり、海外営業でマーケットへの視野を広めた。そして、それはティラワへと繋がっていくことになる。

「益本康男社長(当時)が“水処理はオールクボタとして連携してやるべきだ”と強く申していました。中でも “ティラワはまさしくそのモデルになる”と。私がこのプロジェクトを任されたのはそんなときでした」

ティラワ工業団地の取水源となるザマニ貯水池。豊富な水量をほこる

現在クボタは、取水・給水設備、浄水場、下水処理設備などの建設を進めているが、大森はMJTD内に入居する企業に対して廃棄物処理施設の提案も行っている。工場内で排出されたゴミを埋立処理する施設だ。

「企業が進出しやすくするためには、すべてのインフラが整っていないといけない。電気は途切れない、水は綺麗にしてくれる、ゴミも処分してくれる。すべてのニーズに対応する工業団地にしていきたい。そして、最初は日本人がつくるが、次のステージはミャンマーのローカルスタッフができるように受け継ぎ、継続的なビジネスにすることができたら嬉しいですね」

水・環境がパッケージ化された理想的な工業団地にするため、大森は一歩先の姿を見据える。

最後に、今回のプロジェクトに関わった今の気持ちを聞いてみた。

「現場のことは私が一番詳しい訳ですから、責任感と同時に、俺がやらずに誰ができるのかという気概も持つようになりましたね。また、現場で議論してきたことは信頼に繋がり、強い想いというのは相手に通じるのだと実感しています」

ティラワ工業団地に関わるTEAM JAPANの人たちに共通することは、一人ひとりが勝負を懸けていることだ。すべてはミャンマーのために、そして日本ブランドの品質を証明するために現場で必死に闘っている。現場全員の想いが結実して、ティラワ工業団地はミャンマーに姿を現す。「これがJAPAN MODELだ」と。