GLOBAL INDEX 2013 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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なのか。農業・協同組合省農業経済局を訪ね、局長のアピチャート・ジョンサグン氏に話を聞いた。「タイの農業で常に問題となるのは、旱かん魃ばつや洪水など自然環境の影響が大きく農家収入が安定しないことです。そのため負債を抱えている農家が多く、その返済のため耕作地を手放す農家も少なくありません。政府としてはLand Bank(土地の銀行)の設立により、国が土地を買い取って農家に廉価で貸し出すなどの取り組みを進めています」(アピチャート氏)アピチャート氏は農業の人材不足も大きな課題と指摘する。「奨学金を適用し、新しい世代が農業の現場で技術を学び、次世代の農業者を育成する取り組みを進めていますが、若者は都市に流れ農業人口が減ってきているのは事実です。そのため農業の機械化は必要不可欠だと考えています。今後、農機を政府が買い取り、農家に廉価で提供するような仕組みも考えていきたいと思っています」(同)また、タイの農業政策の特徴は、生産者保護の色合いが強いことだ。それを端的に示すのが、現政権が進めている「担保融資制度」である。これは事実上のコメ買い取り制度であり、国が市場価格よりも高値で農家からコメを購入するものだが、コメの輸出競争力(価格競争力)にも影響したのか、2012年には、30年にわたって守ってきたコメ輸出世界No.1の座を譲る形となった(※8)。タイ農業は今、転換点を迎えているのだろうか。「農業はタイの経済の基礎です。農業あっての工業であり、農業は守らねばなりません。だから、農業者が幸せを感じる暮らしを実現することは政府の重要なミッションなのです」とアピチャート氏は言う。タイ政府は、農業は産業である以前に国の重要な資産であり、それを担う農家は守られるべきだという明確な意思を持つ。これはタイ農業を理解する上で、重要な視点となった。25農林水産省ホームページより。データは2009年FAOSTATデータ、農林水産省ホームページより外務省ホームページより。データは2011年タイ・国立統計局「Report of the Labor Force Survey, Whole Kingdom」より。データは2012年農林水産省ホームページ「食料自給率の部屋」より。データは2009年タイ・コメ輸出業者協会発表の2012年数値。一位はインド、二位はベトナムとなった※3…※4…※5…※6…※7…※8…タイ農業・協同組合省 農業経済局長 アピチャート・ジョンサグン氏農家に普及している歩行型耕うん機。多数の耕うん機を所有する農家も少なくないトラクタで耕作が進む。タイ中部地区の粘土質で重い土壌にはトラクタは必需品だ(アユタヤ県)タイの労働力人口に占める農業就業者(農林水産業)の比率推移出所:タイ・国立統計局「Report of the Labor Force Survey, Whole Kingdom」※各数値は第三四半期(農繁期:7~9月期)の数値を示す200120022003200420052006200720082009201020112012(年)555045403530(%)2000

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