GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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黄金色に輝く鉄コーティング栽培米の稲刈り風景(宮城県亘理郡山元町)11 毎年3月は、東北地方の稲作農家にとって、米作りの始まりである種籾選びをする月である。よい種籾を選ぶことは、高品質な米を育て収穫するための重要なポイントだ。4月になると苗作りが始まり、多くの農家は「育苗ハウス」という温室で苗を育てる。2011年の3月も、東北地方の多くの稲作農家は例年通り種籾選びに着手していた。秋の収穫を見据え、豊作を祈りつつ……。 その矢先、巨大地震と津波が襲った。津波によって農地は流失・冠水し、圃ほ場基盤や排水機場などの用排水設備は損壊、津波によって運ばれたヘドロやガレキは広範囲にわたって農地に堆積した。地震後、各地で20〜80cmの地盤沈下も起きた。多くの稲作農家は米作りを諦めざるを得ない状況に陥ったのである。しかし、津波被害を受けず、用排水路の設備等の損壊を免れたエリアであれば米作りの可能性が残されていた。問題は、圃場や農業設備は無事でも、種籾及び育苗施設が津波被害を受けていたことだ。稲の苗を育てられなければ、米作りはできない。 そうした中、クボタが提案したのが、苗作りを必要としない「鉄コーティング籾による直播農法(以下、略称:鉄コ)」である。「鉄コ」は数年前から、クボタが全国的に普及拡大を図っている新しい稲作技術だ。その名が示すように、鉄粉でコーティングした種籾を水田に直接播く(直播)という栽培方法である。 この農法が革新的なのは、移植栽培に必要な育苗、苗運搬の必要がないため、コストや労力を大幅に削減できることにある。現在、日本の農業就業者の60%が65歳以上となり、経営・農地の流動化が加速し経営面積5ha以上が増大、小規模・高齢農家と大規模農家の二極化が顕著となっている(※5)。小規模・高齢農家では育苗・田植作業が重労働として大きな負荷となる一方、大規模農家でも育苗労力、育苗施設確保が限界に達しつつある。規模の大小を問わず、育苗は農家にとって大きな課題だった。「鉄コ」は、移植栽培に比べて約77%の労力を軽減、同約36%のコスト低減を実現する(※6)。また鉄粉でコーティングすることで鳥害を抑制する効果もある。「鉄コ」は、日本の稲作経営が抱える課題解決にも一石を投じる技術といえる。 国内産地間の競争は激化の一途を辿り、生産者が競争に打ち勝つためには、省力化、軽労化、低コスト化を実現するのが喫緊の課題となっている。クボタはこうした課題に対して、明快な解を提供する技術として「鉄コ」の普及拡大を積極的に推進してきた。そんな中で起きたのが東日本大震災だった。甚大な被害と顕在化した課題「鉄コ」という課題解決の一石※5:※6:農林水産省2010年「農林業センサス」よりクボタ調査等による

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