GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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4243Profile山本良一 国際グリーン購入ネットワーク(IGPN)会長 東京大学名誉教授 国際グリーン購入ネットワーク(IGPN)会長。東京大学名誉教授。元東京大学生産技術研究所教授。東京大学工学部冶金学科卒業。工学博士。専門は材料工学、持続可能製品開発論、エコデザイン。文部科学省科学官(2004~2007)、エコマテリアル研究会名誉会長、LCA日本フォーラム会長、環境経営学会会長、環境効率フォーラム会長、「エコプロダクツ」展示会実行委員長など多くの要職を兼務。著書に『地球を救うエコマテリアル革命』『戦略環境経営デザイン』『サステナブル・カンパニー』『温暖化地獄』『残された時間』などのほか、『1秒の世界』『世界を変えるお金の使い方』『気候変動+2℃』などの責任編集を担当。2009年7月にイタリアのラクイラで開催された主要国首脳会議(G8)は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃以下に抑えることで合意した。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は従来、氷河期―間氷期のサイクルの中で180~300ppm(ppmは主に濃度を表す単位。1ppmが0.0001%、10,000ppmが1%となる)の間で周期的に変化してきたが、人類活動が原因で今や380ppmに達している。地球の気候システムは、CO2濃度に敏感といわれ、近年の研究によれば、450ppmに達した時、すなわち工業化前と比較して地球の平均気温の上昇が2℃に達した時に、危機的な気候変動が発生すると考えられている。 (注1)気候ターゲット2℃ がありましたが、その長く過酷な時間の中を生命は生き抜いてきたのです。それを地球温暖化によって、わずか100~200年という短い時間で絶滅させることがあってはなりません。そのために大切なことの第一は、地球を、生命を守り抜くという強い想いを持つことです。そして第二に大切なのは、現在、地球は恐るべき危機に直面しているということを、強く認識することです。 2009年、世界は産業革命前と比較して地球表面温度の上昇幅を「+2℃」に抑制すること(気候ターゲット2℃)で合意しました(注1)。気候科学によれば、+2℃を67%の確率で守るために許される今後排出可能な温室ガスの総量は7,500億t(CO2換算)。69億人の世界人口で割れば一人当たり108tとなります。日本人一人当たりの年間排出量を約10tとすると約11年間で使いきってしまい、それ以降は化石燃料ゼロで暮らすということになります。このように、2℃ターゲットを守るための環境エネルギー革命は“徹底的”なものにならざるを得ないのです。時間は残されていません。“地球温暖化”による破局の予兆はすでに現れています。グリーンランドの巨大棚氷の崩壊、北極海氷の減少、オーストラリアの大洪水、ロシアの熱波、日本の猛暑や豪雪も含め、数多くの異変が世界中から報告されています。そして、これらの問題は食料問題や水問題に直結するものです。異常気象による収穫不良がもたらす食料不足は、世界的な人口増と相まって、食料争奪の紛争を引き起こしかねません。日本ではほとんど知られていませんが、地球の平均気温が4℃上昇した時に農業はどうあるべきかをテーマとする国際会議もスタートしています。また、世界各地で度重なる干ばつや洪水は、世界の水資源の需給バランスを著しく崩す可能性があります。食料同様に、限りある水資源を巡る争いが起こることも懸念されます。こうした課題解決の前提となるのが地球温暖化対策であり、緊急かつ徹底的な取り組みが、今こそ必要とされています。
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