GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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3839ハウスモデル住宅のオープン、バイオマス(豊富な森林資源や生ごみ、建築廃木材等による有機性資源)の利活用など、多様な取り組みを見せている。一方で、下水汚泥焼却炉自体の課題も少なくないが、それは浜松市のみに帰するものではなく、全国の下水汚泥処理施設が抱える課題でもある。その一つがリサイクルの問題だ。下水汚泥焼却で発生した焼却灰は、セメントなどの建設資材としてリサイクルされており、そのリサイクル率は約77%(2007年度全国平均)に達している。しかし、最も多くリサイクルされているセメントなどの原材料としての供給は、需要が景気の動向と連動するためセメント会社が常に引き受けてくれるとは限らず、恒久的なリサイクルとしては懸念がある。コンクリートの骨材やレンガなどの製品化は、コストが高く、需要の安定確保に至っていない。今後は、コンポスト(堆肥)としての緑農地利用など、リサイクルの多様化・分散化を図っていくことが必要となる。 また下水汚泥焼却炉を含む下水処理施設を、都市活動から発生するエネルギーの収集拠点と捉え、資源・エネルギー供給源として機能させようとする取り組みも徐々にではあるが始まっている。下水汚泥はメタン発酵によってバイオガス(生物由来のエネルギー資源)を生成、それを燃料としたガス発電への期待が高い(現在、東京都、横浜市など全国20以上の処理場で実施されている)。脱水汚泥を乾燥後、炭化して固形物にしたものを、火力発電所などで石炭代替燃料として利用する動きも進められている。その他にも、下水そのものが発する熱の利用、下水道を活用した小水力発電、下水処理施設の広大な空間を活かした太陽光発電、風力発電など、下水処理施設は、再生可能エネルギーの供給拠点として捉え直すことで、地球温暖化防止、そして循環型の低炭素社会の実現に貢献する大きなポテンシャルを秘めているのである。 浜松市においても「いつでもアクションを起こせるように準備を進めている」(前出・那須氏)状況だ。汚水の浄化を目的とした下水処理施設は、高まる時代の要請の中で、CO2排出量の削減が求められた。浜松市の「循環流動焼却炉」「燃料転換」によるCO2削減はその成功例である。そして今後、浜松市をはじめとする地方自治体では、さらに視野を拡げながら下水道施設全体を見直すことで、新しいアプローチによる地球温暖化防止の実践が進められていくだろう。 浜松市中心部から遠州灘を望む
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