GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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3435 そうした考えの下、浜松市が着目したのが市管轄施設の中で最もCO2の排出量が多い中部浄化センター(2005年度で市の施設全体の9.2%・9,356t/年)の下水汚泥焼却炉だった。下水処理場において、下水は水と汚泥に分けられ、汚泥は濃縮・脱水の処理過程を経て、下水汚泥焼却炉で焼却される。浜松市の施設に限らず、下水処理はその過程において多くのCO2を排出している。その排出量は、下水道の普及に伴い1990年から2006年の間に約54%増加しており、下水処理に伴うCO2削減は国の政策課題の一つだ。京都議定書目標達成計画においても、下水道における省エネ・新エネ対策の推進によるCO2をはじめとした温室効果ガス削減が盛り込まれた。 今回の浜松市の下水汚泥焼却炉におけるCO2削減の取り組みの布石は、2005年にクボタから導入した「循環流動焼却炉」(以下「循環流動炉」と表記)にある。2000年初頭、下水汚泥焼却炉を手掛ける業界では新しい潮流が起こっていた。従来の焼却炉(以下「従来炉」と表記)から進化した循環流動炉の開発・導入を進めていたのだ。 その背景は下水汚泥の質の変化にある。まず近年の雨水排水と生活排水の分流処理等によって、流入源からの有機物の比率が高まり“高カロリー化”した。また脱水処理に使用されている脱水助剤が石灰から高分子系凝集剤へ変わり、脱水汚泥が高カロリー化する傾向にあった。そんな汚泥をより早く、少ないエネルギーで、CO2の発生量を抑えながら燃焼させられる炉が求められたのだ。 循環流動炉は、高温で循環流動している砂を熱媒体として汚泥を瞬時に分散乾燥し焼却する。その特長は、高効率・省エネ・コンパクト化にある。従来炉に比べて燃焼効率が高く燃焼負荷(燃焼室内の発生熱量)を大きく取れるため、炉のサイズをコンパクト化できる。また、砂の循環に必要な空気動力が小さいため、流動動力を大幅に低減。燃焼炉排ガスから高温の燃焼空気を回収するなど低燃費も実現する。 当時、浜松市の汚泥焼却炉は更新時期を迎え、汚泥の高カロリー化への対応が求められており、循環流動炉の導入が考えられた。ただ循環流動炉の採用には疑問視する向きがあったのも事実だ。まだ全国的にみても導入している自治体の数は少なく、安定稼働するかどうか、リスクが大きいと感じられたのである。 05,00010,00015,00020,00025,000その他施設商工施設医療施設社会福祉施設農業水産施設体育施設公民館施設生涯学習施設学校施設消防施設清掃施設上下水道施設行政施設(千Kg)4,53221,00016,18610,81710,7122,2954,5325,8674,7833,1336,5581,48110,071中部浄化センター9,356浜松市の建物等におけるエネルギー使用を原因とする二酸化炭素の年間排出量(部門別/2005年度)出所:浜松市役所地球温暖化防止実行計画(第2期計画) 循環流動焼却炉が導入された2号焼却炉(外観)
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