GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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3031 我々は、寒風の中、合肥市の水質汚染の象徴ともいえる“巣湖”に向かった。巣湖は安徽省中部の合肥市、巣湖市、六安市の三市にまたがる長江系の淡水湖で、面積は778㎢(日本の琵琶湖の約1.2倍)、中国の淡水湖でも5番目の広さを持つ。湖の周囲には約500万人が住み、灌漑、飲用、漁業、水運などに利用されている。周辺地域は“魚米の郷”として古くから巣湖の恵みを受けてきた。夏季には観光地としてにぎわいをみせる。湖の畔には海産物店や民宿が軒を並べ、日本のひなびた漁師町といった趣があり、湖で獲れた魚を売る小さな市も立っていた。冬空の曇天の下で見る巣湖は一見すれば茫洋と広がる湖にすぎないが、毎年4月~9月は、6月をピークにアオコが大量発生し、湖面は毒々しい緑色に染められるという(近年は国策による湖沼浄化施策や都市部の下水処理場の整備などで、アオコの発生は減少傾向にある)。アオコ発生の主要因は、農村由来の汚染源による富栄養化によるものだ。生活排水や畜産系・食品加工系排水、大量の生活ごみ、農薬や化学肥料など様々な汚染源からの流出物は、周辺の河川を通じて巣湖に注ぎこまれる。合肥市はすでに飲用として取水していないものの、巣湖の東端に位置する巣湖市では現在も飲用として利用しており、これ以上の水質悪化は文字通り、飲用不可の状況を招くことになりかねない。また水質悪化による漁獲高の減少も報告されている。我々はモーターボートに乗り込み、巣湖の中ほどに浮かぶ景勝地として知られる姥山島にも渡った。島の頂上から眺めた寒風に波立つ巣湖は、曇天のせいもあっただろうが、憂いをたたえているようにも見えた。 巣湖周辺は昔ながらの、我々日本人が思い浮かべそうな、農村的風景が点在している。そののどかな風景の中にも、農業面源汚染を引き起こす一因が隠されていることに、ある種のもどかしさと問題の複雑さがある。しかしそんな感傷はすぐに打ち消された。巣湖北西部沿岸に隣接する合肥市濱湖新区。「新区」は中国の地方都市で矢 憂いをたたえる「巣湖」と 近未来的風景の「新区」 新区に建ち並ぶ高層マンション湖岸では魚が干され、その横では獲れたての魚が路上で売られていた。ちなみにシラウオ、エビ、カニは巣湖の「三珍」と呼ばれ、湖の恵みは周辺の人々の生活を潤してきた湖に浮かぶ景勝地・姥山島

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