GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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3031Chapter.2 [水] 命の水源、巣湖の蘇生 Ⅱ 次に、官亭鎮人民政府の担当者が我々を案内してくれたのが“農村”である。しかし、牧歌的な農村的景色を思い浮かべてはならない。ここは、中国政府が重点政策として展開している“新農村”なのだ。新農村とは、都市と農村の格差是正に向けてインフラ整備の重点を農村に移し、農民の負担軽減や義務教育の普及、環境整備などにも資金を積極的に投入するなど、まさに新しい農村を作ろうという試みである。そこには、中国政府が抱える難題である“三農問題”がある。三農問題とは、農業の近代化、農村の社会資本整備、農民の貧困解消という、現代中国が抱える最大の課題だ。これらを解決する切り札が新農村であり、現在、中国全域で急ピッチで建設が進められている。ここ官亭鎮では、約1,300haの土地に散在していた2村約1,600戸6,000人に近代的住宅とインフラを備えた居住区画を提供し、一カ所に居住するようにした。立ち並ぶ集合住宅の後景に田畑が広がっているため農村と知れるが、一見すれば、日本のニュータウンの団地のようなものだ。屋内の見学はできなかったが、上下水道等のインフラや家電製品などが整った、快適な住環境が提供されているという。 この新農村建設の成否が今後の国家体制を占う鍵ともいわれている。8億人ともいわれる中国の農民が、新農村建設によって、わずかでもゆとりある暮らしを享受することで、中国の抱える問題の多くが解決へ導かれる可能性を指摘する声も少なくない。ただ、中国共産党が打ち出した新農村建設計画の基本政策の中の一つ「農民の民主化を進め、村民の権利を保護し、自治を拡大することで、農民が農村主人公となる」が、新農村の目指す姿として現実のものとなるには、まだまだいくつものハードルを越えていかねばならないだろう。 乳牛場の家畜排泄物の一部は、農地で肥料として利用されているということだった現状では小川に流されていると畜場からの排液も、新プラントで処理される予定だ池で洗濯をする女性たち。農作業で汚れた衣類は叩き洗いが一番か・・・豊祥・馬河湾新農村に建ち並ぶ集合住宅。道路を走る農機を見かけなければ、これが農民住宅だとわかるかどうか
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