GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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2425「農業面源汚染」が 河川や湖沼の水質汚染の元凶 Chapter.2 [水] 命の水源、巣湖の蘇生 Ⅱ合肥市最大の汚水処理施設・王小郢汚水処理場では、30万t/日の汚水が処理されている中国の工業廃水・生活汚水の年度別排出量0100200300400500600’99’00’01’02’03’04’05’06’07’08工業廃水生活汚水出所:日中友好環境保全センター「全国環境統計公報」より作成 (億t) 地球規模での深刻な水不足は、すぐそこに迫っている世界的な課題であるが、中国は特に深刻の度合いを増している。日本の国土交通省水資源部が作成した資料(日本の水資源 2009年版)によると、世界の水資源量に関するデータでは、中国の水資源総量は年間約2兆8,300億㎥で世界第6位だが、中国の一人当たり平均水資源量は2,130㎥、世界平均の8,372㎥の4分の1と世界でも最も少ない国の一つだ。中国は水資源の分布が極端に偏在しており、チベット自治区や青海省は他地域に比べて圧倒的な水資源を有しているが、それ以外の地域はいずれも世界平均の一人当たり水資源量をはるかに下回っているのが現状である。こうした、中国の水問題の根幹には水の絶対量の不足と水資源分布の偏在に加えて、水質汚染など人為的な要因が少なくない。水質汚染が進む最大の理由は、経済発展とともに国内での工業廃水、生活汚水の排出量が増加傾向にあることだ。もちろん、中国政府も手をこまねいてきたわけではない。水質改善のための各種施策が打ち出され、工業廃水への対策はそれなりに成果を挙げてきた。都市部の下水処理も進み下水処理場の普及率は70%を超えている。しかし、飲料・農業・工業の主要な取水源である長江、黄河をはじめとした7大水系は、近年改善傾向にあるものの、依然としてその多くは飲用に適さない状態にある。特に水質汚染の三大ワースト河川・湖沼を“三河(淮河、海河、遼河)・三湖(巣湖、太湖、 池)”と呼ぶ。中国の水質汚染を象徴する現場であるが、それではなぜ三河・三湖の水質改善は進まないのか。 実は、その大きな原因はほぼ明らかになっている。“農業面源汚染”だ。これはその名が示すように、農業エリアの環境汚染発生地点が面的な拡がりを持つものである。農業面源汚染が深刻なのは、全国の汚染物総量に対する農業由来の比率を見ても明らかだ。水質汚染の代表的な指標の一つであるCOD(化学的酸素要求量)の43.7%、総窒素の57.2%、総リンの67.4%が農業由来である(「中国・第一次全国汚染源普査公報2010年2月」より)。特に窒素とリンの排出は湖沼の富栄養化の最大の要因になっている。都市周辺部である農村には、生活排水(し尿と雑排水)、畜産系排水(家畜排泄物)、食品加工排水(と畜場排水等)に加えて、単純放置・埋め立てに回される大量の生活ごみなど様々な水質汚染源があるが、その処理レベ

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