GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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2021 フランスの植民地統治によるフランスの食文化の影響も、ベトナムの食文化を語る上で欠かせない。といっても、フランス料理がベトナム料理に影響を与えたのではなく、フランスは置き土産のように「フランスパン」を食べ「コーヒー」を飲む食習慣を残していったということである。屋台でもよく売られているのが、フランスパン・サンドウィッチ「バインミー」だ。バゲットにソーセージやハム、香草や野菜の甘酢漬け(日本のなますに似ている)などを挟んで食す。香り高いベトナムコーヒー(ベトナムはブラジルに次ぐ世界第二位のコーヒー豆生産高を誇る)の特徴は、必ず“練乳”が使われることだ。カップの底にかなり多めの練乳が沈み、その上からコーヒーを注いだ状態で供される。練乳とコーヒーを混ぜれば、当然かなり甘い。飲み物ということであれば、食文化に欠かせないのが“酒”。メコンデルタの農家の人が日々の癒しとして飲む酒は、やはり“米”と深く関わってくる。「ライススピリッツ」とも「ライスウォッカ」とも呼ばれる、米を発酵・蒸留して作る、度数40度前後の強い酒だ。 続いてベトナム料理のレストランを覗いてみよう。着席してまず気付くのは、料理が供される前に出される調味料の小皿の多さ。ベトナム醤油、ヌック・マム、チリソース、トゥオン(豆のソース)、塩コショウとライム、ヤン(酢と油を混ぜたドレッシング)、唐辛子のスライス。これらがテーブルに所狭しと並べられる。ベトナム料理は基本的にマイルドな味付けだが、それを調味料によって、それぞれの好みに整えるのがベトナム料理の特徴の一つである。その食べ方も独特だ。ベトナムの食事に取り皿はない。飯を盛り付けた碗に、好みの調味料で味付けしたおかずを乗せて食べる。おかずを食べたら味のしみ込んだ飯を食べる。そして飯が少なくなってくると、食事のシメとしてスープを注ぎサラサラと流し込む。飯とおかずやスープの味が混然となることで、絶妙な味のバランスが演出されるのである。ちなみにそのバランスは、地方によって異なる。メコンデルタのある南部の人は、甘さが強い味付けを好む。事実、メコンデルタの料理の多くは甘く濃い味付けだ。甘味嗜好の強さを感じたのは、メコンデルタの農村にあるよろず屋でコーラを注文したときのこと。コーラの瓶とともに運ばれてきた、グラスを満たした氷の上には砂糖がたっぷり振りかけられていた。「フー・ティウ」用の製麺所。半乾燥させたライスペーパーは機械で麺状にカットされるたっぷりのコンデンスミルク(練乳)を入れ、その上から濃いめのコーヒーを注ぐもち米から作られるベトナムの蒸留酒はアルコール度数が約30~45度の米焼酎であるメコン河で獲れる豊富な魚は、干物としても売られているフランス植民地統治が残した食文化と 味の“バランス”へのこだわり

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