GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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1617タン・ハイ主催のデモンストレーション会場には、 200人あまりの農民が詰めかけた 圃場の向こうで、コンバインと トラクタのデモ開始を待つ農民たち 量化したものも望んでいます。問い合わせに対するディーラーのスピーディーな対応も求めたい。もっとたくさんいい仕事をしたいですから。年中無休で構わないし、近い将来、自分の農地も倍ぐらいにしたいのです」 彼らはドンタップ省の中でもハイクラスに属する農家だろうが、クボタのコンバインは決して安い買い物ではないはずだ。それにもかかわらず、数台購入を可能としているのは、賃刈ビジネスを“投資”と考えているからにほかならない。金融機関はコンバインが生みだす確実なキャッシュフローに着目して資金を融資する。こうして賃刈ビジネスを始めた農家は、短期間で投資を回収し、2台目を購入。この投資サイクルの中で、高価格でありながらもクボタのコンバインは普及拡大しているのだ。メコンデルタの機械化を推進するエンジンの役割を果たしているのが、“投資”という市場経済のツールなのである。 タン・ハイさんが「拡販の大きな機会」と言うデモンストレーションの現場にも行った。200人以上の人が、強い日射しの下で熱心にコンバインやトラクタのデモンストレーションを見守っている。多くの人から話を聞いたが、そこにあるのは「辛かった米作り」から抜け出し、賃刈がもたらす豊かさを手に入れたいという熱望だ。クボタがメコンデルタを“機械化前夜”と捉えたその内実には、農家の“賃刈への熱い期待”があるのは間違いない。しかし、その熱狂とは無縁な状態にある農家が大部分を占めるのも事実だ。一方で、少数民族(ベトナムは多民族国家)が農家に雇われて期間賃労働として働くケースも少なくない。視点を変えれば、富裕農家とそうでない農家の所得格差という単純な図式では語れない複雑な営農の構造も見えてくる。メコンデルタは都市化・工業化の進展に伴う人手不足と、さらには政策的な米生産量向上の要請の中で、今後も確実に機械化が進展していくことだろう。それが結果として何をもたらすのだろうか。ドイモイ以降、ベトナムが進めてきた社会主義市場経済は、ここへきてメコンデルタの農村の内なる風景を大きく変えつつある。
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