GLOBAL INDEX 2011 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
15/48

1415 しかし、クボタのコンバインの価格は中国製メーカー機よりも遙かに高い。ここで疑問を感じざるを得ないのは、急速な経済成長を果たしているとはいえ、国民一人当たりのGDPが8万円程度の水準で、クボタのコンバインを購入できるものなのかどうか、ということだ。ベトナム統計総局によると、2008年のメコンデルタエリア一人当たりの平均月収は94万ドン(約3,600円※)。都市部は同160万ドン(約6,200円/ただし、ベトナム人の所得は年々増加しており、現在、都市部はより高い所得水準と思われる。ちなみに、2010年上半期、国営企業に勤務する人の平均月収は291万7,000ドン、約1万1,000円)。ドイモイ以降、ホーチミン市をはじめとした大都市の華々しい発展に比べ、農村の生活水準は低いままに推移しているのが現状なのである。米価の低さに加えて、メコンデルタの多毛作などの集約的米作農業は経営費がかさみ、所得率が低くなる構造を有しているのがその理由だ。中古市場からの供給で、各種農業機械は安価かつ高品質のものが入手できるようになったが、東南アジア各国同様、ベトナムの一般的な農家が新品の農業機械を単独で購入するのは、その所得水準から推し量れば夢のまた夢であり、到底新車のコンバインが購入できる資力を持つとは思えない。 そこで着目しなければならないのは、ベトナムのみならず、タイや中国などアジアに広く見られる“賃耕・賃刈”という業務請負ビジネスである。これは、その名が示すように、賃金を受け取って耕すこと(賃耕)であり、賃金を受け取って刈り取りをすること(賃刈)だ。それぞれ賃耕屋、賃刈屋と呼ばれる。今に始まったことでなく、農村共同体の協働の中で古くから人手によって行われてきた営農形態ではある。タン・ハイさんが販売の対象とするユーザーの多くも賃耕・賃刈屋だ。その多くは、自ら米作を行いつつ賃耕・賃刈を手がける兼業農家。タン・ハイさんによれば「大規模米作を行っている豊かな農家が多い」のが現状で、保有する農地面積も20~100ha。100ha以上の農地を持つユーザーも20%に及ぶ。メコンデルタの一農家が保有する平均農地面積が約2haであることを考え合わせれば、メコンデルタの機械化は賃耕・賃刈を営む一部の富裕農家が牽引する構造であることが見えてくる。かつての農村共同体的な協働の側面を色濃く残しつつも、機械化による賃耕・賃刈はメコンデルタへ新たに近代的な営農ビジネスをもたらしつつある。それは賃耕・賃刈屋にとって、今まで以上に所得を確保し生活水準を飛躍的に向上させるビッグチャンスなのだ。 中古農機の販売店。 年代を感じさせる古いクボタ製トラクタも ベトナムではまだまだ現役として活躍している ※( )内は2011年3月現在の為替レート。1ドン=0.0039円

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です