ナショナルジオグラフィック 日本版2002年8月号

技は語る-(1)

木を刳りぬいてつくられた椀や鉢などの木器は、木本来の温もりに満ち、何より数百年も使えるという。刳る。斧を振り、ノミを入れるその行為は、一見粗野に映る。だがそれは、人が木の内部に宿る自然の魂と触れあう最初の場面でもある。森で育った木との対話。木の命を活かすも殺すも、刳るという技にかかっているのだ。その最たる例に和太鼓づくりがある。
石川県松任市の浅野太鼓は400年続く太鼓匠。大きなものになると直径2mはあろうかという原木を鋸と手斧で刳りぬき太鼓の胴をつくる。見事な円筒状に刳りぬかれた胴は、数年間乾燥された後、太鼓の残響をよくするため内側に丹念に中彫りがほどこされる。この一連の工程により、何百年も割れや歪が生じることなく、いつまでもまろやかで深みのある音色を響かせる太鼓の基礎が出来上がるのだ。山で何百年もかけて大きくなった木である。生命感あるものを切り倒してつくるのだから、何百年も使えるものにしなければつじつまが合わない。そんな強い精神で木と真正面から向き合い、そして刳りぬく。そこには、木や森への畏敬の念とともに、人と自然の真のつながりを垣間見ることができる。

人と環境の共生を見つめて、技術を活かす。
資源やエネルギーなど時代が抱える問題に、人と環境の共生というコンセプトで取り組む。
クボタは、「住」「都市」「環境」「水」「土」の5つの事業領域で独自の技術を活かし、豊かで美しい国土づくりや、よりよい地球環境の創造に努めています。



ナショナルジオグラフィック 日本版2002年9月号
技は語る-(2)

美しく強靭、柔らかで素朴な風合い。手漉きの和紙には他のどんな紙にもない独特の魅力がある。紙を漉く。植物の繊維を均一に絡み合わせていくその作業は、和紙づくりにとって最も腕が問われる工程。そこには、水の動きを巧みに操る経験と勘の技が要求される。和紙の中でも極めて上質とされる土佐典具帖紙。高知県伊野町の濱田幸雄さんは、その伝統を受け継ぐただ一人の手漉き職人である。簀桁(すけた)と呼ばれる道具を漉き槽の中に浸け、左右に揺さぶったかと思うと、簀桁の上の水を前後に激しく動かす。ざぶりという音とともに水は大きく波打ち、数十センチの高さにまで跳ね上がる。簀桁表面に水を強くあてることで不純物を飛ばし、繊維を絡みやすくする独自の漉き方は全ての瞬間が水との真剣勝負だ。動きが止まると、そこには白く輝く紙が漉き上がっている。超極薄のものは厚さわずか0.03ミリ。“カゲロウの羽”の異名を持つ世界一薄い和紙だ。山の清らかな沸き水があり、優れた原料がある。そして、紙を漉く人がいる。黙々と簀桁を動かす姿は自然の尊さをすくいとっているかのようだ。比類なき極薄の美の中には、木々がそよぎ、水が流れ、光が漏れている。

人と環境の共生を見つめて、技術を活かす。
資源やエネルギーなど時代が抱える問題に、人と環境の共生というコンセプトで取り組む。
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ナショナルジオグラフィック 日本版2002年10月号
技は語る-(3)

武器としての役割を終えた今でも、世界に冠たる鉄の芸術として生き続ける、日本刀。その荘厳な姿には、丹念に打ちこまれた強さと美しさの調和がある。打つ。鉄を鍛え上げる基本の技。島根県横田町、日本刀の材料として不可欠な玉鋼を日本古来のたたら製鉄で生産する唯一の地で、小林三兄弟と呼ばれる3人の刀匠が中心になって鎌倉時代より続く日本刀作りを継承している。轟々と炎を上げる火床の熱気で高温渦巻く鍛練場。持ち手が支える赤熱した鋼塊めがけて打ち手が手鎚を力強く振り下ろす。部屋中に響く鈍い鎚音、激しく飛び散る火花。何度も叩いて打ち延ばした後、中央にタガネを入れ二つに折り返す。再び火床で熱し、さらに打ち延ばして鋼の純度を高めていく。これを折り返し鍛錬といい、通常20回折り返す。1回で2層、10回でも1,024層。砂鉄からできた鋼と炭火、そして人の技が合わさった薄い層の固まりが刀となるのだ。中国山系で採れる良質の真砂砂鉄と木炭用の原木、山間には製鉄に適した天然の風邪。この地で玉鋼が作られてるからこそ作力も続けられる。その恩恵を胸に、精魂込めて、打つ。そこには、土地に古来からあるものを活かすという、技の原点が息づいている。

人と環境の共生を見つめて、技術を活かす。
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ナショナルジオグラフィック 日本版2003年2月号
技は語る-(4)

植物の繊維を細く裂いてつないでいくことを、績む、という。沖縄の伝統織物である芭蕉布は、原料である糸芭蕉の栽培から、一反の布に織り上げるまですべて手仕事。戦前まで沖縄各地で盛んだった産業も現在では沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉周辺だけになっている。平良敏子さんは全工程ができる唯一の人。どの工程も手間と根気のいる仕事だが、なかでも最も細やかな神経と時間を要するのが、苧績みだ。苧とは糸芭蕉の繊維のことで、その苧を親指と小指の爪の先で筋に沿って裂く。髪の毛よりも細い繊維を数本束ねたかと思うと、残りの苧から続けて裂いた繊維の束を素早く結び目は小刀で短く切り落とす。この一連の動作がわずか数秒。これを2万数千回続けてようやく一反の布に必要な糸が出来上がる。太さは測ったように均一、色ムラのない素朴な生成りの糸は、沖縄の気候風土に適したさらりと冷たい感覚の芭蕉布へ織られてゆく。指先に 全身全霊が注がれているかのような鮮やかな技も、気を抜かず怠らず、自然のリズムに合わせてやっているだけという。績むことで、まさに生み出される芭蕉布の優しさと強さは、常に自然と共にある精神の産物でもあるからだ。

人と環境の共生を見つめて、技術を活かす。
資源やエネルギーなど時代が抱える問題に、人と環境の共生というコンセプトで取り組む。
クボタは、「住」「都市」「環境」「水」「土」の5つの事業領域で独自の技術を活かし、豊かで美しい国土づくりや、よりよい地球環境の創造に努めています。