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TECHNOLOGY

破砕・選別することで資源を効率よく回収「マテリアルリサイクル」で
循環型社会の実現をめざす

2022 . 12 . 23 / Fri

日本総合リサイクル社長の高倉康氏さんと、プラント設計を担当したクボタ環境エンジニアリングの浜田大介さん

文・写真=クボタプレス編集部

世界では海洋プラスチックごみの増加による環境汚染が深刻化し、日本では2022年4月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行されるなど、国内外でリサイクル問題への関心が高まりを見せています。

豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”をめざすクボタでは、リサイクル事業の核となる破砕機の開発やプラントソリューション事業に力を入れています。

今回訪ねたのは、クボタの破砕機が活躍する最新鋭のリサイクル工場。そこから見えてきたのは、性能のよい破砕機はもはや単に廃棄物を破砕する道具ではなく、有用な金属を「生産」する機械であり、循環型社会の実現には必要不可欠なものだということでした。

電車の車両から小型家電までを扱う最先端のリサイクル工場

かつて北前船交易の要所として栄えた富山県高岡市伏木。この地に本社工場を構えるのが、これまでの常識を超えた先進的なリサイクル事業を行う日本総合リサイクルです。破砕機を含むプラント設計をクボタ環境エンジニアリングが担当しました。

日本総合リサイクル本社工場の外観

富山県高岡市内にある製紙工場の跡地に建てられた本社工場。住民に開かれた遊歩道や遊び場を敷地内に設けるなど、地域貢献も果たしています。手前は製紙工場時代からある引き込み線の線路。現在、使用してはいませんが、電車車両の解体を手がける同社にとっては大切なシンボルです。

同社は50年余の歴史を誇る総合リサイクル会社、豊富産業の4番目のグループ会社として2009年に設立され、2012年に工場の操業を開始。当初は電車やバスなどの大型車両の再資源化を目的に設立されましたが、その後、小型家電や電子機器、モーターや機械の配電盤などの回収にもいち早く着手し、現在では鉄・アルミ・銅はもちろん、海外に流出していた「都市鉱山」と呼ばれるレアメタルの再資源化にも取り組んでいます。

広大な工場内全景

リサイクルプラントの上部から見下ろした完全屋内型の工場内。大きな重機も小さく見えるスケール。一部を除き、重機の多くは排気ガスを出さない電気式を採用し、作業員の健康に配慮しています。

大型プレス剪断機
投入した資源が徐々に押し出され、剪断される様子

電車の車両1両分がすっぽり納まり、前後左右から一気に圧力をかけて切断する大型プレス剪断(せんだん)機。独自の技術を駆使した画期的なシステムです。この日、処理しているのは電車ではありませんでしたが、分厚い鉄の製品が徐々にプレスされ、大きな刃で剪断される様子は、近くで見ると迫力満点。

小型家電類から有価金属が生まれるまで

今回見学したのは主に細かく解体された電車の車両や家電などを再資源化する工程。2019年8月に竪型(たてがた)破砕機を入れ替えるのに伴い、破砕処理を行う一連のリサイクルプラント設備もすべて更新しました。

破砕機にかけられる前の雑品の山

これから破砕機にかけられる資源の山。よく見ると、自転車、炊飯器、扇風機などが確認できます。

破砕機は騒音や振動、粉塵の飛散を防ぐため、屋内の工場内にさらに建屋を建て、その中に納めた入れ子の構造になっています。まず、建屋手前にあるコンベア受け入れ口のホッパーに、資源の山が重機で次々に投入され、建屋内の破砕機に送り込まれていきます。

コンベアで建屋内の破砕機に運ばれる雑品類

次々とホッパーに投入され、コンベアによって白い壁に覆われた建屋内の破砕機へとゆっくりと送り込まれる破砕前の投入物。

次に、建屋内に一歩入ると、工場内よりさらに大きく、会話が聞こえなくなるほどの音量が建屋内に響きます。ここで採用されているのは、クボタの竪型破砕機。高速回転するブレーカで粗い破砕、グラインダで細かい破砕(圧縮・引き裂き・こすり割り)を行うため、軟らかい畳やプラスチックなどから、硬い金属やコンクリートまで一括混合破砕が可能です。

建屋内に設置されたクボタの破砕機
破砕機の構造図

建屋内に設置された破砕機の外観。円筒状の内側には、破砕機の要であるブレーカとグラインダが設置されています。ブレーカとグラインダを組み合わせることで、細かく均一性の高い破砕が行え、後工程の選別精度が高められ、資源の価値も向上します。

その後、破砕された資源は磁力選別機へと搬送されていきます。

破砕後の資源がコンベアで磁力選別機へと搬送される様子

破砕後の資源がコンベアで、リサイクルプラント内の高い位置にある磁力選別機へと搬送される様子。非常に細かく破砕されていることがわかります。

磁力選別機で鉄と鉄以外に分別後、鉄以外のものは篩(ふるい)にかけられます。その後、目の粗いものと細かいものに分けられ、さらにそれぞれが多様な選別機にかけられることで、ステンレス、アルミ、真鍮、銅など、多種多様な金属に分別されていきます。

各工程を経て選別された金属は、最後に壁で仕切られた「ヤード」と呼ばれる小部屋のようなスペースに落ちて貯まっていきますが、このリサイクルプラントでは高い鉄筋コンクリートの壁で仕切られたヤードの上に設備を乗せた、いわば2階建ての構造になっている点が特徴の一つ。以前は手前にリサイクルプラントが迫り出していたため狭かった通路も、空間を立体的に活用することで広くなり、車がそのまま入ってこられるほどの余裕が生まれました。

選別された金属を貯めるヤードの上にリサイクルプラントを乗せた2階建ての構造。

選別された各金属が集積されるヤードの上に、設備をまとめた2階建てのプラント。

ヤードに集まったボール状の銅、アルミ、鉄を両手ですくったところ

ヤードに集まったボール状の各金属。中央は銅、手前はアルミ、奧が鉄。まだほんのり温かさを保っています。

破砕機の性能だけでなくプラント設計が生産性を左右する

資源リサイクルの一連の流れを見学後、日本総合リサイクル代表取締役社長の高倉康氏さんに、クボタの破砕機を導入した経緯を聞きました。

日本総合リサイクル社長の高倉康氏さん

日本総合リサイクル株式会社、代表取締役社長の高倉 康氏(たかくら やすし)さん。

高倉さんによると、工場の新築時には他社製を導入したものの、故障が多く、リサイクルプラントの操業を停止せざるを得ない状況が何度も生じたため、8年目に入れ替えることにしたそうです。破砕機だけでなく、破砕機の性能を最大限引き出すための他の設備の選定、最適な配置までをトータルに考えたクボタの提案を評価し、破砕機を採用するだけでなく、プラント設計も一緒に依頼することにしたと高倉さんは言います。

「最も改善されたのは歩留まりです。鉄、アルミ、銅、ステンレス、さらにはレアメタルが効率よく回収できるようになりました。集塵機など他の諸設備とのバランスが取れているので、破砕したものがうまく捕集できているのでしょう。期待通り回収率が向上しました」

また、細かく均一な破砕ができるだけでなく、粒径の調整や簡単な部品交換が社員でできる点も、以前にはなかったメリットとのこと。リサイクルプラントの停止期間も短く、メンテナンス費用、ランニングコストも大幅に削減。さらに、ヤード部分の間仕切り壁を高めに設計したことが奏功し、「2021年に増設した光学選別機がヤードにぴったり納まり、ますます精細な選別が可能になりました」と高倉さん。

今回、リニューアルした破砕ラインのリサイクルプラント全体の設計を手がけた、クボタ環境エンジニアリングの浜田大介さんは、「本来なら20年は使う高額な破砕機をたった8年で交換するというのは相当の英断です。それだけに運転を止めないリサイクルプラントをつくらなければというプレッシャーを感じながら、プランニングに当たりました」と語ります。

リサイクルプラントの設計を担当した浜田大介さん

リニューアルした破砕機と後処理工程を含めたリサイクルプラント全体の設計を手がけたクボタ環境エンジニアリング株式会社リサイクルエンジニアリング部プラント設計課の浜田大介(はまだ だいすけ)さん。背後に、破砕後に鉄と非鉄を分ける磁力選別機が設置されています。

浜田さんが初めて富山の本社を訪れた折、工場全体が集塵について非常に気を遣っていることを感じると同時に、創業者である会長の「これからのリサイクル工場は、お客様が一張羅のスーツと靴で来られるところにしなければならない」という一言がとても印象に残ったそうです。「ヤードは鉄やアルミなど、各製品をお客様に見せる場でもあるので、そういう意味ではすっきりと見やすい空間になったのではないかと思います」と浜田さんは言います。

高倉さんは、インタビューを次のようにしめくくってくれました。

「クボタの破砕機は、長い時間の中で改良・改善を積み重ねながら現在の製品に至っているのでしょう。歴史があるとは、そういうことだと思います。最後までしっかりめんどうを見てくれるところにもクボタらしさを感じます。これからもお互いに意見を出し合って、新しい取り組みをしていければと思っています」

マテリアルリサイクルの実現に貢献する技術開発をめざす

最後に、株式会社クボタ 資源循環事業推進室長の曽根渉さんにもお話を聞きました。30年近く環境事業に携わってきた曽根さんは、「ごみの処理」が「資源の回収」、さらには「回収」が「循環」へと変わっていく時代の変化を肌身で感じてきたと語ります。

資源循環事業推進室長の曽根渉さん

資源循環事業推進室長の曽根 渉(そね わたる)さん。

クボタの破砕機の強みはどこにあるのかと曽根さんに問うと、次のような答えが返ってきました。

「リサイクルに対する人々の意識が高まり、カーボンニュートラルという言葉が一般化し、さらにはマイクロプラスチック問題が浮上するなど、社会情勢のさまざまな変化に対応し、われわれは技術を磨き、進化させてきました。長い時間をかけ、そういった小さな改良を積み重ねてきたことが、製造から販売、メンテナンスまで、すべてに備わった安定性と安心感につながっているのではないかと思います」

曽根さんは、リサイクル事業者にとって、破砕機は今や単に廃棄物を破砕するための道具ではなく、有用な金属を「生産する」要の役割を担っていると言います。歴史を辿れば、鉱山などで大きな岩石を砕くために生まれたのが破砕機のルーツですが、社会の変化につれて使用目的が変わり、そのたびに進化を続けてきた結果、現在では有用な鉱物を選り分けるための機械として活躍しているのです。

これまでは、たとえばプラスチックの場合、燃やして燃料にするか、あるいは、リサイクルといっても「カスケードリサイクル」、つまり元の製品よりも品質が一段低い他の製品・素材にリサイクルするケースが多かった、と曽根さん。

「しかし今後は、使用済み製品を原料として用いて同一種類の製品につくりかえる『水平リサイクル』が主流となり、まさに資源をつくり出す現場になっていきます。そうした各素材の完全なリサイクルが実現して初めて、循環型社会といえるのではないでしょうか」

環境事業に関わる人間として、破砕機を核とした選別技術を磨き上げることによってリサイクルの高度化を推進し、サーキュラーエコノミーの実現に寄与する──曽根さんの言葉からは、そうした強い信念が伝わってきました。

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