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チーム一丸となってつかんだ日本ラグビーの頂点クボタスピアーズ船橋・東京ベイが歩んだ
リーグワン初優勝への軌跡

2023 . 06 . 09 / Fri

文:クボタプレス編集部
写真:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
   クボタプレス編集部

2023年5月20日、41,794人が詰めかけた国立競技場で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、クボタスピアーズ)は「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23」の頂点に立ちました。

1978年の創設から、45年を経てつかんだ初の栄冠。今回のクボタプレスでは、選手時代からチームの歴史を知る石川充ゼネラルマネージャー(以下、GM)、就任からチーム文化を築き続け、史上初の優勝に導いたフラン・ルディケヘッドコーチ(以下、HC)、そして今シーズンもキャプテンとしてチームをけん引してきた立川理道選手それぞれにお話を聞きました。

みんながハードワークをする。それがクボタスピアーズ

1997年まで選手としてプレーし、チームの採用担当を経て2011年からGMに就任した石川さんに、これまでの道のりを振り返っていただきました。

――優勝した際の心境はいかがでしたか?

「優勝はとてもうれしかったです。ただ、今シーズンの観客数はディビジョン1の12チーム中11位でしたし、競技場や新しいファンにどうやって足を運んでもらえるかなど、優勝と同時に事業運営の課題などについても頭に浮かびました。それでも、決勝戦では4万人を超えるファンの皆さんが集まってくださったことはありがたかったです。オレンジ色に染まる国立競技場のスタンドを見て、『自分たちのやってきたことは間違っていなかった』と思える瞬間でした」

石川充(いしかわ みつる)さん。1992年にクボタへ入社し、チームが初の全国社会人大会出場を果たした1997年までスクラムハーフとしてプレー。採用担当を経て2011年からGM職に就き、クボタスピアーズのチーム運営と事業強化に尽力されています。

――GMに就任された2011年から、めざしてきたチーム像は変わらなかったのでしょうか?

「正直なところ、当時は今ほど明確にめざすチーム像を描けていたわけではありませんでした。勝つ文化が大事とよく聞きますが、それがどのようなものなのか探っていた時期ですね。良い選手に入団してもらったり、GPSシステムなどサイエンスの部分やトレーニング施設を充実させたりしましたが、それでもなかなか勝てませんでした」

――2016年にルディケHCが就任されました。第一印象はいかがでしたか?

「とても真面目な性格で、世界でもトップクラスの指導者がどんなチームづくりをするのか、強い興味を抱いていました。フラン(・ルディケHC)はじっくりと文化を作っていくタイプなので、結果が出るまで時間がかかることは覚悟していました。でも、彼の誠実な姿勢のもと、しっかりとしたチームの文化が根付けば良いチームになると思っていました」

――長いクボタスピアーズの歴史で、チームは多くの困難を乗り越えてきました。その要因は何だと思われますか?

「下部リーグへの降格や入れ替え戦で昇格できなかったこともありますし、昇格してもなかなか成績が伸びない時期もありました。ただ、クボタスピアーズは選手・スタッフみんながハードワークをするチームです。みんなラグビーが好きで、もがき苦しみながらも自分たちの誇りとなるチームを作っていきたいという思いが昔から強かった。それが実を結んでいったと思います」

――最後に、クボタスピアーズを応援してくださっているオレンジアーミーの皆さんへメッセージをお願いします。

「国立競技場のグラウンドから、オレンジのジャージを着て泣いている方や、選手の名前が入ったグッズを手にする方の姿がはっきり見え、改めてファンの皆さんの応援は力になると実感しました。今後もぜひ、引き続き熱い応援をお願いします。私たちもリーグの順位と観客数の双方で1位になるために何をすべきなのかしっかりと考え、誇りに思ってもらえるようなチームをめざしていきます」

立川キャプテンが実感したチーム躍進の要因とは

長年チームをけん引し続け、ついに優勝チームのキャプテンとなった立川選手に、今シーズンの戦いを振り返っていただきました。

――昨年のリベンジマッチとなった今シーズンのプレーオフトーナメントには、チームとしてどのように臨まれましたか?

「敗退した過去2年のプレーオフトーナメントは、レギュラーシーズンでできていたことがプレーオフという舞台のプレッシャーから、できませんでした。今年はプレーオフという場、点差や時間帯、天候や大観衆、さまざまなプレッシャーへの対応を考え、しっかりとチームや個人で準備して臨みました」

立川理道(たてかわ はるみち)選手。2012年にクボタスピアーズに入団し、CTB(センター)、SO(スタンドオフ)として活躍。2015年にはラグビーワールドカップに出場するなど、日本代表としての経験も豊富な頼れるキャプテンです。

――レギュラーシーズンは14勝1敗1分と好成績を収めました。

「ケガで主力を欠く中でも、若手選手が全く遜色ないプレーをしていたので、安心して見ていました。昨年や一昨年、コロナ禍でベストメンバーが揃いにくい中で、若い日本人選手が経験を積めたことが大きかったと思います。逆境も多かったのですが、プレッシャーのかかる場面でも若手含めた選手一人ひとりがその瞬間にやるべきことを明確にして実行できるようになった点に、チームの成長を実感しました」

――レギュラーシーズンで一番印象に残っている試合はどれですか?

「開幕戦で18年ぶりに東京サントリーサンゴリアスさんに勝ったことで、自分たちが取り組んできたことへの自信が深まりました。また、埼玉パナソニックワイルドナイツさんに負けてしまった第10節は、敗因を振り返ったことでチームがさらにもう一段階成長できるきっかけになった試合でした」

――今シーズン、立川選手が個人として取り組んだことはありますか?

「今年はオフェンスやディフェンス、各セクションのリーダー役の選手に役割を振り分けさせてもらいました。みんな責任を持って行動してくれましたし、練習中もどんどん意見を言ってくれたので、僕が何か言うことはほとんどなく、自分のプレーに集中できる時間も増えました。そういった自主性が試合でのパフォーマンスにもつながったと思います」

今シーズンはリーグ戦とプレーオフを合わせて15試合にCTBとして出場し、プレーオフ決勝ではキックパスで決勝トライをアシスト。チームの初優勝に大きく貢献し、リーグMVPに選ばれました。

――ルディケHCが来てから、チームは少しずつ変わっていきました。印象的なエピソードがあれば教えてください。

「フランが就任して2年目の終わりに、チームがうまくいっていないことを話しました。すると『良くも悪くも、結局そのチームを作っているのは俺とお前なんだ』と言われたのです。それまでは一生懸命プレーしてチームが勝つように頑張ればいいと思っていたのですが、みんなの手本となって積極的に意見を言わなければチームは変わらないと気づきました。『俺とお前』と言ってくれたことがありがたかったですね。僕だけでなく、一緒にフランも責任を共有してくれたことで、より一層、このままじゃいけない、自分も変わらないといけないと感じました」

――来シーズンへの意気込みをお聞かせください。

「初めてチャンピオンとして迎えるシーズンになりますが、トロフィーを守るわけではなく、チームとしてもう一度優勝トロフィーを獲りに行くつもりで臨みたいです。しっかりとハングリーさを持って取り組みます」

――クボタスピアーズ応援してくださったオレンジアーミーの皆さんは、立川さんにとってどんな存在でしたか?

「一番身近な、家族と同じくらいの熱量で応援してくれている方たちです。アウェイゲームでも、どんな天候でも、多くのオレンジアーミーが応援してくれたことがわたしたちの力になったのは間違いありません。そういう意味でも、今シーズンはオレンジアーミーの皆さんに助けられたシーズンでした」

ルディケHCが語る、優勝へのターニングポイントとなった2019年

最後に、就任以来チームを着実にレベルアップさせてきたルディケHCに、その成長ぶりと今後取り組もうとしていることをお聞きしました。

フラン・ルディケさん。南アフリカ共和国出身。同国のラグビーチーム・ブルズのHCとして2009年、2010年にスーパーラグビーを2連覇。2016年にクボタスピアーズのHCに就任し、チーム文化を着実に築き上げてきました。

――クボタスピアーズでの優勝はどのように感じましたか?

「やはりスペシャルなものでした。チームの45年の歴史を築き上げてきたOBの皆さん、クボタの経営陣やスタッフの方たちのハードワークも大きかったと思います」

――HCに就任してからの7年間を振り返って、ターニングポイントはどこだと思いますか?

「一つ挙げるならば2019年です。トップリーグカップで初めてファイナルに駒を進めたのがこの年でした。人材面では田邉淳コーチやバーナード・フォーリー選手、ライアン・クロッティ選手ら経験豊富なメンバーが入団し、毎日の練習で知識と経験、タフさを落とし込んでくれました。また、ニュージーランドのメンタルコーチがプレッシャーへの対応の仕方を教えてくれたことも大きかったです。ラグビーの競技面、チーム文化、メンタル、コンディショニングを柱として、一貫性を持ってそれらをパフォーマンスに結びつけ続け、今に至ります」

――ルディケHCから見て、チームはどのように変わっていきましたか?

「私自身の哲学と重なりますが、『良いことはこれから起こる』という考え方が浸透しました。私はクリスチャンなので、何でも一生懸命取り組むことが必ず結果につながるという考え方が根本にあります。ただ、それは自分一人ではできません。周りの人を巻き込み、互いに信頼しながら一緒にハードワークするというプロセスをたどれば、勝ちにつながると思っています」

――今後、どのようなことに取り組んでいきますか?

「勝つためには習慣が大事で、月曜日からプランに沿ってハードワークし、食事や睡眠も含め一日一日を大切に過ごし、自分をベストな状態に持っていくことが重要です。実行するのは難しいことですが、だからこそメンタル面が大切です。毎週タスクにフォーカスしてモチベーションを持ち、規律を保ちながらハードワークできる環境を選手たちに与えていきたいと考えています」

――クボタスピアーズの伸びしろはどんなところでしょうか?

「優勝はしましたが、毎試合目標を設定し、試合後にはレビューし、改善して次の試合につなげていくという成長のサイクルは変わりません。成長するマインドを持ち続けることができれば、まだまだ伸びていけると思います」

――最後に、応援し続けてくださったオレンジアーミーの皆さんへのメッセージをお願いします。

「私にとって、すべてのファン、クボタ社員、OB、全員がオレンジアーミーです。彼らは私たちにエネルギーやモチベーションを与えてくれる存在です。これからも、皆さんが見ていて楽しいラグビー、エキサイティングなプレーをするラグビーをめざしていきます」

選手、スタッフ、フロント、会社が一体となって成し遂げた初優勝。クボタスピアーズの来シーズンの戦いぶりにも期待がかかります。

編集後記

長年チームに携わってきた石川GMと立川選手に、変わらないクボタらしさを聞くと「選手やスタッフ、みんながハードワークすることです」(石川GM)、「タフな状況を楽しむメンタリティです。選手たちには、『タフなことが好きだろう? タフな状況を楽しもう』という話をよくします」(立川選手)という答えが返ってきました。

歴史を振り返ると、同好会からスタートしたクボタスピアーズ。その時からずっとラグビーが大好きな方々がハードワークし、タフな状況を乗り越えながらチームを支えて続けてきました。悲願の初優勝は、このクボタらしさと、ルディケHCがもたらしたチームの文化が実を結んだ結果なのだと強く実感したインタビューでした。

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