GLOBAL INDEX
December 2017

FEATURE
"Precision Farming"

05

“Kubota Smart Farming” in Germany
世界最大の農業機械
展示会「アグリテクニカ」

世界最大の農業機械展示会「アグリテクニカ」のクボタブース全景。53ヵ国、2,803社が参加し、45万人が来場した
アグリテクニカの今回のテーマは「グリーンフューチャー~スマートテクノロジー」。
クボタ+KVGはスマート農業を叶えるトラクタ+インプルメントの最新技術を披露した

欧州畑作市場開拓の戦略
「見える化」するマーケティング活動

2017年11月にドイツ・ハノーバーで開催された農業機械展示会「アグリテクニカ(AGRITECHNICA)」において、クボタはKVGと共同で、数多くの新規開発を含めた、スマート農業を叶えるトラクタ+インプルメントを出展した。「アグリテクニカ」のみならず、世界的な展示会への出展は、主要なマーケティング活動の一つだ。

「実際に展示会では、来場したお客様に対して、効率化や低コスト化などスマート農業が生み出す成果をシミュレーションして提示しました。それは効率化とコスト削減に集約されるわけですが、私たちはシミュレーションを通じて、目に見える形でスマート農業の成果を示す活動を進めています」(前出・アンドレアス)。

シミュレーションは展示会のみならず、農業の現場でも行われており、さらにスマート農業を導入したお客様への教育も提供している。

「スマート農業の導入によって、農家の方が現状をどのように改善できるかを的確に見極めることが重要です。効率化や低コスト化のみならず、操作の快適性、簡便性、あるいは軽労化など、それぞれの農家の方が求めるものに対して、スマート農業が提供できるものを示し、その活用を教育も含めて支援していくバリューチェーンの充実が求められています」(前出・アレクサンダー)

クボタにとって、欧州畑作市場でのスマート農業推進にあたっての大きな課題の一つは、前出の渡辺が指摘したブランド認知度の低さだ。優れた技術、充実したサービスを備えていても、お客様がクボタを知らなければ、スマート農業の普及拡大は望めない。「EU Agricultural Business Unit」が、現在、最大限注力している活動もブランド認知度の向上である。クボタホールディングスヨーロッパB.V.の発足によって、各国別ではなく、欧州全体でブランドプロファイリングを立ち上げる試みが始まっている。それらを、SNSやWeb、宣伝広告など多彩なメディアを活用し発信していくことで、認知度向上を強力に推進していく考えだ。

M7001の運転席上部に設置されたGNSSのセンサ

持続的農業を実現する
スマートテクノロジーが焦点

世界最大の農業機械展示会「アグリテクニカ」は、トラクタをはじめ、各種インプルメント、収穫機械、各種部品、精密農業関連システムなど、全世界の最新鋭の農業機械を一堂に展示するものだ。2年に一度開催されるアグリテクニカの今回のテーマは「グリーンフューチャー~スマートテクノロジー」。デジタル化が進む今日のネットワーク社会において、持続的農業を実現するために役立つ技術や開発トレンドに焦点が当てられた。持続的な農業に向けた精密農業(スマート農業)技術に関わる、多くの農業機械が全世界から出展。2,803社にのぼる出展者が53ヵ国から参加し、世界から45万人が来場した。

クボタ+KVGが出展したスマート農業を叶えるトラクタ+インプルメントも大きな注目を集めた。その一つが「TIMベーラ」。これは、ノンストップでベーラ作業を行うためのソリューションである。GNSSの情報やレーザースキャナの信号を用い、刈り取られた草の列の位置に沿って自動でステアリングを制御する。そして、緊急停止機能やベールの自動排出によりノンストップ作業の実現を目指している。作業精度の向上に加え、特にオペレータの負担軽減、ユーザーフレンドリーであることなど、徹底した使い易さにこだわっている。

加えて、ハイブリッドインプルメントにも関心が集まった。トラクタ側に電力供給できるジェネレーター「eプラットフォーム」を搭載し、発電した電気を「eスプレッダー」に送る。ハイブリッド制御することで、これまでのメカ制御よりも細かく動力をコントロールすることができる。たとえば、畑の境界や土地条件の変化に対しても自動的に回転数を制御し、適切な施肥量を散布する、などといった精密な作業が可能となる。

一方、KVGのインプルメントブースでは、GNSSで位置を正確に制御することで作業をガイド、サポートし、播種や施肥などの最適化が実現する「GEOコントロールシステム」、遠隔データ授受システム「テレマティクス」、圃場の肥沃度や作物の成長度合いに応じ、肥料などの資材を可変投入できる「バリアブルレートコントロールシステム」をPRした。参加者の多くに、クボタグループのスマート農業の方向性を印象付けた展示会となった。

「トラクタ+インプルメント、これにスマートファンクションを加え、クボタバリューを提供していくことで、クボタのスマート農業を欧州マーケットに展開していきたいと考えています。欧米各社は精密農業を謳っていますが、我々が目指すスマート農業はそれらを超えるもの。大規模農家のみならず、誰にでも利便性や効率性を味わってもらえるのがスマート農業です。現在は大型トラクタM7001シリーズを中心とした取り組みを進めていますが、近い将来、コンパクトな馬力レンジでもスマートなソリューションを提供することで、面的拡大を目指します」(前出・渡辺)

M7001に接続されたTIMベーラ(牧草を集草して梱包するインプルメント)
同じく接続されたGEOスプレッダー(施肥散布するインプルメント)。電動モーターとPTO馬力の組合せによるハイブリッドインプルメント