GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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るテクノロジーを生み出していくこと。これが「ネイチャー・テクノロジー」の考え方です。 私が“エコジレンマ”と呼ぶ現象があります。日本の省エネ技術は世界最先端であり素晴らしいものがあります。ここ15年でエアコンは4割、冷蔵庫にいたっては8割の省エネを達成しました。しかし一方で、家庭の電力消費は1.3倍に増えています。それは「エコだから買っていい」という意識があり、それが消費拡大を促しているからです。つまり、エコが消費の免罪符になっている。もちろん省エネルギー機器の開発は大切ですが、そのままでは結局、企業のブランド価値を下げてしまいます。なぜなら各社の取り組みが進めば進むほど、どこの技術も同じというテクノロジーのユニフォーム化(統一化)が起こり、結局はコスト競争となるからです。 このままでは日本の企業は、コストパフォーマンスが高いアジア企業とのコスト競争で疲弊していくしかありません。これを避けるために、今後、日本の企業は新しいライフスタイルのビジョンを提示していく必要があります。エコの冷蔵庫をつくるより冷蔵庫のないライフスタイルを、あるいはクルマのいらない街での暮らし方など、バックキャストの発想で考え提案していくべきなのです。 今回の震災で、地球や人類社会に深刻な環境変化が起きるとされていた2030年が20年早く来てしまったと感じています。したがって私たちは、豊かに暮らすとはどういうことか、循環型社会の実現はどうするのか、その答えを速やかに出す必要に迫られています。バックキャストの思考による新しいライフスタイルの創造を加速する必要があるのです。 物質欲をあおる時代は終わりました。物質から精神の豊かさへ、欲のカタチ、豊かさの価値観を変えていく必要があります。その豊かさとは、“制約ある豊かさ”であり、“良質なタガのある豊かさ”とも言えます。これはフォアキャストの思考からは生まれません。制約があるからこそ知恵が生まれ、テクノロジーが生まれ、豊かさが生まれるのです。 私は大学研究室の学生たちと震災の1年ほど前から「90歳ヒアリング」を行っています。自然と共生していた戦前の暮らしを体験し、高度成長期に働き盛りだった人たちの話を聞くと、「昔の方が楽しかった」と必ず言います。その“楽しみ”の構造を理解したいとヒアリングを重ねると、“楽しさ”にはいくつかの共通キーワードがあることがわかりました。「自然のリズムを感じる」「自然を活かす」「誰にも役割がある」「家族団欒がある」等々。震災発生直後に学生たちと被災地を歩き、避難所を訪れましたが、辛震災後の新しいライフスタイル備えとしてのネットワークネイチャー・テクノロジーからの提言40

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