GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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イギリスの産業革命が成功したのは、自然と決別したからです。すべては数式で表現ができ、自然も制御することができると考え、自然と対峙しました。その思考が今に続くテクノロジーの姿であり、それらはすべて “フォアキャスト”の発想でした。つまり現状分析から出発して将来どのようになっているかを予測するわけですが、この発想からの実践は、ネガティブなものになりがちなのです。好例が省エネ、節電、節水といった“我慢”を強いる取り組みで、楽しいものではありません。 私たちは、将来どうなっているべきかを先に考え、そこから逆算し今何をするべきかを発見する“バックキャスト”の発想に転換する必要があるのです。バックキャストに基づいたライフスタイルをデザインし、そこで必要とな 私はかつて企業に25年勤務し、環境戦略、技術戦略双方の責任者を務めました。その過程で、環境配慮型企業として評価されつつも、一方で利益追求の研究開発を推進していることに自己矛盾を感じていました。そこで問い直したのが、そもそもモノをつくるとはどういうことなのか、ということです。資源のない日本が産業立国として生きていくためにはどうすればいいのか。その模索の中から、持続可能な社会のためには、循環型社会と人間の欲を同時に肯定する必要があり、その答えが自然にあるという結論に至りました。 自然は最も小さなエネルギーで完璧な持続可能社会をつくっています。このメカニズムやシステム、社会性も含めて自然を学び、自然をベースとした人間のあり方、新しいモノづくり、暮らし方を考えていく必要があります。キーワードは、“自然に生かされ、自然を活かし、自然をいなす”こと。その実践から新しいテクノロジー、新しいライフスタイルが見えてくるのです。 たとえば、昼は50℃、夜は0℃を下回るサバンナ地帯に棲むシロアリの巣の中は、なぜいつも30℃に保たれているのか。そこから湿度や温度を調整する土タイルが生まれました。あるいは、カタツムリの殻はなぜ汚れないのか。その研究から、汚れが付きにくいキッチンシンクやビルの外壁タイルが誕生しました。このように自然から学び、人間にとって必要なものをテクノロジーとして“リ・デザイン”していく、それが「ネイチャー・テクノロジー」という概念なのです。求められるバックキャストの思考“良質なタガのある豊かさ”へ自然から学び、テクノロジーとして“リ・デザイン”する39ネイチャー・テクノロジーからの提言

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