GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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36産業のREVIVAL「SKCと工業団地、復旧への足取り」 世界銀行バンコク事務所によると、洪水における損害額(試算)は1兆4,000億バーツ(約3兆5,000億円)、タイのGDPの10%以上にのぼる。タイ経済の減速も懸念されるが、国家経済社会開発庁は、2011年は大洪水による影響でGDP成長率は1.5%に留まる見通しであるが、2012年は4.5~5.5%の回復基調を辿ると予想している。この旺盛な経済成長を持続するには、“洪水に強い国づくり”は極めて重要な要素になってくる。洪水のインパクトによる、海外からの直接投資の減少こそがタイにとって最大の懸念材料だからだ。 一方で、考えるべきことがある。従来、新興国では、先進国をモデルとする工業化=近代化こそが、豊かな国へ発展する道程とされてきた。しかし、工業と農業は対立するものではなく、共存することで発展を遂げる可能性を示しているのがタイだ。タイの農業は、近年、土地生産性の向上や環境問題の視点から、一層の集約化という方向性を追い求めている。その推進力が工業の発展による農業の機械化である。また、農地は単なる食料生産の場だけでなく、保水機能をも有する治水インフラでもあり、この水をコントロールし活用することができれば、工業の振興にも有益となる。インフラ整備の課題は残るが、すでに「アジアの食料基地」としての役割を担っているタイが、さらに「工業と農業の共存」する新しい産業モデルを志向すれば、「世界の食料基地としてのアジア」へ、さらには、「世界の食料問題解決」への指針を示すものになるだろう。そのとき、農業と工業をつなぐ架け橋になるクボタの事業は、「食料問題解決」のパースペクティブの中にある。 奇しくも震災と洪水という自然災害に見舞われた日本とタイ。厳しい現実に直面したが、一方で本当に助け合える絆を確認することができた。タイ国工業省が主催したJICAの活動終了式では、両国政府高官がお互いの支援に感謝し、労をねぎらった。タイのワラナット工業相は「みなさんは私たちの真の友人。タイを第二の故郷と思って再び訪ねてください」と緊急援助隊員に呼び掛けた。今後の両国の関係を展望するとき、人材や技術が自由に往来する中で、日系企業はグローバルかつ地域密着型の真の“グローカル企業”への進化を遂げ、タイからは新たな産業モデルが発信されるだろう。工業と農業が共存する産業モデルへ日本とタイの関係を展望する上)タイ国工業省が主催したJICAの活動終了式で展 示された排水ポンプ車。日本の誇りだ下)堅い握手を交わす小島日本大使とワラナット工業相洋々たる大河チャオプラヤ。洪水の元凶だが、水のコントロールができれば、最良の資源となる

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