GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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28 我々がタイの首都バンコクに入ったのは12月中旬。日本の報道では「バンコク水没」の見出しが躍った新聞もあったが、市街地中心に洪水の形跡らしきものは見えない。地元の人によれば、浸水したのは北東部と街中を流れるチャオプラヤ川河岸のみで、バンコク中心部に浸水の被害は及ばなかったという。但し、その影響はバンコクにも及んだ。タイ政府はバンコクを洪水から“死守”するため、徐々に南下してくる大水を堤防や土ど嚢のうによって東西に迂回させる対策を講じていた。それによってバンコク周辺エリアが洪水被害を受けたことで交通網は寸断され、食料をはじめとする物資の供給が一時途絶えた。食料、日用品の買い占め騒ぎも起きた。また住民の中には、「バンコク水没」を危惧して一時的に首都を脱出する人も少なくなく、混乱があったという。 最初に明確にしておかねばならないのは、日本ではバンコクの洪水被害が盛んに報道されたが、被害は地方が甚大であり、800人を超す犠牲者のほとんどが地方の住民だということだ。さらに、今回の洪水が過去の洪水と決定的に違うのは、数多くの工業団地の存在である。「工業団地に被害が出たことがタイ経済に大きなインパクトをもたらした」(タイ工業省課長 パヌワット・トリヤングンスリ氏)のである。洪水が発生した工業団地はバンコク北部の7工業団地に及び、タイに進出する日系企業の3分の1、約450社が被害を受けた。こうした状況に対して日本政府は11月初頭、JICA(国際協力機構)による国際緊急援助隊専門家チームの派遣を決定する。それが排水ポンプ車による、工業団地を中心とした排水支援だった。 派遣された排水ポンプ車は、国土交通省中部地方整備局が保有する10台。毎分30㎥の排水能力を持ち、25mプールを約10分で空にできる。この排水ポンプの開発に携わったのがクボタである。従来のポンプの重量は同等のもので軽くても約800kgあり、設置にはクレーンを必要とするため災害現場に持ち込んで稼働させるのは容易ではなかった。クボタは軽量化による機動性の向上を追求し、重さ約30kg、人力による設置・撤去を可能とした。このポンプと自家発電機を車両に搭載したことで、世界にも類がない自立性・機動性に優れた排水ポンプ車が誕生、東日本大震災の復旧でも活躍してきた。そして今回、タイ復旧のために海を渡ることとなった。排水活動開始までの調整作業を担当したのが、これまで多くの海外被災地で国際緊急援助活動に携わってきたJICAの神内圭氏である。 「政府からの派遣命令が出たのは11月2日。5日にタイへ向けて排水ポンプ車が出港し、18日に到着しました。それまで、現場の排水作業員や燃料等を供出してもらうようタイ側へ要請したり、活動候補地の選定や国際緊急援助隊専門家チームの排水活動風景(ノンタブリ県サイノイ村)洪水被害を回避した首都バンコク工業団地の日系企業約450社が浸水自立性・機動性に富む「クボタ製ポンプ」と日本代表としてのプロフェッショナル意識産業のREVIVAL「排水ポンプ車をタイへ」

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