GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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21 クボタが提案したのが、排水設備の損壊等によって農業用水を活用できない圃場に向けた「雨水を利用した縦浸透除塩法」――これは端的に言えば、雨水を効率的に水田に浸み込ませ、水田に埋設された暗あんきょ(排水管)を通じて圃場外に排出するという方法だ。実証試験は二段階に分けて行われた。 第一段階は、サブソイラと呼ばれるインプルメント(トラクタ用作業機)によって暗きょと交差するように等間隔に溝を切り、雨水の縦浸透を促進させる。さらに雨水の浸透性・排水性を高めるため表土の反転・耕起作業を行う。こうした作業によって塩水を作土層よりも下層へ縦浸透させ、暗きょを通じて排水、除塩を行うというものだ。 第二段階が、ナトリウムの除去。ナトリウムは粘土に吸着結合し水に溶け出なくなる性質がある。ナトリウム分が高い土壌は乾燥すると硬い土になり、発芽不良や生育障害を引き起こす。このため土壌改良剤である炭酸カルシウムを施し、ナトリウムをカルシウムに置換、ナトリウムを除去する方法を試みた。一連の実証試験に立ち会ったのが宮城県亘理農業改良普及センター先進技術班技術次長の渋谷智行氏である。 「名取市を含む亘理地域は、津波被害の程度や規模も様々あり、どのようにして農地を再生していくか、多角的な検討を進めています。中でも除塩は、農地再生の大きな柱の一つ。県としては今回の実証実験のデータ分析をさせていただき、今後のより効率的で効果的な除塩方法の確立に役立てていきたいと考えています」 実証試験の結果は、数値目標としていたEC0.5をクリア、真水のかけ流しと同等の一定の成果をみた。今後、除塩のための用水が確保できない農地をはじめ、用排水路を持たない畑地、あるいは復興作業に伴う重機使用等で硬化した農地などに、この「縦浸透除塩法」を適用できる可能性がある。伐明は、今回の取り組みを次のように振り返る。 「実証試験はすべて順調に進んだわけではありません。実施にあたって行政サイドとの交渉も厳しいものがありました。しかしどんな壁があっても、それを乗り越えて前へ進むことが大切であることを改めて痛感しました。すべては農家のため、農家の方々に喜んでもらうためですから。今後も様々な形で支援を継続していきたいと考えています」求められる多様な除塩方法有効な選択肢「雨水を利用した縦浸透除塩法」いよいよ作付けが行われる(2012.2.17撮影)除塩の実証試験を終え、両側の圃場に水が張られた(2012.2.17撮影)排水機場も修復し、用水路から圃場に注がれる潤沢な水(2012.2.17撮影)農業のREVIVAL「雨水による除塩の取り組み」

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