GLOBAL INDEX 2012 KUBOTA CORPORATE COMMUNICATION MAGAZINE
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14 相馬営業所を後にした我々は、震災後に「鉄コ」を実施した相馬市の農家を訪ねた。米作り29年のベテラン、小お島じま良金さんである。小島さんは先に述べた国道6号線を境に、海側に12ha、山側に6haの農地を持つ。3.11のとき、小島さんは山側の農地で麦に追肥を行っていた。激しい揺れに不安を感じ、海側の農地に隣接する自宅へ足早に戻った。間もなく、泥を巻き込み、盛り上がるようにして押し寄せる“不気味”な黒い津波が、小島さんの農地に流入した。その後、水は引いたが12haの農地は壊滅的な被害を受けた。 「28cmの地盤沈下が起こり、用水・排水設備をはじめ、圃場としての基盤そのものが損壊しました。育苗施設も流されました。通常の稲作を再開するには、大規模な土木工事による基盤整備が必要です。公共工事として行われる予定ですが、いつから着手されるのか決定していません。先行きが見えないのが一番不安です」 小島さんにとって救いだったのは、山側の農地が津波被害を受けていないことだった。クボタの提案を受け入れ、「鉄コ」実施に踏み切った。収穫量は10a当たり350kg(例年480kg)。収穫量は減ったものの、育苗の必要がない「鉄コ」は魅力的と言う。 一方で小島さんは、今後の稲作経営に危機感を募らせる。より強い稲作経営のためには、現在のように国からの“補助金頼り”ではなく、自立した経営が必要だと言う。 「法人化も視野に入れた、協同体としての経営が求められると考えています。土地を集約化させた大規模経営による生産性の向上を目指さなければ、グローバル化していく競争に打ち勝つことはできない。また第一次産業に留まるのではなく、六次産業(※10)への展開も考えていきたいと思っています」農業のREVIVAL「鉄コーティング籾による直播農法」「鉄コ」実施農家に聞く震災からの復旧・復興と新たな稲作経営鉄コーティング栽培米を収穫するを収穫する相馬市の農家・小島 良金さん

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